小児歯科学雑誌
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経管栄養児・者における歯科疾患のリスクに関する研究-第1報歯科疾患罹患状況について-
高井 経之小笠原 正大槻 征久尾崎 真理子穂坂 一夫渡辺 達夫笠原 浩
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1999 年 37 巻 4 号 p. 671-676

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抄録

経管栄養中の重症心身障害児・者における歯科疾患のリスクを検討することを目的として,本研究を行った。調査対象者は,長期間にわたって経管栄養を行っている重症心身障害者17名(以下,経管群と略す。経管栄養期間平均4.3±4.3年,平均年齢13.2±6.4歳)ならびに対照として同一病棟に入院中で経管栄養を施されていない重症心身障害者24名(以下,非経管群と略す。平均年齢18.6±4.8歳)について,歯科疾患罹患状況の実態調査を行い,両群の清掃状態,齲蝕,歯肉炎について比較,検討した。
1.経管群の齲蝕発生歯数は平均0.1±0.1歯/年であり,非経管群の0.6±0.7歯/年と比較して有意に少なかった。
2.歯垢付着状況をPIIで比較した結果,経管群が有意に低かった。
3.両群とも約6割の者に頬舌面の歯石沈着が認められたが,経管群の半数以上には咬合面にも,歯石が沈着していた。
4.歯肉炎の程度をGIで比較した結果,両群とも軽度歯肉炎に罹患していたものが多かった。
5.本調査から,経管栄養中は齲蝕に対してはリスクが少ないものの,歯周疾患に対してはリスクが高いことが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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