小児歯科学雑誌
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ヒト乳臼歯根管口部の形態学的研究
加齢的変化について
久保田 一見張 野後藤 讓治
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1998 年 36 巻 3 号 p. 503-519

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抄録
ヒト乳臼歯根管口部の形態を解明する目的で,3~8歳の小児の下顎乳臼歯86歯を用い,エックス線写真撮影,根管の生体印象採得,横断樹脂切片を作製した。コンピュータ画像処理により髄床底下方0.5mm部および1.0mm部における根管の幅径,長径,面積及びConcavityの程度の計測,エックス線写真により髄室床部の厚径及び根管口部の幅径の計測を行った。また,各年齢層の計測値を比較し,加齢的変化を究明した。
1.下顎乳臼歯根管口部の幅径は第一乳臼歯:近心>遠心,第二乳臼歯:近心<遠心,エックス線写真計測値は樹脂切片実測値よりやや大きかった。長径は第一乳臼歯:近心<遠心,第二乳臼歯:遠心≒近心,面積は第一乳臼歯,第二乳臼歯:近心<遠心であった。髄床底下方0.5mm部の根管の幅径と面積,および第一乳臼歯近心根管口部の長径は1.0mm部より大きかった。Concavityは第一乳臼歯近心根管外側には全く見られず,根管内側に多かった。Concavityの程度は第一乳臼歯近心以外の根管内側で大きかった。各根管口部の大きさの加齢的変化は,第二乳臼歯近心根管面積以外には認められなかった。
2.下顎乳臼歯髄室床部の厚径は加齢に伴い著しく増加し,その結果,根管口部位置の上昇をもたらし,根管口部の大きさの加齢的変化としては現れなかったものと判断した。
以上の計測結果は乳臼歯歯内療法,特に生活歯髄切断法に使用する器具選択の基準の確立に有効であると思われた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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