小児歯科学雑誌
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水酸化カルシウムによる生活歯髄切断法の改良に関する研究-
その1 水酸化カルシウムの貼薬期間に関する病理組織学的研究-
木村 奈津子有田 憲司西野 瑞穗
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1999 年 37 巻 4 号 p. 734-746

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抄録
本研究は,水酸化カルシウムCa(OH)2による生活歯髄切断法について,被蓋硬組織の形成に必要な最短の水酸化カルシウム貼薬期間ならびに一定期間後水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去した場合の被蓋硬組織の形成と歯髄の状態を検索することを目的として行った。実験方法は,ラットの臼歯を用い,歯髄切断後,水酸化カルシウムを貼薬,グラスアイオノマーセメントで仮封し,それぞれ1日,7日,14日後,水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去してグラスアイオノマーセメントで再仮封し,実験期間を42日としたもの,および1日,7日,あるいは14日を実験期間としたもの,これらについて病理組織像を観察した。主な結果は次のとおりであった。
1)42日目には,水酸化カルシウムの貼薬期間が1日あるいは7日のものでも被蓋硬組織の形成を認めたものがあったが,14日貼薬の方が被蓋硬組織形成の確実性が高かった。
2)水酸化カルシウムを1日,7日あるいは14日貼薬後,水酸化カルシウムおよび壊死組織を除去した場合でも,42日目には被蓋硬組織の上に再び壊死層が認められた。
以上の結果から,水酸化カルシウムを2週間作用させればその後に被蓋硬組織は確実に形成されるが,2週間の時点ではほとんど被蓋硬組織の形成は生じておらず,水酸化カルシウムと壊死組織を一回で完全に除去するためには,切断部が被蓋硬組織により閉鎖されたのち,除去処置を行わねばならないことが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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