抄録
著者らは,術者との言語的コミュニケーションが取れないことから,術者の治療指示に従えず齲蝕治療に困難を生じた11歳7か月の女児に対して心理社会的背景の分析を行った.患児は不登校児で刺激に弱く,不安を感じると内向し閉じこもる傾向が見られ心理的脆弱さが考えられた.このため治療によって生じる過剰な不安や緊張を減少させる目的で,笑気吸入鎮静法を用いた.
今回著者らが用いた笑気吸入鎮静法は,行動療法の一法である系統的脱感作法を応用し,笑気ガス濃度と吸入時間を段階的に減少させた.また,同時に治療態度を積極的に評価して治療に対する自信を増加させた.その結果,治療9回目以降,治療に関する指示に従うことができるようになり,治療困難から通常下での歯科治療が可能となった.