小児歯科学雑誌
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乳歯抜歯創の治癒過程における血管構築と新生骨梁形成に関する研究
吉村 譲
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1999 年 37 巻 3 号 p. 488-499

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抄録

歯根吸収の始まっていない乳歯抜歯創の治癒過程における血管の構築と新生骨梁の形成について明らかにすることを目的に本研究を行った。
生後約1年で乳歯列期のカニクイザル7頭を用い,抜歯後1日,3日,5日,7日,14日,21日,42日経過した後,微細血管鋳型標本と光学顕微鏡標本を作製し観察を行った。
抜歯後3日目で永久歯歯胚と接する部位で,抜歯窩内へ向かって歯胚側から既存血管網を通じて血液の補充があることが認められた。この歯胚側からの血液の流れは経時的に減少し,抜歯後7日目で永久歯歯胚と抜歯窩内でおのおの独立した血管網が形成された。また永久歯抜歯創の場合,一般的に抜歯窩の下層では骨梁の吸収による多孔化を,窩口部では骨梁の添加による緻密化を示すことが報告されているが,本実験の乳歯では,抜歯後42日目で窩口部を被覆する骨の緻密化は認められなかった。これは,抜歯による咬合圧の喪失に伴う骨改造というよりも,顎骨の成長と永久歯の萌出が大きく関与していることが考えられた。以上のことより,乳歯と永久歯の抜歯創の治癒過程には違いがあることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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