小児歯科学雑誌
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象牙細管を介した細胞毒性試験法
ヒト歯髄由来線維芽細胞様細胞に対するコンポジットレジンの細胞毒性
長谷川 智一柏原 陽子菊入 崇吉村 善隆白川 哲夫加我 正行小口 春久
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1998 年 36 巻 4 号 p. 646-651

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抄録

成牛永久歯より調製した象牙質切片を使用し,象牙細管を介した細胞毒性試験を行った。また試験細胞にはヒト乳歯および永久歯から分離した歯髄由来線維芽細胞様細胞を使用した。
本研究においては,歯冠修復材料のひとつであるコンポジットレジンを使用し,結果が既報の細胞毒性試験と一致することを示した。本研究よりコンポジットレジンの含有モノマーは象牙細管を通過して,歯髄組織に毒性を発現することが示された。毒性発現の際にIL-1β の産生は認められず,アポトーシスも生じていなかった。さらにこの毒性感受性は,乳歯および永久歯歯髄細胞間で有意差が認められなかった。
この細胞毒性試験は,簡便でしかも費用も安価であり,さらに従来の評価項目であった生細胞数の測定以外に,多数の分子・遺伝子レベルでの解析が可能であることが示唆された。さらに乳歯および永久歯の歯髄の反応性も比較・検討が可能であり,非常に有用であると思われた。
今後の,新たな歯科修復材料の細胞毒性試験に,本研究のシステムは極めて利用価値が高いと考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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