抄録
半透明試料専用に開発された分光光度計センサーで求めた測色値の色彩学的評価を行うことを目的に研究を行った。村上色彩技術研究所製高速分光光度計CMS-35FSに半透明試料専用に開発したフレキシブルセンサーFS-TL型(円周照射透過散乱光受光)もしくはコントロールとしてFS-3型(45° 円周照射垂直受光)を取り付け,成人上顎中切歯唇面中央部(8名:16歯)と厚径1mmのコンポジットレジン試料(3M社SiluxPlus: U,Y,DY,L,UO,YO)を測色した。色の表示にはCIE1976 L*a*b*表色系を用い,YI,L*,a*,b*,C*ab,hab及びΔE*abを求めた。FS-TLによる測色値とFS-3による測色値を比較し,統計処理を行った。
1)歯冠色についてはb*,YIとC*abが,またレジン色については背景色が白色の場合も黒色の場合もa*,b*,YIとC*abは,FS-3と比較し,FS-TLによる測色値の方が有意に高かった。一方,habは歯冠色並びに背景色が白色と黒色の両者の場合のレジン色について,FS-3と比較し,FS-TLの方が有意に低かった。
2)FS-3と比較し,FS-TLで測色した場合のb*,YIおよびC*abは特に高い値を示した。
3)FS-3と比較し,FS-TLで測色した場合には,低波長域における分光反射率は低く,高波長域における分光反射率は高かった。