抄録
ヒトの学童期に相当する生後6週齢Wistar系雄ラットに,カルシウム欠乏食,低カルシウム食を3週間与えて虚弱骨を惹起させたのち,カルシウムを含有した標準食の単独療法に切り換え,下顎頭軟骨の成長に及ぼす骨基質形成について検索し,以下の結果を得た。
1.体重
すべての群において有意差は認められなかった。
2.エックス線マイクロアナライザーによるカルシウム,リンの分析所見
相対カルシウム量比,相対リン量比は対照群と低カルシウム食群では,ほぼ同値であるのに対し,カルシウム欠乏食群ではこの両群に比較して低値であった。
3.走査型電子顕微鏡学的所見
下顎頭全体像,軟骨層の肥大帯部における軟骨小腔,石灰化小球,コラーゲン原線維,骨梁部における骨小腔やコラーゲン原線維の状態などを観察した結果,カルシウム欠乏食群では食餌療法により改善は認められたものの対照群と比較すると,いまだ十分な回復所見は得られなかった。しかし軟骨層から骨梁部では,低カルシウム食群は食餌療法によりほぼ対照群に近い回復所見が得られた。
以上のことから,カルシウム摂取不足のWistar系雄ラットの下顎頭軟骨の成長に関しては,とくに低カルシウム食群ではほぼ対照群と同程度近く,回復することが明らかになった。