小児歯科学雑誌
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37 巻 , 4 号
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  • 高井 経之, 小笠原 正, 大槻 征久, 尾崎 真理子, 穂坂 一夫, 渡辺 達夫, 笠原 浩
    1999 年 37 巻 4 号 p. 671-676
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    経管栄養中の重症心身障害児・者における歯科疾患のリスクを検討することを目的として,本研究を行った。調査対象者は,長期間にわたって経管栄養を行っている重症心身障害者17名(以下,経管群と略す。経管栄養期間平均4.3±4.3年,平均年齢13.2±6.4歳)ならびに対照として同一病棟に入院中で経管栄養を施されていない重症心身障害者24名(以下,非経管群と略す。平均年齢18.6±4.8歳)について,歯科疾患罹患状況の実態調査を行い,両群の清掃状態,齲蝕,歯肉炎について比較,検討した。
    1.経管群の齲蝕発生歯数は平均0.1±0.1歯/年であり,非経管群の0.6±0.7歯/年と比較して有意に少なかった。
    2.歯垢付着状況をPIIで比較した結果,経管群が有意に低かった。
    3.両群とも約6割の者に頬舌面の歯石沈着が認められたが,経管群の半数以上には咬合面にも,歯石が沈着していた。
    4.歯肉炎の程度をGIで比較した結果,両群とも軽度歯肉炎に罹患していたものが多かった。
    5.本調査から,経管栄養中は齲蝕に対してはリスクが少ないものの,歯周疾患に対してはリスクが高いことが示唆された。
  • 細矢 由美子, 後藤 讓治
    1999 年 37 巻 4 号 p. 677-684
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    chemo-mechanicalな齲蝕除去法に使用されるCarisolv TM(Medi-Team)の乳歯に対する齲蝕除去効果と齲蝕下象牙質の硬さに及ぼす影響を観察することを目的に研究を行った。
    6歳2か月-9歳10か月(平均年齢7歳8か月)の患児6名の齲蝕症第2度の乳歯11歯に対し,Carisolv TMを用いて軟化象牙質を除去し,臨床観察を行った。さらに,齲蝕症第2度の抜去乳犬歯5歯を齲蝕中央部で半切し,1側をCarisolv TMと専用ハンドインスツルメントを用いて(Carisolv群),他側はラウンドバーで(バー群)軟化象牙質を除去し,齲蝕下象牙質のヌープ硬さを測定した。得られた結果は以下のとおりである。(臨床観察):
    1)Carisolv TMを用いて軟化象牙質除去中に痛みを訴えた症例は皆無であった。
    2)11歯中9歯に対して電気エンジン,タービンが併用され,5歯に対して局所麻酔が併用された。
    3)11歯中7歯に軽度の歯肉の発赤と腫脹が認められた。
    4)11歯中7歯は,Carisolv TMのみでは軟化象牙質を十分に除去できなかった。(硬さ試験):
    1)齲窩中央部における齲蝕下象牙質のヌープ硬さを窩底から50μm間隔に300μm下方の部位まで深さ別に比較した結果,いずれの深さについてもCarisolv群とバー群問に有意差は認められなかった。
  • 高森 一乗, 三浦 保紀, 倉田 香, 宇都宮 忠彦, 吉田 明弘, 山本 浩嗣, 前田 隆秀
    1999 年 37 巻 4 号 p. 685-694
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    病歴,家族歴ならびに病理組織学的診断により遺伝性歯肉線維腫症(HGF)と診断された患児を経験し,歯科学的ならびに免疫組織化学的に検索を行った。
    歯科学的検索は,パノラマエックス線,頭部エックス線規格写真,歯列模型分析を用いて行ったところ,HGF患児のプロフィログラムは,同年代基準値に比較して,顎顔面は小さい傾向を示した。歯列模型分析においては,乳歯列の基準値とほぼ同様であった。病理,免疫組織化学的検索は,切除した歯肉を通法に従いパラフィン連続薄切切片を作製し,細胞増殖の指標であるproliferating cell nuclear antigen(PCNA)抗体を免疫組織化学染色ならびに,細胞外マトリッククス分解酵素の一つであるmatrixmetalloproteinase-1(MMP-1)抗体を蛍光免疫組織化学染色を行った。PCNAは光学顕微鏡下にて,MMP-1は,共焦点レーザー顕微鏡下にて観察し,健常児歯肉と比較検討したところ以下の結果が得られた。
    PCNA抗体の比較において,HGF患児歯肉の上皮細胞,歯肉線維芽細胞は,健常児と比較して,陽性細胞率が,統計学的有意に高かった。MMP-1抗体の比較においては,単位面積当たりの蛍光強度を比較検討したところ,有意差を持ってHGF患児が少なかった。
    以上の結果より,HGF患児の歯肉は,細胞増殖能が健常児より高く,また,細胞外マトリックス代謝におけるマトリックス分解能は,健常児に比べ低いという生理的不調和が遺伝性歯肉線維腫症の誘因であることが強く疑われた。
  • 海原 康孝, 天野 秀昭, 三浦 一生, 長坂 信夫, 石田 房枝
    1999 年 37 巻 4 号 p. 695-699
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    うつぶせ寝育児が顎顔面歯列の形態や咬合に与える影響について,歯科的検討が行われている。
    本研究では側貌頭部エックス線規格写真分析により,乳児期にうつぶせ寝で育てられた小児の乳歯列期における顎顔面形態について検討し,日本小児歯科学会の標準値と比較した結果,以下のような傾向が認められた。
    1)男子はS-Nが大きい傾向が認められ,女子はS-N,N-Me,A'-Ptmが大きい値を示した。
    2)Facial angleが小さく,Y-axisが大きい傾向が認められた。
    3)プロフィログラムからは,特に男子において下顎の後退傾向が認められた。
    以上より,うつぶせ寝で育てられた小児の顎顔面形態は,前脳頭蓋底および顔面高さが長く,下顎が後退する傾向が認められた。
  • 船津 敬弘, 近藤 信太郎, 井上 美津子, 若月 英三, 佐々 竜二
    1999 年 37 巻 4 号 p. 700-707
    発行日: 1999年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本人乳歯の大きさにおける性差を分析するために,乳歯列正常咬合を有する小児100名(男児50名,女児50名)から得られた石膏模型の歯冠近遠心幅径,唇(頬)舌径を杉山・黒須の計測基準に従い,デジタルノギス(0.01mm)を用いて計測した。歯冠サイズの性差は性差百分率によって検討した。歯冠形態の比較は幅厚指数によって行った。結果は以下の通りである。
    1.計測者内誤差は第一乳臼歯でやや大きいものの0.1mm未満であり,分析に影響を与えない範囲内であった。
    2.歯冠近遠心幅径,唇(頬)舌径ともに全ての歯種で,1-3%程度,男児が女児より大きかった。
    3.上顎では歯冠唇(頬)舌径の,下顎では歯冠近遠心幅径の性差が大きい傾向を示した。
    4.男・女児ともに変動係数は,歯冠唇(頬)舌径の方が近遠心幅径より大きく,サイズの変異が大きい傾向を示した。5.幅厚指数では歯冠サイズと比較して大きな性差はみられなかったが,下顎乳犬歯では有意差がみられ,女児が相対的に歯冠唇舌径が大きかった。
  • 林 文子, Udijanto Tedjosasongko, 粟根 佐穂里, 岡田 貢, 香西 克之, 長坂 信夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 708-715
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本茶,ウーロン茶,紅茶などの各種茶のフッ素溶出濃度を測定し,齲蝕予防への効果を検討するため,宇治産および静岡産煎茶,静岡産ほうじ茶,中国産ウーロン茶,スリランカ産紅茶を材料とし,浸出温度50℃,60℃,70℃,80℃ および90℃,浸出時間30秒,1分,2分,5分および10分の各条件下で浸出した茶浸出液のフッ素溶出濃度を測定し,以下の結果を得た。
    1)温水で浸出した場合のフッ素溶出濃度は,浸出温度にかかわらず紅茶,ほうじ茶,煎茶,ウーロン茶の順に高く,その濃度は浸出温度80℃,浸出時間2分の場合紅茶1.82ppm,ほうじ茶1.02ppm,煎茶(宇治産,並級,古茶)0.80PPm,ウーロン茶0.48PPmであった。2)煎茶においては保存期間にかかわらず,並級の方がフッ素溶出濃度が高い傾向がみられた。また,産地別では宇治産のものにフッ素溶出濃度が高い傾向がみられた。3)水だしした場合のフッ素溶出濃度は,ほうじ茶(3.69ppm),ウーロン茶(2.18ppm),煎茶(1.39PPm),紅茶(1.58PPm)の順に高かった。
    以上の結果より,茶浸出液のフッ素溶出濃度は茶の産地や製法で異なり,煎茶においては,一般に下級と言われる硬化した下位葉を使用した茶に多く含まれていることが示された。これらの結果は,齲蝕予防における食生活指導への茶飲料の効果的な利用を示唆するものである。
  • 肥川 員子, 渡辺 里香, 早崎 治明, 山崎 要一, 丸亀 知美, 永田 めぐみ, 中田 稔
    1999 年 37 巻 4 号 p. 716-725
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    九州大学歯学部附属病院小児歯科において治療を行った乳歯列反対咬合の治療前後の上下歯列の変化について検討した。被蓋改善に用いた装置はチンキャップ,アクチベーター,リンガルアーチ,上顎前方牽引装置である。これらの4装置を用いた咬合処置症例について,歯列石膏模型を用い,被蓋改善前後の下顎歯列形態の変化,上下乳歯列によって囲まれる水平面投影面積,および上下歯列の前後的位置関係の変化について比較し,以下の結論を得た。
    1.上顎のみに作用する装置群も含めて,全ての群で下顎歯列形態にも明らかな変化が起きていた。
    2.歯列で囲まれる水平面投影面積は,上顎では,チンキャップ群,アクチベーター群,リンガルアーチ群で増加傾向を示し,上顎前方牽引装置群で減少傾向を示した。下顎では,全ての群で減少傾向を示した。
    3.上下歯列の前後的位置関係の変化では,リンガルアーチ群は,他のどの装置よりも前方部の変化が大きかった。上顎前方牽引装置群は,後方部の変化が他のどの装置よりも大きかった。
  • 石川 雅章, 山田 恵理, 佐藤 大樹, 桔梗 知明, 舩山 研司
    1999 年 37 巻 4 号 p. 726-733
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    混合歯列期の上顎切歯部叢生20症例から得られた初診時歯列模型を資料として,永久歯列初期での上顎歯列弓配列の可能性を量的に予測するために空隙分析を行い,術後の配列結果との関連を検討した。必要歯列弓長の算出には小野の回帰方程式を用い,上顎切歯部叢生が緩和された状態を想定した有効歯列弓長の計測には,従来の切歯部と側方歯部を直線的に合算するセグメント法と今回提案したプリフォームドワイヤー法を用いた。
    必要歯列弓長の予測値と永久歯列初期での実測値との差はごく僅かで,臨床的に十分許容範囲であった。結果的に上顎歯列弓を配列しえた症例でも,セグメント法による空隙分析の結果,片側で2,3mmマイナスのものが多数みられた。一方,プリフォームドワイヤー法での分析は,概ね治療後の上顎歯列弓配列結果を反映していた。
    術前の上顎歯列弓形態の歪みが比較的僅かな症例では,有効歯列弓長算出における両法の差が少なく,V字型などの形態をとる場合,両法の差が大きい傾向となった。従来のセグメント法は,その結果を直接治療計画に適用するには慎重となるべきであり,プリフォームドワイヤー法は,多少改善の余地があるものの,上顎切歯部叢生症例における空隙分析に応用しうると思われた。
  • 木村 奈津子, 有田 憲司, 西野 瑞穗
    1999 年 37 巻 4 号 p. 734-746
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,水酸化カルシウムCa(OH)2による生活歯髄切断法について,被蓋硬組織の形成に必要な最短の水酸化カルシウム貼薬期間ならびに一定期間後水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去した場合の被蓋硬組織の形成と歯髄の状態を検索することを目的として行った。実験方法は,ラットの臼歯を用い,歯髄切断後,水酸化カルシウムを貼薬,グラスアイオノマーセメントで仮封し,それぞれ1日,7日,14日後,水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去してグラスアイオノマーセメントで再仮封し,実験期間を42日としたもの,および1日,7日,あるいは14日を実験期間としたもの,これらについて病理組織像を観察した。主な結果は次のとおりであった。
    1)42日目には,水酸化カルシウムの貼薬期間が1日あるいは7日のものでも被蓋硬組織の形成を認めたものがあったが,14日貼薬の方が被蓋硬組織形成の確実性が高かった。
    2)水酸化カルシウムを1日,7日あるいは14日貼薬後,水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去した場合でも,42日目には被蓋硬組織の上に再び壊死層が認められた。
    以上の結果から,水酸化カルシウムを2週間作用させればその後に被蓋硬組織は確実に形成されるが,2週間の時点ではほとんど被蓋硬組織の形成は生じておらず,水酸化カルシウムと壊死組織を一回で完全に除去するためには,切断部が被蓋硬組織により閉鎖されたのち,除去処置を行わねばならないことが示唆された。
  • 鬼頭 秀明, 長縄 友一, 小野 俊朗, 吉田 良成, 大迫 佳子, 外山 敬久, 川橋 ノゾミ, 土屋 友幸
    1999 年 37 巻 4 号 p. 747-752
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科治療時に視聴覚刺激から受ける疼痛,不快の認知は,患者の不安や恐怖を増強させることが報告されている。そこで本研究では,これらの刺激を遮断することにより,情動変化がどのように変化するかを検索することを目的として行った。被験者は,本研究に対する理解と同意の得られた本学歯学部学生7名であり,浸潤麻酔時と疑似切削時の内部行動変化(耳朶容積脈波(PL;Plethy-smogram)を分析するとともに,質問調査を行った。
    視聴覚刺激の遮断は,ヘッドホーンを用いた音楽聴取(聴覚提供時),バーチャルヴィジョンを用いた映像鑑賞(視覚提供時),バーチャルヴィジョンを用いた映像鑑賞と音声聴取(視聴覚提供時),さらに視聴覚情報の内容を被験者本人に選択させた時(視聴覚選択時)の4種類について検索した。なお対象として視聴覚を提供しない場合(Control)についても調査した。
    その結果の要約は下記の通りである。
    1)内部行動観察において,PL変化率の値は浸潤麻酔時,疑似切削時ともにControl値が最も高く,視覚と聴覚を併用している視聴覚提供時,視聴覚選択時は視聴覚の単独提供時よりも低い傾向が認められた。
    2)質問調査において浸潤麻酔時,疑似切削時ともに疼痛,不快の程度を示す得点は視聴覚単独提供群時よりも,両感覚の提供時の方が低い傾向が認められた。
    以上の内部行動観察と質問調査の結果から,歯科治療時において視覚,聴覚を介して得る疼痛,不快に対する認知は,実際感じる疼痛や不快の程度に影響を及ぼし,それら視聴覚刺激を遮断することによって疼痛や不快の程度が軽減されることが結論された。
  • 吉田 良成, 大迫 佳子, 今泉 三枝, 渡辺 直彦, 鬼頭 秀明, 今村 基尊, 小野 俊朗, 土屋 友幸
    1999 年 37 巻 4 号 p. 753-760
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    現在,顎機能障害は年々増加傾向にあり,小児歯科の臨床においても,顎機能診査は欠くことのできないものとなっている。本研究ではその診査項目の一つである最大開口量について,2歳から18歳までの2,852名(男子1,300名,女子1,552名)を対象として調査し,最大開口量と年齢・身長・体重の関係について比較検討を行い,以下の結論を得た。
    1.増齢に伴い,最大開口量は増加する傾向が認められたが,15歳以降の女子においては,ほとんど変化がなかった。また男子は女子よりも大きな値を示した。
    2.身長・体重が増すにつれ,最大開口量は増加する傾向が認められ,身長,体重とも一部の群を除き,男子が女子よりも大きな値を示した。
    3.年齢,身長,体重における最大開口量の男女差は,男子の二次性徴が始まる頃より著明になった。
    4.最大開口量は年齢,身長,体重に対し高い相関を示し,その中でも身長が最も高かった。
  • 河野 正芳, 高橋 康男, 金沢 興燮, 菊池 元宏, 赤坂 守人
    1999 年 37 巻 4 号 p. 761-767
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の側方滑走運動時におけるサイドシフトの特性を明らかにするために,小児群20名(男児10名,女児10名),成人群20名(男子10名,女子10名)を被験者とし,下顎運動6自由度測定装置を用いてサイドシフトを測定し,その成分を純側方移動成分と回転移動成分に分け比較検討を行ったところ,以下の結論を得た。
    総サイドシフト量は,男女間に有意な差はみられず,小児群で1.82±0.88mm,成人群で1.29±0.90mmであり,小児群は成人群に比べて有意に大きい値を示した。
    回転移動成分は,小児群で0.32±0.07mm,成人群で0.53±0.15mmであり,成人群は小児群に比べて有意に大きい値を示した。
    純側方移動成分は,小児群で150±0.90mm,成人群で0.76±0.85mmであり,小児群は成人群に比べて有意に大きい値を示した。
    回転成分の割合は,小児群で17.8%,成人群で42.3%であり,小児群で少ない傾向にあった。
  • 菊入 崇, 白川 哲夫, 長谷川 智一, 吉村 善隆, 竹山 禎章, 加我 正行, 小口 春久
    1999 年 37 巻 4 号 p. 768-774
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素(NO)は,近年さまざまな組織で産生されていることが報告されており,その生理活性物質としての働きが注目されている。しかしながら,ヒト歯根膜におけるNO産生やその調節因子ついて調べた報告は見あたらない。本研究では,ヒト歯根膜由来(hPDL)細胞のNO産生能とそれに対するインターロイキン-1β(IL-1β)および機械的刺激の影響を培養条件下で検討した。
    無血清培地における培養12時間後のhPDL細胞(1.0×106cells/well)のNO産生量は0.28±0.23nmolで,IL-1β(20ng/ml)によってもNO産生量に有意な変化は認められなかった(0.41±0.22nmol/12h)。一方,血清培地においてhPDL細胞(4×105cells/well)に周期的伸展力を加えた場合(伸展率18%,60回/min),NO産生量はコントロール値1.04±0.22nmol/12hに対し9.22±1.37nmol/12hと著明に増加した。
    以上の結果から,hPDL細胞のNOS産生能はIL-1β 非依存性であること,および機械的刺激がNO産生の調節因子として重要であることが示唆された。
  • 川端 明美, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 775-781
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,窩洞形成を目的にEr:YAGレーザーを小児歯科臨床に応用する際の有用性および安全性を検討するため,便宜抜去された根尖未完成なヒト幼若小臼歯を用いて,歯牙硬組織および歯髄への熱影響を検討した。実験試料は咬合面の象牙質を露出させ,象牙質厚径が1.0,15mmとなるよう作製した。照射条件は50,100,150mJ/pulse,10PPsと設定し,直径0.6mmのコンタクトチップで被験歯に接触させ注水下で照射した。照射時間を2,5,10sとし,1照射条件,1厚径で5試料ずつ(計90試料)レーザー照射し,照射前,照射時,照射後の温度変化をアルメルークロメル熱電対で測定し,平均値と標準偏差を求めた。この結果より,各照射条件ごとに象牙質の厚径の違いによる温度変化および照射時間の違いによる温度変化の比較検討を行った。
    1.照射に伴う象牙質の温度上昇は照射エネルギー,照射時間,象牙質の厚径に影響され,照射エネルギーが高くなり,照射時間が長くなり,また象牙質の厚径が薄くなると上昇温度は高い値を示した。
    2.レーザー照射に伴い,歯髄側象牙質の温度は上昇したが,十分な注水下での照射により全ての照射条件下での最高上昇温度平均値は5℃ 未満と抑制され,歯髄に対する影響はないことが示唆された。
    3.照射条件150mJ/pulse,5s,10sにおいて,個体によっては5℃ 以上の最高上昇温度を示した場合もあり,歯髄に対する影響が危惧されたものも認められた。
  • 川端 明美, 山崎 一郎, 宮沢 裕夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 782-797
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,窩洞形成を目的にEr:YAGレーザーを小児歯科臨床に応用する際の有用性および安全性を検討するため,1報に引き続き歯硬組織および歯髄への影響を幼若ラットを用いて2つの実験を行い検討した。実験1では照射条件の違いによる照射面の観察を走査型電子顕微鏡(以下SEM)にて行った。被験歯は成長・発育期にある根尖未完成な体重30-50gの3週齢Wistar系雄性ラット上顎前歯を用いた。照射条件は50,100,150mJ/pulseの3条件とし,1照射条件で5匹(計15匹)のラットを実験に供した。実験2では照射による歯髄への影響を検討するため,ラット歯髄の病理組織学的観察を行った。
    1照射条件で24匹(計72匹)のラット下顎右側臼歯咬合面にレーザーを照射した。これを3グループの実験期間(照射直後,7日,30日)に分類し,歯髄の経時的変化を観察した。1.照射面のSEM観察では,いずれの条件下でも高速回転切削でみられるスメアー層は観察されず,象牙細管が開口した状態が認められた。
    2.病理組織学的観察では照射直後には充血や出血,滲出性変化といった循環障害や象牙芽細胞の配列の乱れやPulpo-dentinal membraneの消失が認められたが,7日後には全ての照射条件において回復傾向がみられ,骨様象牙質の形成が認められ,歯髄固有細胞は増生し,30日後では著明な変化は認められなかった。
  • 平良 梨津子, 飯沼 光生, 鈴木 康秀, 田村 康夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 798-809
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    離乳直後から固形飼料あるいは粉末飼料で飼育することが老化や寿命にどのような影響を及ぼすかを老化促進マウス(SAM P1)を用いて検討した。測定項目は体重,飼料摂取量,老化度指数,自発運動量,自然死するまでの生存日数である。また4,24,52週でそれぞれの群のマウスを屠殺し,舌へのアミロイド蛋白の沈着を観察した。その結果
    1)体重,飼料摂取量に有意な差は認められなかった。
    2)老化度指数は,粉末食群の方が常に固形食群より高かった。特に老化度判定項目の反応性,光沢,角膜不透明,角膜潰瘍,白内障および脊椎前弯度の6項目においては両群間の差が著しかった。
    3)活動量も,固形食群の方が粉末食群に比べ,常に活動量は大きく,特に40週以降では粉末食群はほとんど自発運動は認められなかった。
    4)アミロイドの沈着は4週では両群とも認められなかったが,24週以降は粉末食群は固形食群に比べてアミロイド蛋白の沈着が多かった。
    5)粉末食群の方が早期に死亡する傾向が認められた。
    以上のことより老化促進マウスを粉末飼料で飼育した場合,固形飼料で飼育した場合に比べ老化が早期に進行し,寿命が短くなることが示唆された。
  • 鈴木 淳子, 荻原 和彦, 菊池 憲一郎, 相山 誉夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 810-823
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    妊娠母体がレチノイン酸(RA)を過剰に摂取すると,胎児の下顎骨の発育にどのような影響が現れるかを調べる目的で研究を行った。妊娠マウスの腹腔内へRAを濃度と投与時期を変えて投与した。妊娠18日目胎仔の下顎骨についてアリザリンレッドとアルシアンブルー染色を施した骨染色透明標本,およびコッサ法とアルシアンブルー染色を施した組織切片標本を作製し,検討を行った。得られた結果は次のとおりである。
    1.妊娠10日目以前にRAを投与した胎仔は,それ以降に投与した胎仔と比較して顎・顔面領域の形態異常の発現率が高かった。
    2.妊娠7日目にRA濃度の5μg/g weightから50μg/g weight投与した胎仔は顎・顔面領域,特に下顎骨に催奇形性を発現することが認められた。
    3.下顎骨に発現する異常は下顎枝の形成不全がほとんどであり,極度に細い下顎枝や筋突起を欠く個体はすべて外脳症を伴っていた。
    4.形成不全を示す下顎枝の骨と軟骨の組織形成量は対照群に比べて劣っていた。関節円板と線維性被膜の発育も不十分であった。
    5.下顎体の外形と組織構造の障害は下顎枝に比べて軽微であった。
  • 石田 万喜子, 川口 稔, 宮崎 光治, 本川 渉
    1999 年 37 巻 4 号 p. 824-830
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    光重合型レジンスプリント材にガラス繊維を配合し,その補強効果について検討し,以下の結論を得た。
    1)スプリント材に配合するガラス繊維は,クロスを積層した場合よりも単繊維を一方向に配合した方が総体的に良好な機械的性質を示した。
    2)単繊維を配合した場合は配合量の増加にともない,曲げ強さおよび弾性係数は向上した。
    3)ガラス単繊維を配合して試作したレジンスプリント材は30日間の水中浸漬後でも,機械的性質の低下は認められなかった。
  • 下野 勉, 岡崎 好秀, 中村 由貴子, 東 知宏, 宮城 淳, 柚木 弘子, 田中 浩二, 壼内 智郎, 松村 誠士
    1999 年 37 巻 4 号 p. 831-837
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳酸桿菌の存在を評価する培地としてカリオスタットLBテストを考案し,菌種や培養時間による判定結果への影響について検討した。また4・5歳児362名についての判定結果と齲蝕指数との関係についても調査した。
    1.カリオスタットLBテストに,ミュータンス連鎖球菌を接種したところ37℃,3日間の培養では色変化が起こらなかった。しかし乳酸桿菌では黄緑から黄色に変化した。
    2.4・5歳児の齲蝕罹患者率は63.9%,一人平均d歯数は2.4歯,一人平均df歯数は4.1歯,平均CSIは7.9であった。
    3.カリオスタットLBテストの色変化は,2日目より3日目にかけて急激に起こり,4日目以後は緩徐となった。
    4.カリオスタットLBテストの判定結果と一人平均d歯数,一人平均df歯数,齲蝕重症度歯数(CSI)とは,高度の相関性が認められた(P<0.001)。
    5.カリオスタットLBテストの判定結果を2群に分けたところ,3日間培養においてハイリスク群は各齲蝕指数が有意に高かった(P<0.001)。以上よりカリオスタットLBテストは,臨床応用が可能であることが示唆された。
  • 田中 浩二, 岡崎 好秀, 東 知宏, Tserensodnum Bazarragchaa, 東 千登畝, 福島 康祐, 松村 誠士, 下野 ...
    1999 年 37 巻 4 号 p. 838-843
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼稚園児を対象として,カリオスタット®検査の再現性について調査した。歯垢を2本の綿棒で採取し,別々のカリオスタットアンプルに投入後,1本(対照群)を即時に,もう1本(実験群)を常温を想定した18℃,24時間保存した後に培養を開始した場合の,両群のカリオスタット判定結果の分布およびその値を比較・検討した。
    1.実験群と対照群のカリオスタット判定値の分布は近似しており,両群間に有意な分布の差は認めなかった。
    2.本条件においては,歯垢採取から判定までの経過時間は,カリオスタット判定値に影響を与えなかった。
    3.実験群と対照群のカリオスタット判定値は高度の相関関係を示し(P<0.01),一致率は24時間値で42.3%,48時間値で46.5%,72時間値で52.1%であった。また,判定誤差は±0.5が多く,両群の判定結果は近似していた。以上より,カリオスタット検査は,18℃ で24時間保存後に培養を開始した場合でも臨床応用が可能であることが示唆された。
  • 今野 喜美子, 大須賀 直人, 長谷川 博雅, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    1999 年 37 巻 4 号 p. 844-851
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    低位乳歯の発生頻度は1-10%程度とされ,小児歯科臨床では希に遭遇することがある。著者らは,14歳2か月男児の同一個体内の上下顎6歯にみられた低位乳歯を経験したのでその概要を報告する。
    1.問診により,母親の妊娠中に異常や疾患,外傷などの既往は認められなかった。
    2,咬合状態は臼歯部でAngleII級2類を示し,前歯部では著しい過蓋咬合を呈し,小臼歯部では開咬状態を示した。
    3,デンタルエックス線写真により,下顎の右側第一,第二乳臼歯,左側第二乳臼歯および上顎の右側第二乳臼歯は歯冠の大部分が歯槽骨から萌出しているものの,上顎の左右の第一乳臼歯はさらに低位な状態を示し,いずれも歯根の吸収が認められた。下顎の小臼歯では位置異常が認められた。
    4.側貌頭部エックス線規格写真分析ではANBが2.6° でSkeletal1を示し,下顎がCounter clockwise rotationしており,Low Angleを示した。
    5.病理組織学的所見では,残存歯冠の吸収窩に連続して骨組織が増生し,骨性癒着状態にあった所見が認められた。
  • 永井 華子, 星 仁史, 井出 正道, 大森 郁朗
    1999 年 37 巻 4 号 p. 852-863
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咬唇癖を伴う異常嚥下癖を原因とする上顎前突が認められ,その咬合治療中に鋏状咬合を生じた小児の咬合管理を,可撤装置を用いて8歳8か月から永久歯咬合に至るまで行ったのでその経過についての報告である。
    9歳0か月時に,習癖除去と上顎前突の改善を目的としてバイトプレートを装着し,10歳6か月時に上顎前突は改善した。しかし,上顎歯列弓幅が大きいことを主因とする右側小臼歯部の鋏状咬合が生じたため,エキスパンジョンスクリューを逆用した上顎歯列弓幅縮小装置を考案して,10歳11か月時に装着した。本装置の5か月間の使用により,鋏状咬合は改善した。その後,10か月間保定装置を装着した。これらの可撤装置への患児の受け入れも非常に良好であり,機能的および審美的に満足できる永久歯列が得られた。
  • 佐野 富子, 富沢 美惠子, 朔 敬
    1999 年 37 巻 4 号 p. 864-870
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ニフェジピン(Nifedipine:以下NFとする。)は高血圧症,狭心症の治療薬として広く使用されているカルシウム拮抗剤である。1984年にRamonらが副作用としての歯肉増殖を報告して以来,高齢者では数々の報告を認めるが,検索した限り小児での報告はみられない。今回著者らは,腎性高血圧症の治療のためNFを服用し発症した歯肉増殖症の13歳女児の1例を経験した。
    既往歴:1990年5月(6歳6か月時)巣状糸球体硬化症と診断された。1997年1月(13歳2か月時)より慢性腎不全のため腹膜透析を開始し,血圧コントロールのためNFを含む種々の降圧剤を投与されてきた。
    現病歴:1990年当科を初診,以後定期診査を受けてきた。高血圧のため1996年12月に20mg/日のNFの服用を開始したが,翌年3月の定期診査で歯肉の異常はみられなかった。4月よりNFを100mg/日に増量され7月頃母親が上下顎前歯部歯肉の腫脹に気付き,9月の定期診査時には明らかな歯肉増殖が認められた。
    口腔内所見:上下顎前歯部唇舌側歯肉に正常歯肉色で表面は比較的平滑,一部分葉状を呈す弾性硬の歯肉増殖が認められた。
    処置および経過:NFの減量とともに歯周初期治療を行ったが腫脹は軽減せず1998年2月に下顎,6月に上顎前歯部について歯肉切除術を施行。1999年5月現在再発は認められない。病理組織学的には腫脹部歯肉粘膜の上皮釘脚は薬物反応性歯肉増殖症特有の尖鋭化を示していた。
  • 1999 年 37 巻 4 号 p. 871
    発行日: 1999/09/25
    公開日: 2013/01/18
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