小児歯科学雑誌
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歯髄切断部の硬組織形成に関与する外因性因子についての研究
木村 奈津子有田 憲司西野 瑞穗
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2000 年 38 巻 1 号 p. 138-154

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抄録

本研究の目的は,生活歯髄切断面における硬組織形成の外的誘導因子について明らかにすることである。実験方法は,ラット臼歯の生活歯髄切断面に,水酸化カルシウム,Life®,炭酸カルシウム,水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウム,リン酸カルシウムセメント,10%フッ化カルシウム添加リン酸カルシウムセメント,水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液,強電解アルカリ水および強電解酸性水の各被験試料を作用させ,28日後の硬組織形成を病理組織学的に評価した。次に,硬組織形成と被験試料の殺菌性,カルシウムイオン,アルカリ性,水酸基,フッ素イオンおよび無刺激性の各因子との相関性を分析した結果,以下の知見を得た。
1)水酸化カルシウム,Life®,強電解アルカリ水4回作用,水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液および10%フッ化カルシウム添加リン酸カルシウムセメントに硬組織誘導能が認められた。
2)切断歯髄面の硬組織形成の誘導因子として無菌環境の明らかな関与が認められ,強アルカリ性,カルシウムイオンおよび水酸基についても関与が認められた。
以上の結果から,歯髄切断面の硬組織形成を促す刺激となる因子は単一ではなく,無菌環境,強アルカリ性条件,カルシウムイオンおよび水酸基の存在など,複数の因子が関与していることが示唆された。水酸化カルシウムは,それらの因子を保有しているため,他の薬剤にない優れた硬組織誘導能を示したものと考える。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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