小児歯科学雑誌
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乳歯列の永久歯列形成への影響について
-乳歯列時の歯と歯列弓の大きさからみた影響-
佐藤 輝子
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1996 年 34 巻 5 号 p. 1128-1140

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抄録

第二大臼歯まで萌出の完了した永久歯列92症例を正常,叢生群に分類し,その乳歯列時の平行模型を資料として,歯冠幅径,歯列弓ならびに歯槽基底弓の大きさを計測した。さらに乳歯とその後継永久歯の大きさの相関性についてそれぞれ分析し,検討した結果,次のような結論を得た。
1.乳歯の歯冠幅径は,男子では上下顎どの歯種においても,正常,叢生群間の差に有意差は認められなかったが,女子ではその差が明らかであり,上顎では全歯種,下顎では乳中切歯と乳側切歯において,叢生群は正常群よりも有意に大きい値を示した。
2.歯冠幅径における乳歯とその後継永久歯との相関は,女子の方が男子よりも正の相関を示す歯種が多く認められた。
3.歯列弓幅径は,男子においては,叢生群が上下顎ともにD-D間,E-E間で有意に正常群より小さな値を示した。しかし女子では,正常,叢生群間に差は認められなかった。
4.歯列弓長径は,男女ともに,正常,叢生群間に差は認められなかった。
5.歯槽基底弓幅径ならびに歯槽基底弓長径は,男子において幅径は叢生群の方が,長径は正常群の方が小さい傾向が認められたが,有意差は下顎B-M2間のみであった。
6.将来の永久歯列の正常あるいは叢生の形成に影響を与える乳歯列の要因には,男子では歯列弓幅径が,女子では歯冠幅径の大きさが大きく関与するものと思われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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