小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
幼若永久歯歯齦溝の加齢的推移
片根 智子辻野 啓一郎藤居 弘通町田 幸雄
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 36 巻 3 号 p. 520-526

詳細
抄録

小児の歯周疾患を評価する基準を決定する目的で,健全な歯周組織を有する幼若永久歯について,萌出及び加齢に伴う歯齦溝の推移を調査した。調査対象は健全な永久歯の歯齦溝を有する5歳から16歳までの男子99人,女子132人の計231人である。被験歯はGI=0と判定された上下顎の中切歯,側切歯,第一大臼歯で唇頬側の近心,中央,遠心の歯齦溝を0.5mm単位で測定した。
1.上下顎第一大臼歯の歯齦溝の深さは,出齦後増加傾向を示し,12~13歳でほぼ安定した。
2.上下顎切歯の歯齦溝の深さは,歯種によってわずかな差があったが10歳頃まで増加を示し,その後安定した。
3.第一大臼歯で歯齦溝の深さが,ほぼ安定する12~13歳では中央部及び,近遠心部の平均的深さは,上顎1.39mmと150mm,下顎では1.16mmと1.39mmであった。
4.切歯では歯齦溝の深さがほぼ安定する10歳,10~11歳では中央部,近遠心部の平均的深さは,上顎中切歯では0.92mmと1.27mm,上顎側切歯では0.93mmと1.24mm,下顎中切歯で0.69mmと1.13mm,下顎側切歯では0.75mmと1.17mmであった。
5.歯齦溝は全観察期間を通じ,全ての歯種において中央部が近遠心部より浅かった。
6.全ての歯種,年齢を通じて健全な歯齦溝の最大値は3mmであった。したがって小児の健常な歯齦溝の深さは個人差を考慮しても3mm以内であると思われた。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top