小児歯科学雑誌
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38 巻, 3 号
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  • -上顎乳前歯部歯肉の歯口清掃前後の血流量の変化について-
    嘉藤 幹夫, 中井 浩司, 萩原 智子, 大道 士郎, 佐伯 克彦, 石井 信行, 浜本 景子, 南出 恭子, 筒井 睦, 酒井 良子, 西 ...
    2000 年 38 巻 3 号 p. 481-487
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯肉に関する臨床的な研究として,今回著者らは,レーザー血流計を用いて小児の歯肉部の血流量を測定し,血流量が歯肉の状態や症状にどのような影響を及ぼすかを探求した。その結果,次の結論を得た。
    1.上顎乳中切歯間の血流量は,乳中切歯と乳側切歯間よりも多かった。
    2.女児の血流量は,男児よりも少なかった。
    3.歯肉の歯口清掃により血流量が少なくなった。
    4.歯口清掃で出血した場合には,血流量はより少なくなった。
    歯肉の血流量の測定は,正常な歯肉の状態を把握したり,歯ブラシでの歯口清掃による歯肉炎の改善を判定するために有効であると考えられる。
  • 柚木 弘子, 宮城 淳, 中村 隆子, 板谷 千穂, 吉田 登志子, 松村 誠士, 下野 勉
    2000 年 38 巻 3 号 p. 488-493
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    岡山県浅口郡寄島町において,乳児健診(3か月,6か月,9か月,12か月)幼児健診(1歳6か月,2歳,2歳6か月,3歳)の全8回をすべて受診した母子98組を対象に口腔内健診,齲蝕活動性試験カリオスタット(CAT),生活習慣アンケートを行った。そして,3歳児の齲蝕の有無と各年齢における生活習慣との関係を調査・分析し,次の結果を得た。
    1)1歳6か月から3歳における小児の生活習慣のうち「間食時間の規則性」,「間食の回数」,「食べ遊び」が3歳時の齲蝕の有無と関係があった。
    2)「3か月児の母親CAT値」で母高CAT群(CAT≧2.0)は母低CAT群(CAT≦1.5)に比べ3歳時の齲蝕罹患状態において有意な差がみられた(p<0.001)。以上より,3か月児の母親のCAT値を用いて,齲蝕に対するスクリーニングを行い,「間食の規則性」「間食の回数」「食べ遊び」の3項目に関しては,乳児期より母親に対して指導を行う必要性が示唆された。
  • -下顎骨の大きさの成長変化と遺伝子マーカーの検出-
    道本 篤, 三浦 保紀, 山崎 優, 岡本 和久, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    2000 年 38 巻 3 号 p. 494-501
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1.近交系マウス10系統AKR/J,CBA/J,DBA/2J,JF-1,P/J,PL/J,RF/J,SJL/J,SM/J,C57BL/6Jの合計168匹を用い8週齢以降の下顎骨成長変化を検討した。その結果,すべての系統において,下顎骨のオトガイ部-下顎頭相当部ならびにオトガイ部-下顎角相当部の各2点間距離の大きさは10週齢以降でほぼ変化がなくなることが認められた。したがって,下顎骨形態形成,特に大きさに関与する遺伝子特定のための交配実験を行う上では10週齢以降に得られた供試マウスの下顎骨は,系統特有な表現型として用いられることが明らかとなった。
    2.大きい顎骨を有するRF/Jと小さい顎骨を有するSM/Jの2系統について,連鎖解析に必要な遺伝子マーカーを求めた。通法に従い脾臓より抽出したDNAを用い,染色体5,11,14番上に2系統間で多型性を示すマイクロサテライトマーカーの検出を行ったところ36個(検出率30.5%)が認められ,連鎖解析が可能であることが示唆された。
  • 中村 均, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    2000 年 38 巻 3 号 p. 502-508
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    第3臼歯に限局して歯の欠如を高頻度に有するEL/seaマウス(以下ELとする)を用い歯の欠如の成因に対する遺伝的要因の関与を検討するため,近交系マウスであるC3H/HeJマウス(以下C3Hとする)および野生型近交系マウスであるMSM/Msfマウス(以下MSMとする)の2系統とELマウスとの交配実験を行い以下の結論を得た。
    1)EL(♀)とC3H(♂)マウスとの交配から得られたFlマウス,EL(♀)とMSM(♂)マウスとの交配から得られたF1"マウスならびにMSM(♀)とELマウス(♂)との交配から得られたFl'マウスのすべての交雑第1代で歯の欠如はみられなかった。
    2)歯の欠如を持たないF1マウス同士の交配から得られた交雑第2代F2マウス85匹のうち6匹(7.1%)に歯の欠如がみられた。
    3)歯の欠如を持たないF1'マウス同士の交配から得られた交雑第2代F2'マウス44匹のうち3匹(6.8%)に歯の欠如がみられた。
    4)歯の欠如を持たないF1"マウス同士の交配から得られた交雑第2代F2"マウス56匹のうち7匹(12.5%)に歯の欠如がみられた。
    5)F1'マウスとELマウスとの戻し交配から得られたN2マウス64匹のうち7匹(10.9%)に歯の欠如がみられた。
    ELマウスの歯の欠如成因に対しては遺伝的要因の関与が大きく,遺伝形式は劣性遺伝であり複数の遺伝子が関与している可能性が示唆された。
  • 甲原 玄秋, 佐藤 研一
    2000 年 38 巻 3 号 p. 509-513
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児における外傷の原因は成人の交通事故やけんかなどによるものとは異なり,転倒や転落によるものが多いと推定される。そこで小児の外傷の原因や発生状況を把握することでそれらを予防する方法や育児の指導が可能となる。このため1988年10月より1999年9月30日までの10年間に千葉県こども病院歯科に受診した小児の外傷に関し統計的に検討した。対象とした患児の年齢は0歳より15歳以下に限定し,自傷行動で口腔領域の外傷を生じたものは除外した80例である。その結果,
    1.小児は1歳児の受傷が多かった。
    2.精神発達遅滞,てんかん,血液疾患など基礎疾患を有する患児が過半数を占めた。
    3.硬組織外傷では歯牙不完全脱臼,歯槽骨骨折が多く,軟組織外傷では口唇,上唇小帯,舌の裂傷が多くみられた。
    4.自宅内で机への転倒による外傷が多かった。
    5.箸,笛,じょうろの尖端などが口蓋部裂傷の原因となったことなどが明らかとなった。以上のことより1-2歳の小児においては独歩ができるようになっても運動機能や姿勢保持の未発達から転倒しやすく事故につながりやすい。そのため,1-2歳の小児のいる家庭では家具の角をスポンジや厚い布などで保護することが望ましい。また細長いものを口に加えて転倒する例があり,重篤な損傷を引き起こす可能性も高い。このため小児期に歯ブラシの習慣をつけさせる際,親は目を離さないようにする必要があることが確認された。
  • 関 みつ子, 寺嶋 利子, 唐鎌 史行, 尾崎 哲則, 吉田 茂
    2000 年 38 巻 3 号 p. 514-520
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    21歳から25歳までの成人125名を対象に,齲蝕の歯面別診査と同時に,Strip mutans(以下SM)および4か所の隣接面においてSite strip(以下SS)の試料採取を行い,口腔の全体評価としての両法の関連性および局所におけるSSの結果について検討を加え,以下の結論を得た。
    1.いずれの部位でも各SSスコアの割合は0>1>2>3の順で,採取部位による差は認められなかった。
    2.部位別のSSとSMのスコア間では同一口腔内でSMのほうが多くの例で高いスコアであり,SSの個人の最高スコア(以下SSの最高値)とSMスコアの間では,比較的高い一致率が得られた。また,両法の関連性は,いずれも約0.5の高い相関係数が認められた。
    3.齲蝕経験との関連性については,DT,DMFT,DSおよびDMFSのいずれもSSの最高値との間のほうがSMスコアよりも相関係数はやや高かった。
    4.局所における齲蝕歯面,修復歯面および健全歯面の各SSスコアの分布は,齲蝕歯面では0が最も少なかったのに対して,修復歯面および健全歯面では0が最も多く,特に齲蝕歯面は他の歯面と異なった傾向を示した。
  • 馬場 宏俊, 松井 大介, 下岡 正八
    2000 年 38 巻 3 号 p. 521-535
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕は全国的に軽症化をたどっており,新潟県においても同様である。日本歯科大学新潟歯学部小児歯科学教室では,昭和48年から新潟県北魚沼郡広神村において小・中学校の児童生徒の口腔内調査を行い,広神村においても齲蝕の軽症化を実感することができる。そこで,昭和58年度から61年度の出生児を対象とした平成10年までの調査結果から,現在の永久歯歯群別齲蝕罹患状況をもとに広神村小児の齲蝕軽症化について調査するとともに,永久歯萌出時期のカリオスタット判定結果と歯群別齲蝕罹患状況との相関について分析検討した。主な結果は以下の通りである。
    1.齲蝕罹患状況では,DMF歯率は上顎切歯群1.5%,上顎小臼歯群3.7%,上顎第一大臼歯群53.0%,上顎第二大臼歯群10.6%,下顎切歯群1.2%,下顎小臼歯群9.2%,下顎第一大臼歯群72.0%,下顎第二大臼歯群20.5%であった。
    2.永久歯萌出後の健全歯率は,萌出後5年で上顎切歯群99.5%,上顎犬歯群100.0%,上顎小臼歯群88.8%,上顎第一大臼歯群52.1%,上顎第二大臼歯群51.0%,下顎切歯群100.0%,下顎犬歯群100.0%,下顎小臼歯群93.2%,下顎第一大臼歯群40.3%,下顎第二大臼歯群30.0%であった。
    3.永久歯萌出開始時のカリオスタット判定結果と萌出後の歯群別齲蝕罹患状況との相関は,萌出後5年までの時期において上顎切歯群,上顎小臼歯群,上顎第一大臼歯群,上顎第二大臼歯群,下顎第一大臼歯群,下顎第二大臼歯群では有意水準5%で認められた。上顎犬歯群,下顎切歯群,下顎犬歯群,下顎小臼歯群では有意差は認められなかった。以上の結果を考察し,齲蝕が軽症化した現在ではカリオスタット判定結果と齲蝕罹患状況との相関には偏りが生じたといえる。今後の齲蝕予測においては,新たなカリオスタットの判定方法あるいは齲蝕活動性について判定する手段を検討する必要性が示唆された。
  • 鈴木 克政, 渋井 尚武, 清水 栄哉, 尾島 光栄
    2000 年 38 巻 3 号 p. 536-541
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ポリッシングペースト3号®とポリッシングペースト1号®を用いて歯面研磨後の滑らかになった歯面が,非研磨の粗造な歯面とどのような違いがあるのか,プラーク付着抑制効果について,ボランティアを募り研磨24時間後のプラーク付着抑制状況を調査し,以下の結論を得た。
    1)術後の研磨側・非研磨側のプラークスコアー間には0.01%の危険率で有意の差を認めた。
    2)第1日目と第2日目の術後のプラークスコアー間にも有意の差を認めた。
    3)被験者の利き腕による差,および,実験側を左右どちらにしてもデータには片寄りがないことが分かった。
    以上のことからポリッシングペースト1号®・3号®を用いて徹底的に歯面研磨を行い,歯面を滑らかにすれば,その後のプラークの付着抑制効果は非研磨の部分と比較して有意に高いことが被検者の同一口腔内においても確認することができた。
  • 白瀬 敏臣, 苅部 洋行, 小方 清和, 河上 智美, 柿沼 さおり, 河野 寿一, 荻原 和彦
    2000 年 38 巻 3 号 p. 542-547
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,小児歯科に顎関節や咀嚼筋の疼痛や機能異常などTMDを主訴とする患児が増加しているといわれているが,日常臨床でどのような診査・診断を行ない治療すべきかは明確にされていないのが現状である。そこで現状を把握する目的で当科を受診したTMDを主訴とする患者30名(男性11名,女性19名)について調査を行い,以下の結果を得た。
    1.患者平均年齢は9歳11か月で,年齢群では9-12歳が43.3%と最も多く,6歳以下も16.7%を占めていた。男女比率では女性に多く認められた。
    2.主訴は顎関節痛が34.4%と最も多く,次いでブラキシズム,開口障害の川頁であった。来院までの期間は平均6.0か月であり,不明なものがその半数を占めていた。
    3.診査事項では問診や視診(口腔内)が多く,顎関節部や筋の触診や,エックス線診査などを行っているものは少なかった。術者による違いがみられ,今後は標準化した診査フォーマットを使用すべきであると思われた。
    4.診断としては顎関節症の疑いが30.0%,顎関節症が26.7%であった。
    5.治療内容は経過観察が40.0%,スプリント療法が26.7%であった。治療経過は症状がほとんど改善したが26.7%,軽減したが13.3%である一方,未来院が43.3%であった。成長発育の途上にある小児では,再発を考慮し長期観察を行っていく必要があると考えられた
  • 北村 新, 坂 英樹, 井出 吉信
    2000 年 38 巻 3 号 p. 548-561
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の歯根吸収状態を把握することは,乳歯の治療を行うに当たり大変重要なことである。しかし乳臼歯は多根であるため吸収状態を把握することは大変困難である。そこで下顎第二乳臼歯に注目し,暦年齢の明らかな抜去歯牙を用いて歯根長径を計測し,歯根吸収の程度と歯根内面の吸収状態との関係について観察を行った。さらに,後継永久歯胚と歯根吸収との関係を明らかにするため,小児乾燥頭蓋骨を用いて軟エックス線写真の観察を行った。
    抜去乳歯の観察では,初期の吸収段階では,遠心根の吸収が近心根の吸収より進行している傾向が認められた。歯根長径の吸収程度と吸収が歯根内面から根管に及ぶものとの関係を観察した結果,近心根では1/4-2/4の吸収で55 .4%,遠心根では2/4-3/4の吸収で53.5%に認められた。また歯根長径の吸収程度と吸収が歯根内面から髄床底に及ぶものとの関係を観察した結果,3/4以上の吸収では80%以上に認められた。
    軟エックス線写真の観察において,後継永久歯胚を含む骨小嚢の位置は,萌出相の推移とともに近遠心的に中央から遠心寄りに変位していた。
    骨小嚢の大きさは,萌出相の推移とともに根分岐部方向に成長し大きくなることが観察された。歯根の吸収は,2根とも歯根中央付近の内面から開始し,萌出相の推移とともに進行していた。
  • 伊東 理夫
    2000 年 38 巻 3 号 p. 562-575
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児のような齲蝕感受性の高い口腔内で歯間離開を行う場合,離開用のゴム自体に抗齲蝕性や抗菌性などの機能性を付与できれば,矯正装置の装着前に積極的な歯質の強化が計れる。そこで,優れたゴム特性とフッ素徐放性を兼ね備えた歯間離開用ゴムの開発を目指して本研究に着手した。そして機械的性質とフッ素徐放性を検討するとともに,この試作エラストマー(以下試作PUゴムと略す)を貼付した歯質の耐酸性向上について,Microradiograph(MR)を用い試作したフッ素徐放性エラストマーの有用性についての評価を試みた。
    試作PUゴム(NaF 1.25wt%およびSnF2≦25wt%)は現在臨床で使用されている離開用ゴムに近い硬さ,引っ張り強さおよび伸び率を有し,また,ゴムとしても比較的良好な性質が確認された。また,エナメル質の耐酸性試験において,試作PUゴムのフッ素イオン徐放性の影響によると思われる耐酸性の向上がゴムの直下および周辺部で認められた。これらの結果から,試作PUゴムはフッ素徐放性歯間離開用ゴムとして,臨床応用が十分期待できるものと思われる。
  • -咀嚼傾向とその背景要因について-
    秋本 光子, 尾崎 正雄, 住吉 彩子, 渡辺 滋子, 宮崎 修一, 豊村 純弘, 石田 万喜子, 本川 渉
    2000 年 38 巻 3 号 p. 576-583
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    良い咀嚼習慣は,幼児期に獲得され生涯の摂食パターンを形成すると言われている。しかしながら,幼児の咀嚼習慣の実態を検査する方法についての報告はほとんど見られない。今回,3歳児歯科健診時に咀嚼習慣をスクリーニングする検査表の作成を試みた。また,咀嚼習慣と関連する背景要因について検討し,以下の結果を得た。
    1)研究対象は福岡市S区保健所の3歳児健康診査のために来所し,歯科健診を受診した幼児の保護者454名であった。その内分けは,男児239名・女児215名である。
    2)咀嚼に関する質問より検査項目を選択するために,因子分析を行い咀嚼習慣検査表を作成した。
    3)粗咀嚼習慣群と精咀嚼習慣群を比較した結果,粗咀嚼習慣群に好き嫌いが多く,野菜嫌いや軟食嗜好であった。また,熱がでやすく風邪をひきやすいなど体質的に劣る傾向があり,物事をひどく気にするなど神経質な傾向も認められた。以上のように本研究で作成した検査表は幼児の咀嚼傾向を分類することができ,それによって咀嚼習慣と健康と生活習慣の関連をみいだした。
  • 高橋 智秀, 高見澤 豊, 大森 郁朗
    2000 年 38 巻 3 号 p. 584-588
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は酸処理後,獲得被膜で覆われた領域を,覆われていない領域や再石灰化領域から識別できるかどうかを走査電子顕微鏡(SEM)観察によって研究することであった。研磨したウシエナメル質ブロックの歯表面を対象として,この同一歯面上に順次酸処理領域,獲得被膜吸着領域,再石灰化領域を作製し,その表面および縦断面をSEMによって観察した。
    一部試料にはクマシーブリリアントブルー(CBB)染色を施した。CBB染色による獲得被膜吸着領域と再石灰化領域の染色強度は近似していた。SEMによる縦断面観察では酸処理領域,獲得被膜吸着領域および再石灰化領域の間に明確な境界線はみられなかったが,表面観察では各々の4つの領域の相違が確認された。
    また,これらの所見から獲得被膜は再石灰化期間中もエナメル質表面に明確に維持されており,被膜に覆われた酸処理エナメル質上で再石灰化が起きていたことが示された。
  • 弘中 祥司, 木下 憲治, 横山 理恵子, 服部 佳子, 阿部 倫子, 小口 春久
    2000 年 38 巻 3 号 p. 589-594
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは平成3年5月より特殊歯科治療部内に摂食指導外来を新設し,摂食指導を行ってきている。新設から平成10年12月までの7年7か月間に摂食指導外来を初診で来院した20歳未満の患者を対象として初診時の実態を把握し,評価するために臨床統計的検討を行った。
    1.初診患者総数は,男94人,女93人,計187人であった。年齢分布は0歳5か月から19歳4か月で,平均は5歳11か月(男6歳1か月,女5歳8か月)であった。
    2.粗大運動発達は,頸定不可34.2%,頸定可22.5%,座位可12.8%,つかまり立ち可10.2%,介助歩行3.2%,独歩17.1%であった。
    3.初診時の呼吸状態では18.7%に呼吸状態不良が認められた。栄養摂取法は,経口摂取72.7%,経鼻チユーブおよび経口15.5%,胃瘻および経口2.2%,経鼻チューブのみ9.6%であった。
    4.摂食機能評価では過敏が13.9%,乳児様嚥下が16.0%に認められた。捕食時の口唇閉鎖機能では口唇でしっかり取り込めない例が24.1%,舌運動では前後13.3%,上下26.2%,左右54.5%,顎運動では単純上下40.1%,移行13.9%,側方臼磨39.6%であった。
    5.粗大運動発達と口唇閉鎖機能との関係では,粗大運動発達が良好であれば口唇閉鎖機能の不良な例が少なくなる傾向が認められた。摂食外来に来院した患者の多くに摂食機能に関して未発達な症例が顕著に認められた。
  • -抜去下顎中切歯の分析とアンケート調査-
    八幡 祥子, 広瀬 弥奈, 丹下 貴司, 高 承志, 五十嵐 清治
    2000 年 38 巻 3 号 p. 595-604
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中国人(北京)の抜去下顎中切歯(唇・舌側面2部位)を対象に,エナメル質表層フッ素濃度を測定した。また,日本人(札幌)と比較し,さらに生活環境因子との関連をアンケート調査し,以下の結論を得た。
    1.中国人(北京)の抜去歯エナメル質表層フッ素濃度は,フッ素の濃度勾配が認められた。
    2.唇側面と舌側面における部位の差は,統計学的有意差が認められなかったが,すべての深さにおいて唇側面より舌側面のフッ素濃度が高かった。
    3.唇側面では,深さ1-20μmにおいて(1,3,5,10μm:p<0.01,20μm:p<0.05),また舌側面では,1μm(p<0.01)において有意差が認められ,札幌よりも北京の方がフッ素濃度が高かった。
    4.お茶等の摂取状況については,'毎日飲む'と答えた人が北京27.88%,札幌91.55%と有意に札幌の方が多かった(p<0.001)。
    5.北京の水道水中フッ素濃度は,札幌より約15倍高いことに加えて,'水道水をよく飲む'と答えた人数も札幌より北京の方が多かった(北京:78.85%,札幌:21.13%,p<0.001)。
    6.北京と札幌における歯磨き習慣とその状況については,'毎日磨く'と答えた人が北京99.04%,札幌97.18%と有意差は認められなかった。
    7.フッ化物歯面塗布の有無およびフッ化物配合歯磨剤の使用状況については,北京と札幌では有意差が認められなかった。
  • 小笠原 靖
    2000 年 38 巻 3 号 p. 605-614
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    破歯細胞は,破骨細胞に類似した多核巨細胞であり,両者の類似点,相違点が報告されているが,細胞の特性は未だに明らかではなく,現在までヒト破歯細胞培養を行ったという報告もみられない。本研究ではヒト破歯細胞培養系確立のため,培地として100%低カルシウム食飼育ウサギ血清(低Ca血清)を用い,ウシ骨片上でヒト抜去乳歯歯根吸収面から採取した細胞を培養した。その後,標本は酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)染色を行い光学顕微鏡にて観察,また骨片を走査型電子顕微鏡で観察し以下の結論を得た。
    1.低Ca血清を用いた培養法の採用により,ヒト乳歯歯根吸収面から採取した破歯細胞の培養に初めて成功した。
    2.培養された細胞は,ヒト乳歯歯根吸収面に存在した破歯細胞の前駆細胞から誘導された成熟破歯細胞である可能性が高く,この培養法がヒト破歯細胞の前駆細胞培養系として有用であると思われた。
    3.低Ca血清を用いた培養細胞は,TRAP陽性であり,さらに培養7日目にはTRAP陽性多核細胞の著明な増加が認められた。
    4.低Ca血清で培養した7日目の細胞は,ウシ骨片上に吸収窩を形成したことから,この培養細胞は,骨吸収能を有する破歯細胞であると思われた。
    5.低Ca血清は,培養細胞の分化・増殖に必要な因子を含むことが示唆された。
    6.カルシトニンはTRAP陽性細胞の活性および骨吸収能を抑制した。
    7.コントロールとした正常ウサギ血清を用いた培養では,TRAP陽性細胞は減少した。
  • 岡崎 好秀, 東 知宏, 田中 浩二, 岡本 安広, 村上 知, 宮城 淳, 井上 哲圭, 福島 康祐, 松村 誠士, 下野 勉
    2000 年 38 巻 3 号 p. 615-621
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中学生344名を対象として,唾液流出量テストと唾液緩衝能テストを行い齲蝕罹患状態との関係について検討を加えた。
    1.対象の齲蝕罹患者率は91.0%,一人平均DF歯数は5.02歯であった。また第2大臼歯の齲蝕罹患者率は58.2%,第2大臼歯の一人平均DF歯数は1.24歯であった。
    2.唾液流出量は,中流出量群が最も多く47.1%(162名),次いで低流出量群の27.6%(95名),高流出量群の25.3%(87名)であった。
    3.唾液緩衝能は,高緩衝能群の58.1%(200名)が最も多く,次いで中緩衝能群の26.5%(91名),低緩衝能群の15.4%(53名)の順であった。
    4.唾液流出量は,齲蝕罹患状態との間に関係は認められなかった。
    5.唾液緩衝能は,齲蝕罹患状態と高度の相関関係が認められた(p<0.01)。
    6.唾液緩衝能テストの結果を群分けし,一人平均DF歯数および第2大臼歯の一人平均DF歯数との関係をみたところ,各群には有意な差が認められた(p<0.001)。以上より唾液緩衝能テストは,齲蝕活動性試験としての有用性が示唆された。
  • 岡崎 好秀, 東 知宏, 田中 浩二, 岡本 安広, 宮城 淳, 井上 哲圭, 松村 誠士, 下野 勉
    2000 年 38 巻 3 号 p. 622-628
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕のない1歳6か月児557名を対象に,1歳6か月時のカリオスタット値(CAT値)と3歳,6歳時の齲蝕罹患状態との関係について調査した。さらに3歳時のカリオスタット値を組み合わせ,6歳時の齲蝕罹患状態との関係についても検討した。
    1.3歳時における齲蝕罹患者率は53.0%,一人平均df歯数は2.75歯であり,6歳時ではそれぞれ85.8%,6.63歯であった。
    2.1歳6か月時のCAT値は,3歳時の齲蝕罹患者率およびdf歯数と高度の相関関係が認められた(p<0.001)。
    3.1歳6か月時のCAT値を低リスク群(1.0以下),中リスク群(1.5),高リスク群(2.0以上)に群分けしたところ,各群の3歳時の齲蝕罹患者率およびdf歯数に有意な差が認められた(p<0.01)。
    4.1歳6か月時のCAT値は,6歳時のdf歯数と高度の相関関係が認められた(p<0.001)。
    5.1歳6か月と3歳時のCAT値を組み合わせ群分けしたところ,1歳6か月に比べ3歳時のCAT値が高くなると,6歳時の齲蝕罹患者率およびdf歯数が高くなった。一方3歳時のCAT値が低くなると,6歳時の齲蝕罹患者率およびdf歯数が低下した。以上より,カリオスタット®検査結果を組み合わせることで,齲蝕増加の予測性が向上した。
  • 楊 秀慶, 大出 祥幸, 金子 万由里, 角田 貴子, 荻原 和彦
    2000 年 38 巻 3 号 p. 629-638
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    再植した根未完成永久歯の歯髄が,再植歯とその歯周組織の予後に及ぼす影響を知るため,ビーグル犬の上顎左右根未完成第2切歯を脱離・再植し,生理的固定をした。左側再植歯は歯髄除去せず実験歯とし,右側再植歯は再植後1週目に歯髄除去,水酸化カルシウム製剤を貼薬し対照歯とした。実験期間中は,アクロマイシンを再植後1,3,5,7週目,カルセインを再植日と安楽死24時間前(再植後15週から25週目)に皮下注射した。以後,切歯を含む上顎骨を切断し,樹脂包埋を経て非脱灰水平断連続研磨切片(100μm)を作製した。すべての切片の再植歯ならびに歯周組織は,マイクロラジオグラム,蛍光,偏光顕微鏡にて観察し以下の結果を得た。第2報病理組織学的評価1.根管処置した再植歯とその歯周組織は,再植後の治癒が良好であった。第2報病理組織学的評価2.歯髄除去をしなかった再植歯とその歯周組織には,広範囲に炎症性吸収が起こり予後不良となっていた。第2報病理組織学的評価3.蛍光標識像より,再植歯の歯髄壊死による影響は再植後3週から5週目に歯周組織におよび,以後炎症性吸収は継続していたことがわかった。以上より,再植した根未完成永久歯の歯髄を除去しなければ,再植歯や歯周組織に広範囲な炎症性変化を起こすことが明らかになった。また,再植歯の予後を良好にするには,動揺度の測定やエックス線写真の観察を注意深く行い,根管処置が必要か否かを再植後5週目までに決定することが必要と示唆された。
  • 棚瀬 精三, 安井 清子, 近藤 亜子, 尾辻 渉, 姚 軍, 近藤 俊, 鈴木 康秀, 西 英光, 山田 賢, 龍崎 健栄, 堀 竜平, ...
    2000 年 38 巻 3 号 p. 639-648
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    3歳1か月にエックス線写真での上顎左側第二乳臼歯および同側第一大臼歯のGhost like appearanceと病理組織像よりRegional Odontodysplasiaと診断した症例を経験し,約13年間にわたって観察し,咬合管理を行った。初診時に上顎左側第二乳臼歯は著明な歯冠崩壊と膿瘍形成を認めたため抜歯を行った。また,その時上顎左側第二小臼歯の歯胚形成は確認されなかった。そのため第一大臼歯が第二小臼歯の位置へ近心移動するよう保隙装置を装着しないで経過観察を行った。上顎左側第二小臼歯は6歳9か月に初めて石灰化開始が認められた。近心位に萌出した第一大臼歯は萌出直後より知覚過敏症状がみられた。暫間的修復を行ったが,症状の軽減がなく歯根形成も不全なため抜歯を行った。患側第二小臼歯は,歯冠部の形態異常はあるが,歯根形成には異常は認められなかった。上顎左側第二大臼歯は正常な発育を示し,11歳11か月に萌出を認めた。しかし,第二大臼歯は近心および口蓋側へ転位し,対合歯となる下顎第一大臼歯と交叉咬合を呈したため咬合誘導処置を行った。上顎左側第二小臼歯の萌出は14歳0か月であり,平均より約3年遅かった。萌出後,知覚過敏症状がみられたが,暫間的修復により軽減したため,全部修復を行い保存した。上顎左側第二小臼歯の遠心側歯槽骨に若干のエックス線透過像がみられるが,自覚他覚症状はなく現在まで良好に経過している。
  • 岩堀 秀基, 山崎 一郎, 岩崎 浩, 大須賀 直人, 鬼澤 良子, 宮沢 裕夫
    2000 年 38 巻 3 号 p. 649-656
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回,乳前歯の動揺と早期脱落を主訴に当科を受診し,臨床検査所見から幼児型低アルカリフォスファターゼ症と診断された1患児に遭遇し,以下の所見を得た。
    1.臨床検査結果よりAlkaline phosphatase (ALP)活性の低下とPhosphoethanolamine (PEA)の尿中排泄が認められた。
    2.全身の発育状態に異常所見は認められなかった。
    3.口腔内所見では非炎症性の歯の動揺および脱落が認められた。
    4.エックス線所見では歯槽骨の吸収がみられたものの,歯根の吸収は認められなかった。
    5.抜去歯のSEM像においてセメント質の一部欠損が認められた。
  • 佐藤 衣吹, 清水 武彦, 及川 栄郎, 及川 二郎, 岡本 和久, 前田 隆秀
    2000 年 38 巻 3 号 p. 657-665
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本症候群はCornelia de Langeによって1933年に発表されて以来,数多くの報告例がある。
    著者らは本症候群を有する4歳8か月の女児に遭遇し,歯科治療および摂食指導を施し,興味ある知見を得たので報告する。
    1)全身的所見としては知能障害,出生時低体重,身体発育障害,小さな頭,睫毛・眉毛の過剰発育,耳介の低位付着,短い四肢,拇指の近位付着,第5指中節骨形成不全,足指の合指,全身的多毛,薄い口唇,両口角の下方屈曲,上を向いた鼻孔,長い人中,猿線,低くうなるような声,ならびに先天性心疾患が認められた。
    2)手根骨の発育遅滞を認め,骨年齢は約2歳と推定された。
    3)歯数の異常は,認められなかった。
    4)歯の形態異常と咬合の異常は,齲蝕による歯冠崩壊が著しかったため確認できなかった。
    5)下顎歯列弓の幅径・長径ともに小さかった。
    6)高口蓋,口蓋裂は認められなかった。
    7)口腔衛生指導により歯肉炎が消退した。
    8)歯科治療とともに行った摂食指導により,咀嚼および嚥下がスムーズとなり,食物摂取量が増加し栄養不良が改善した。
  • 国吉 祐子, 大橋 淳子, 佐藤 昌史, 山下 登, 井上 美津子, 小高 鐵男, 佐々 龍二
    2000 年 38 巻 3 号 p. 666-673
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta)は,象牙質の形成が特異的に障害される遺伝性疾患といわれている。
    今回,著者らは象牙質形成不全症の乳歯をもつ姉弟を治療する機会を得たので,口腔内を臨床的およびエックス線的に観察し,その抜去歯を組織学的および物理化学的に検索した。
    口腔内所見は,姉弟ともに萌出しているすべての乳歯の色調は灰褐色を呈し,著しい咬耗とエナメル質の一部剥離が認められた。
    エックス線所見は,姉弟ともに萌出しているすべての乳歯に歯髄腔の狭窄が観察され,弟の上下顎両側第一乳臼歯,下顎右側第二乳臼歯の歯根周囲にエックス線透過像が観察された。
    組織学的所見は,姉弟ともに抜去乳歯のエナメル象牙境は直線的で,エナメル質に接する外套象牙質が,極度に低い石灰化を示す歯も観察された。その象牙質表層下には,トームス顆粒層様の構造物と混在する短い象牙細管が観察された。しかし,その他大部分の髄周象牙質では,象牙細管の密度は疎で,また組織像でも歯髄腔は著しく狭窄していた。エネルギー分散形エックス線分析装置を用いた測定では,象牙質の石灰化度は対照の健全乳歯と比べ,統計学的に明らかに低い値を示した。さらに,姉弟の象牙質におけるビッカース微小硬度も有意に低い値を示した。これらの組織学的および物理化学的所見は,臨床的およびエックス線的所見を裏付けるものと考えられる。
  • 2000 年 38 巻 3 号 p. 675-722
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 38 巻 3 号 p. 724-725
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
  • 2000 年 38 巻 3 号 p. 726-727
    発行日: 2000/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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