抄録
小児の歯科治療に対する適応状態の変化を観察する目的で,ビデオ映像のデジタル化と目的の場面を簡便に取り出す検索システムを試作した。資料として2歳児の歯科治療記録(受診回数5回,合計約79分)を用いた。映像はMotion-Jpeg方式でデジタル化しコンピュータに取り込み,ファイルの合計サイズは2.11GBとなった。検索システムは独自に設計したデータベースと検索用のアプリケーションからなり,あらかじめ観察に必要な場面を登録すると,簡単なマウス操作で必要な場面を再生することが可能となる。
次に,この検索システムの有効性を試験した。被験者は小児歯科医10名とし,実験方法は同一の場面を被験者5名ずつ検索システムとビデオテープを用いて,それぞれ行動観察を行い,適応状態を評価させた。両群が評価のために要した時問を計測した結果,検索システム利用群では,機器の操作時間が短縮されただけではなく,観察時間,評価に要した時間もビデオテープを用いた群と比較して短縮する傾向が認められた。また,行動評価の結果は両群でほとんど差を認めなかった。以上より,映像のデジタル化が行動評価結果に影響を及ぼすような画質の低下を起こすことはなく,検索システムと組み合わせることで患児の適応状態の観察・評価に有効に機能することが示唆された。