小児歯科学雑誌
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乳歯癒合歯の歯種と後継永久歯先天性欠如との関連について
辻野 啓一郎黒須 美佳片根 智子望月 清志米津 卓郎藥師寺 仁
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1998 年 36 巻 5 号 p. 861-866

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抄録

従来から,乳歯癒合歯が存在する場合,約40~50%の頻度で後継永久歯のうち1歯が先天性に欠如するといわれており,乳歯癒合歯の歯種により後継永久歯の欠如する頻度に差がみられることが報告されている。乳歯癒合歯と後継永久歯欠如の発現率を歯種別に調査することは,特にエックス線撮影が困難である集団歯科健診時における保護者への指導などに有用な参考資料となる。今回著者らは,1986年4月から1997年3月まで東京歯科大学水道橋病院および千葉病院小児歯科を受診した患児のうち乳歯癒合歯を有し,しかも後継永久歯の状態が確認できた小児152名(男児79名,女児73名)の癒合歯182歯(男児100歯,女児82歯)について調査を行い以下の結論を得た。
乳歯癒合歯の歯種により,後継永久歯の欠如率に大きな差が認められ,下顎BC癒合歯における後継永久歯の欠如率は71.1%と,他の歯種の癒合歯に比較し最も高かった。次いで上顎AB癒合歯で70.6%と高く,しかも後継永久歯が認められた症例であっても,その多くは形態異常を呈していた。また,下顎AB癒合歯では後継永久歯の欠如率が11.1%と最も低かった。
男女児別では,男児で下顎AB癒合歯の,女児で下顎BC癒合歯の発現率が他歯種の癒合歯に比べ有意に高かったが,後継永久歯の欠如率には有意差がみられなかった。さらに,左右側の同名癒合歯間では後継永久歯の欠如率に差はみられなかった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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