小児歯科学雑誌
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13歳女児にみられたニフェジピンによる歯肉増殖症の1例
佐野 富子富沢 美惠子朔 敬
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1999 年 37 巻 4 号 p. 864-870

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抄録

ニフェジピン(Nifedipine:以下NFとする。)は高血圧症,狭心症の治療薬として広く使用されているカルシウム拮抗剤である。1984年にRamonらが副作用としての歯肉増殖を報告して以来,高齢者では数々の報告を認めるが,検索した限り小児での報告はみられない。今回著者らは,腎性高血圧症の治療のためNFを服用し発症した歯肉増殖症の13歳女児の1例を経験した。
既往歴:1990年5月(6歳6か月時)巣状糸球体硬化症と診断された。1997年1月(13歳2か月時)より慢性腎不全のため腹膜透析を開始し,血圧コントロールのためNFを含む種々の降圧剤を投与されてきた。
現病歴:1990年当科を初診,以後定期診査を受けてきた。高血圧のため1996年12月に20mg/日のNFの服用を開始したが,翌年3月の定期診査で歯肉の異常はみられなかった。4月よりNFを100mg/日に増量され7月頃母親が上下顎前歯部歯肉の腫脹に気付き,9月の定期診査時には明らかな歯肉増殖が認められた。
口腔内所見:上下顎前歯部唇舌側歯肉に正常歯肉色で表面は比較的平滑,一部分葉状を呈す弾性硬の歯肉増殖が認められた。
処置および経過:NFの減量とともに歯周初期治療を行ったが腫脹は軽減せず1998年2月に下顎,6月に上顎前歯部について歯肉切除術を施行。1999年5月現在再発は認められない。病理組織学的には腫脹部歯肉粘膜の上皮釘脚は薬物反応性歯肉増殖症特有の尖鋭化を示していた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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