小児歯科学雑誌
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線維芽細胞のサイトカイン分泌と,血液細胞の分化増殖に対するベスナリノンの影響
鈴木 祥子
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1998 年 36 巻 5 号 p. 758-767

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抄録

副作用として無顆粒球細胞症の発症が認められる経口強心薬ベスナリノンを用い,アポトーシス誘導シグナルであるセラミドの無顆粒球細胞症発生機序に対する関与を検討した。顆粒球に分化可能なHL-60細胞では,ベスナリノン添加時に細胞内セラミドが増加し,分化誘導およびアポトーシス誘導による細胞増殖抑制を認めた。一方,線維芽細胞HFL-1では,ベスナリノンまたはC2-セラミドの添加により,フォルボールエステル(TPA)を介するインターロイキン-6(IL-6)の分泌が抑制された。
以上の結果より,ベスナリノンは細胞内セラミド増加を介する分化とアポトーシスによる細胞増殖抑制,並びに造血微少環境を構成する線維芽細胞からの造血性サイトカイン分泌量の減少による細胞成熟阻害との二つの機序が相乗的に作用し,顆粒球系前駆細胞の増殖と成熟を阻害することが示唆された。
破骨細胞が造血細胞に,造骨細胞がストローマ細胞に発生起源を同じくすることより,ベスナリノンによる血液造血環境の影響を詳細に検討することは,歯科関連の骨発生機構解析の手がかりになると考えられる。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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