抄録
良い咀嚼習慣は,幼児期に獲得され生涯の摂食パターンを形成すると言われている。しかしながら,幼児の咀嚼習慣の実態を検査する方法についての報告はほとんど見られない。今回,3歳児歯科健診時に咀嚼習慣をスクリーニングする検査表の作成を試みた。また,咀嚼習慣と関連する背景要因について検討し,以下の結果を得た。
1)研究対象は福岡市S区保健所の3歳児健康診査のために来所し,歯科健診を受診した幼児の保護者454名であった。その内分けは,男児239名・女児215名である。
2)咀嚼に関する質問より検査項目を選択するために,因子分析を行い咀嚼習慣検査表を作成した。
3)粗咀嚼習慣群と精咀嚼習慣群を比較した結果,粗咀嚼習慣群に好き嫌いが多く,野菜嫌いや軟食嗜好であった。また,熱がでやすく風邪をひきやすいなど体質的に劣る傾向があり,物事をひどく気にするなど神経質な傾向も認められた。以上のように本研究で作成した検査表は幼児の咀嚼傾向を分類することができ,それによって咀嚼習慣と健康と生活習慣の関連をみいだした。