抄録
近年,アレルギー疾患の増加に伴い,同疾患をもつ患児の歯科受診も増加しつつある。
今回,著者らは重度の食物アレルギーを有する患児の歯科治療を通じて,アレルギー疾患の実態を把握する必要性を感じ,本学小児歯科近隣の幼稚園児(3~6歳児計270名)を対象にアレルギー疾患に関するアンケート調査を行った。調査内容は,園児および2親等までのアレルギー疾患(気管支喘息,蕁麻疹,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,食物アレルギー)の既往ならびにアレルギー疾患の原因についてである。アンケートの集計の結果,なんらかのアレルギー疾患を有するものは,園児全体の約半数に認められ,その頻度は,アトピー性皮膚炎が最も多く,ついで,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,食物アレルギー,アレルギー性結膜炎の順であった。また,複数のアレルギー疾患を持つ園児の割合は,約3人に1人であり,加齢に伴うアレルギー疾患の変化においては,従来報告されているアレルギーマーチにそった変化を示した。アレルギーの原因としては,ハウスダストが最も多く,ついで花粉,食物,ダニの順であった。食物アレルギーの原因としては,卵,牛乳が約半数を占めていた。両親および兄弟にアレルギー既往が認められた園児にアレルギー疾患が高率に認められた。
今回のアンケート調査の結果より,各アレルギー疾患の病態の理解ならびに医科との連係強化,十分な問診を行う必要性が再確認された。