小児歯科学雑誌
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姉弟にみられた乳歯の象牙質形成不全症について
国吉 祐子大橋 淳子佐藤 昌史山下 登井上 美津子小高 鐵男佐々 龍二
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2000 年 38 巻 3 号 p. 666-673

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抄録
象牙質形成不全症(dentinogenesis imperfecta)は,象牙質の形成が特異的に障害される遺伝性疾患といわれている。
今回,著者らは象牙質形成不全症の乳歯をもつ姉弟を治療する機会を得たので,口腔内を臨床的およびエックス線的に観察し,その抜去歯を組織学的および物理化学的に検索した。
口腔内所見は,姉弟ともに萌出しているすべての乳歯の色調は灰褐色を呈し,著しい咬耗とエナメル質の一部剥離が認められた。
エックス線所見は,姉弟ともに萌出しているすべての乳歯に歯髄腔の狭窄が観察され,弟の上下顎両側第一乳臼歯,下顎右側第二乳臼歯の歯根周囲にエックス線透過像が観察された。
組織学的所見は,姉弟ともに抜去乳歯のエナメル象牙境は直線的で,エナメル質に接する外套象牙質が,極度に低い石灰化を示す歯も観察された。その象牙質表層下には,トームス顆粒層様の構造物と混在する短い象牙細管が観察された。しかし,その他大部分の髄周象牙質では,象牙細管の密度は疎で,また組織像でも歯髄腔は著しく狭窄していた。エネルギー分散形エックス線分析装置を用いた測定では,象牙質の石灰化度は対照の健全乳歯と比べ,統計学的に明らかに低い値を示した。さらに,姉弟の象牙質におけるビッカース微小硬度も有意に低い値を示した。これらの組織学的および物理化学的所見は,臨床的およびエックス線的所見を裏付けるものと考えられる。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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