小児歯科学雑誌
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再植した根未完成永久歯の歯髄が歯周組織に及ぼす影響について
第1報 動揺度ならびに臨床観察による評価
楊 秀慶大出 祥幸荻原 和彦
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1998 年 36 巻 5 号 p. 883-895

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抄録
再植した根未完成永久歯に対し歯髄処置をしない場合,再植歯とその歯周組織に及ぼす影響を知るために,ビーグル犬の上顎左右第2切歯を用い以下の方法で実験した。上顎左右第2切歯を脱離後,再植・固定を行い,左側再植歯は歯髄をそのままにし実験歯とした。一方,右側再植歯は再植後1週目に歯髄除去し,水酸化カルシウム製剤を貼薬して対照歯とした。実験期間中は,定期的に動揺度と歯肉炎症指数の測定,口腔内写真撮影さらに上顎前歯部のエックス線撮影を行い,対照歯と実験歯を比較観察し以下の結果を得た。
1.対照歯と実験歯の動揺度および歯肉炎症指数を統計処理したところ,再植直後から再植5週目までは有意な差を認めないが,再植後5週目以降では対照歯と実験歯のあいだで有意な差を認めた。
2.口腔内写真で歯肉の状態について実験開始時と終了時を比べると,対照歯に対し実験歯の歯肉では炎症が継続していた。
3.経日的に撮影したエックス線写真の観察では,実験歯の歯周組織は対照歯に比べ再植後5週目から再植後7週目でエックス線透過性が増加し,歯根膜腔も拡大していた。以降は歯根及び歯周組織に顕著な吸収がみられ,炎症は拡大していた。
以上より再植した根未完成歯に対する歯髄処置の有無は,再植5週目までに診断することが重要である。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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