小児歯科学雑誌
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38 巻, 4 号
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  • -1歳児から3歳児における齲蝕活動性試験-
    日本小児歯科学会
    2000 年 38 巻 4 号 p. 749-766
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児に対する齲蝕の状況と予防,進行抑制に関する研究において,1歳から15歳までを対象として,平成11年6月から10月までの5か月間,全国29歯科大学・大学歯学部の小児歯科学講座にカリオスタット®,ミューカウント®,口腔内診査用紙,アンケート用紙を配付し,口腔内診査,齲蝕活動性試験および小児ならびにその保護者に対するアンケート調査を行った。
    これらの調査結果から,今回特に1歳児から3歳児までを対象に統計処理を行い,以下の結論を得た。
    1.CSI とカリオスタット®およびミューカウント®の検査結果に関し,有意に相関性が認められ,両試験法は小児の齲蝕の現状を評価することができると思われる。
    2.不規則な間食や間食の回数が多いこと,スポーツ飲料の摂取あるいは断乳の遅れは有意にカリエスリスクが高くなることが示された。
    3.齲蝕活動性試験は,現状のカリエスリスクを示すのに適していると考えられる。
  • -電子顕微鏡学的検索-
    井上 由紀子, 西田 郁子, 渡辺 徹, 内上堀 征人, Mitsutaka Kimura
    2000 年 38 巻 4 号 p. 767-779
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では成長発育期ラットの脛骨骨幹端部の軟骨内骨化について,亜鉛と1α-OH-D3がbone cellsにどのような影響を及ぼしているかを微細構造学的に観察した。材料は生後6適齢のwistar系雄ラット(40匹)を用い,対照群(標準食+オリーブ油),VD3+群(標準食+1α-OH-D3),Zn-VD3+群(低亜鉛食+1α-OH-D3),Zn+VD3+群(高亜鉛食+1α-OH-D3)について検索した。
    1.走査型電顕所見
    対照群<VD3+群<Zn+VD3+群の順に,軟骨小腔中の石灰化小球に増加傾向が認められた。軟骨下骨形成帯に連続した骨梁部では対照群<VD3+群<Zn+VD3+群の順に,骨基質形成が促進され,幅広い走行の規則的な骨梁が認められた。
    2.透過型電顕所見
    実験群では,対照群<VD3+群<Zn+VD3+群の順に活性型骨芽細胞の増加傾向が認められた。骨細胞も骨芽細胞同様,対照群<VD3+群<Zn+VD3+群の順に増加傾向であり,破骨細胞は対照群<VD3+群<Zn+VD3+群の順に分化,活性が顕著になり,活発に骨構築が行われていた。
  • -18か月間の活動による意識の変化-
    内藤 真理子, 楠崎 晴規, Kazushige Ueda, 有住 隆史, 内上堀 征人, 木村 光孝
    2000 年 38 巻 4 号 p. 780-784
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生涯にわたる健康教育の一環として,18か月間の積極的な口腔保健活動を行った小学校児童708名を対象に,活動の効果について検討した。対象児童に対し,活動開始時から6か月ごとに計4回の質問票調査を実施した。4回目の調査時には,全児童の保護者を対象に児童の口腔保健行動に関する質問票調査もあわせて行った。活動前から活動終了後に至るまでの経時的な口腔内調査結果も比較検討に加え,以下の結果を得た。
    1)1日の歯磨き回数を「3回以上」と回答した児童の割合は,1回目の調査時には全体の43.9%,4回目の調査時には全体の66.7%と,有意な増加が認められた(p<0.001)。
    2)歯磨きをする理由として「歯磨きが習慣になった」と回答した児童の割合は,1回目の調査時には全体の2.4%,4回目の調査時には全体の46.1%と,有意な増加が認められた(p<0.001)。
    3)活動期間中,児童が実際に心がけている口腔保健行動として,口腔清掃に関する回答が多く認められた。
    4)保護者からみた児童の行動の変化として,「歯の治療に行くようになった」と指摘する回答が多く認められた。
    5)各学年において,活動開始時と比較して,活動開始12か月後あるいは活動終了6か月後に1人平均未処置歯数の減少が認められた。
  • 加治木 政彦
    2000 年 38 巻 4 号 p. 785-794
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    機械的刺激による歯根吸収におけるセメント質の機能解析を目的として,ウサギ低カルシウム血清培地によるウサギ破骨細胞培養系を用い,破骨細胞によるラット有細胞セメント質および無細胞セメント質の吸収に対する反応性を検討した。ラットの上顎第一臼歯と第二臼歯間に2日間のゴム挿入により機械的刺激を負荷した有細胞および無細胞セメント質を含むラット臼歯を用いて実験を行い,以下の結果が得られた。
    1.実験は低カルシウム血清を用い,ウサギ破骨細胞をラット歯根上で培養を行った。3日後に培養したウサギ破骨細胞を走査電顕にて観察を行った。その結果ウサギ破骨細胞は機械的刺激を負荷した処置歯および対照として用いた未処置歯の歯頸部における無細胞セメント質を吸収したが根尖部の有細胞セメント質は両群ともに吸収されなかった。
    2.ウサギ破骨細胞はウサギ低カルシウム血清を用いて牛骨片上で培養を行い,破砕した有細胞セメント質を添加した破骨細胞の培養系における影響をTRAP陽性細胞数の変化で検討した。その結果処置歯由来の有細胞セメント質添加の培養系におけるTRAP陽性細胞数は,対照に対して1日目で約70%抑制された。さらに,有細胞セメント質による抑制作用は機械的刺激により増加する傾向を示した。
    以上より機械的刺激を与えた歯根の有細胞セメント質は破歯細胞の出現あるいは機能に抑制的に作用する可能性を有すことが示唆された。
  • 井出 正道, 守安 克也, 高橋 智秀, 高見澤 豊, 星 仁史, 石川 美和子, 今泉 洋子, 大森 郁朗
    2000 年 38 巻 4 号 p. 795-802
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    鶴見大学歯学部附属病院小児歯科診療室に,1987年9月から1996年7月までのおよそ9年間に来院した7,000名の小児の中で,咬合治療を実施した小児の臨床統計的観察を行い,以下の結果を得た。
    1.咬合治療を実施した小児は1,192名(17.0%)であり,性差については女児(668名)が男児(524名)より多かった。
    2.治療対象となった咬合異常は前歯部反対咬合が最も多かった(32.5%)。
    3.咬合治療を実施した小児の中で咬合異常を主訴に来院した小児の割合は52.3%であり,咬合異常種類別では前歯部反対咬合が61.7%と最も多かった。
    4.使用した装置の総数は1,740であり,チンキャップが最も多かった(27.1%)。
    5.装置別使用開始時平均年齢はチンキャップが最も低く(7歳2か月),マルチブラケットが最も高かった(12歳1か月)。
    6.咬合改善に要した期間の平均は,バイトプレートが最も長く(1年10か月),チンキャップとハビットブレーカーで1年以上であったが,その他の装置はすべて1年以内であった。
    7.使用期間の平均は,チンキャップの3年2か月が最も長く,ついでバイトプレートの2年2か月であり,その他の装置はすべて1年から2年の間であった。
  • 吉永 久秋, 西田 郁子, 西岡 孝浩, 鶴田 靖, 塚本 計昌, 内上堀 征人
    2000 年 38 巻 4 号 p. 803-820
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生後6週齢のWistar系雄ラットを用い,カルシウム摂取と運動負荷が骨形成に与える影響を検索するために,対照群(標準食非運動群),標準食1回運動群,標準食2回運動群,カルシウム欠乏食非運動群,カルシウム欠乏食1回運動群,カルシウム欠乏食2回運動群の6群に分け,次のような結果を得た。1.体重カルシウム欠乏食2回運動群と対照群,標準食1回運動群,標準食2回運動群およびカルシウム欠乏食非運動群の間に有意差が認められた。2.病理組織所見標準食1回運動群では,対照群と比較して肥大帯軟骨細胞は減少しているが,柱状間隙にある細胞間基質には石灰化がみられ,石灰化基質は増加し,その石灰化基質を軟骨吸収細胞が侵食している所見も増加傾向にある。軟骨内骨形成も旺盛にみられる。又一次海綿骨部では軟骨基質を核として,骨芽細胞が骨基質を添加することにより骨梁内に封入されている骨細胞は増加傾向にある。標準食2回運動群では,標準食1回運動群と比較して,軟骨層の幅が広く,軟骨細胞の増加がみられた。増殖帯細胞,肥大帯細胞が増加し,緻密に規則的に配列していた。石灰化基質を侵食する所見も多く,軟骨内骨形成も旺盛にみられた。カルシウム欠乏食非運動群は,対照群と比較し,静止帯軟骨細胞の増加,増殖帯軟骨細胞の変形や減少,肥大型軟骨細胞の柱状間隙にある石灰化基質の減少,軟骨吸収細胞の減少,それに伴う石灰化基質の侵食所見の減少と骨梁の狭小化と形成遅延がみられた。カルシウム欠乏食1回運動群では,カルシウム欠乏食非運動群と比較して,静止帯軟骨細胞の減少,増殖帯軟骨細胞および肥大型軟骨細胞の緻密化,柱状間隙にある石灰化基質の侵食所見は増加しているが,骨梁は減少していた。カルシウム欠乏食2回運動群は,カルシウム欠乏食1回運動群と比較すると,軟骨細胞は減少,軟骨吸収細胞の減少および骨梁形成は減少し,骨細胞を封入した骨形成はほとんどみられなかった。以上の結果より,標準食群非運動群に比べ,1回運動群および2回運動群では軟骨吸収細胞は増加し,石灰化基質や軟骨内骨化は旺盛で,運動負荷による骨形成促進効果がみられる。反対に,カルシウム欠乏状態では,1回運動群,2回運動群ともに骨芽細胞への分化の抑制,軟骨吸収細胞の抑制のため軟骨基質の石灰化の減少,軟骨内骨化機構が障害され軟骨内骨化は低下しており,運動効果は認められなかった。
  • 濤岡 暁子, 野坂 久美子
    2000 年 38 巻 4 号 p. 821-831
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,各歯列期における齲蝕感受性の程度が,齲蝕の新生とリコールの間隔の間に,どれ程関連しているかについて調査を行った。対象は,昭和60年から平成6年までの10年間に本学小児歯科外来に新患として来院した患児2,797名のうち,リコールを1年間以上継続して行った1,329名である。まず,患児を齲蝕と修復物の数と部位から,齲蝕感受性の高い群と低い群に分けた。さらに,それぞれの群を初診時年齢から4つに分類し,リコール間隔の一定していた群と不規則な群に再分した。
    その結果,初診時年齢0~3歳未満で齲蝕感受性の高い群は,1か月間隔に比べ2か月間隔のリコールでは,齲蝕発生歯数が著しく増加していた。また,初診時が0~3歳未満,3~6歳未満群の時,齲蝕感受性の高い群,低い群ともに,乳歯列から,混合歯列,永久歯列へと移行するに従い,齲蝕の発生は,減少していった。しかし,6~8歳未満,8~10歳未満群では,混合歯列から,永久歯列へ移行した時,齲蝕発生歯数は多くなっていた。また,リコール間隔が一定と不規則の場合を比較すると,各歯列期に移行した時の齲蝕の発生は,減少した場合は一定の方が齲蝕の減少歯数が大きく,増加した場合は不規則の方がより大きい齲蝕増加歯数であった。以上の結果から,リコールは,低年齢時から規則性をもって始めるほど有効性があり,また,齲蝕の程度や永久歯萌出開始時期を考慮した間隔が必要と考えられた。Key words:齲蝕感受性,齲蝕の発生,リコール間隔
  • -ビデオ映像のデジタル化とデータベースの試作-
    田邊 義浩, 神戸 正人, 田口 洋, 野田 忠
    2000 年 38 巻 4 号 p. 832-837
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯科治療に対する適応状態の変化を観察する目的で,ビデオ映像のデジタル化と目的の場面を簡便に取り出す検索システムを試作した。資料として2歳児の歯科治療記録(受診回数5回,合計約79分)を用いた。映像はMotion-Jpeg方式でデジタル化しコンピュータに取り込み,ファイルの合計サイズは2.11GBとなった。検索システムは独自に設計したデータベースと検索用のアプリケーションからなり,あらかじめ観察に必要な場面を登録すると,簡単なマウス操作で必要な場面を再生することが可能となる。
    次に,この検索システムの有効性を試験した。被験者は小児歯科医10名とし,実験方法は同一の場面を被験者5名ずつ検索システムとビデオテープを用いて,それぞれ行動観察を行い,適応状態を評価させた。両群が評価のために要した時問を計測した結果,検索システム利用群では,機器の操作時間が短縮されただけではなく,観察時間,評価に要した時間もビデオテープを用いた群と比較して短縮する傾向が認められた。また,行動評価の結果は両群でほとんど差を認めなかった。以上より,映像のデジタル化が行動評価結果に影響を及ぼすような画質の低下を起こすことはなく,検索システムと組み合わせることで患児の適応状態の観察・評価に有効に機能することが示唆された。
  • -上顎床型装置への応用-
    常岡 亜矢, 福本 敏, 久保田 一見, 釜崎 陽子, 廣田 陽出代, 細矢 由美子, 後藤 讓治
    2000 年 38 巻 4 号 p. 838-851
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科領域において咬合誘導を行うにあたり,利用頻度の高い床型保隙及び矯正装置の維持装置として,小型で強力な維持力を発揮する磁性アタッチメント(マグフィットTMEX400W)の応用を試みた。混合歯列期歯列模型を用いて,磁性アタッチメントのキーパーの維持歯への最適な装着角度や維持歯種・維持歯数・牽引方向が床型装置の維持力に与える影響について検討を行った。また,実際に臨床症例において,アダムスクラスプおよび磁性アタッチメントを維持装置とする床型保隙及び矯正装置について,その維持力の比較検討を行った。
    1)上顎左右側第一・第二乳臼歯及び第一大臼歯を維持歯とした際磁性アタッチメントのキーパーは歯軸に対して10° に装着した時,床型装置の最大維持力が発揮された。
    2)維持歯数を2歯から4歯と変化させた時,維持歯数の増加に伴ない維持力の増加が認められた。また維持歯種については,第一乳臼歯を維持歯として利用した際に比較的高い維持力が得られる傾向が認められた。
    3)床型装置を牽引する方向と維持力との関係については,牽引方向により近い位置に維持歯を設定することで,高い維持力が得られる傾向が認められた。
    4)臨床症例においてアダムスクラスプと比較して,磁性アタッチメントを維持装置として用いた場合,約1.5倍の維持力が発揮された。またすべての症例に対し,アダムスクラスプと比較して磁性アタッチメントを維持装置として用いた場合に有意に高い維持力が認められた。
  • -第1報デジタル処理化エックス線写真齲蝕深度との相関-
    高森 一乗, 時安 喜彦, 保苅 成志, 奥村 泰彦, 渡部 茂
    2000 年 38 巻 4 号 p. 852-856
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年開発された,レーザーを用いた齲蝕診断装置であるDIAGNOdent®は,永久歯齲蝕の診断に有用であることが報告されているが,乳歯齲蝕診断への有用性に関する報告は認められない。
    そこで,本研究では,齲蝕が認められる抜去乳歯,ならびに永久歯のエックス線写真を,コンピューター上にてデジタル画像処理し,歯表面からの齲蝕深度を計測し,本装置の数値との相関について検索を行った。
    被験歯として,抜去された乳歯17歯,永久歯14歯,計31歯を,本研究に供した。デジタル処理化されたエックス線写真より得られた齲蝕深度と本装置の数値との関係は数値30以下では乳歯では0.06±0.04cm,永久歯では0.08±0.01cmの齲蝕が観察され,最高値99において乳歯では0.18±0.04cm,永久歯では0.23±0.03cmの齲蝕が認められた。
    両者の相関は,乳歯においてSpearmanの順位相関係数rs=0.800,永久歯においてはrs=0.692であり1%水準で有意な相関関係が見られた。乳歯においては永久歯に比べ,やや強い相関関係が認められた。
    以上の結果より,本装置は乳歯おいても,永久歯の齲蝕診断と同様に,有用性があることが示唆された。
  • -第1報頭位測定システムの精度及び被験者による再現性の検討-
    高橋 康男, 由井 公貴, 駱 嘉鴻, 菊池 元宏, 中島 一郎, 赤坂 守人
    2000 年 38 巻 4 号 p. 857-864
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咬合の変化が頭部動揺に対してどのような影響を与えるかを定量化し,評価するために,磁気を利用した三次元頭位測定システムを開発した。
    そして,装置の精度および成人を被験者とした場合の再現性の検討を行ったところ,以下の結論を得た。
    1.本装置は被験者との距離を50cmとした場合でも測定が可能であり,その最大誤差は0 .3mm以下であることが示された。
    2.成人を被験者として,安静位にてその頭部動揺を測定したところ,立位において個人差は認められたが,立位における日間差および日内差,座位における個人差,日間差および日内差は認められないことが示された。
  • -第2報Visual Analog Scaleによる恐怖の評価-
    河合 利方, 鬼頭 秀明, 中野 崇, 徳永 聖子, 東 公彦, 青山 哲也, 福田 理, 土屋 友幸
    2000 年 38 巻 4 号 p. 865-870
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    過去の歯科治療体験と現在歯科受診をすると仮定した場合の恐怖の程度との関連性について,質問紙法およびVisual Analog Scaleを用い歯科学生87名を対象に検討し,以下の結果を得た。
    1.今回の対象者87名全員歯科治療経験があり,その内容は充填処置が一番多く86.2%であった。
    2.過去の歯科受診時に苦痛体験がある者は51.7%,ない者35.6%,覚えていない者12.6%であった。
    3.過去の歯科受診時に抑制治療体験が「ある」と「ある様な気がする」と回答した者は,全体の約9.2%を占めていた。
    4.Visual Analog Scaleを用いた現在持つ歯科恐怖程度では,最小値0mmから最大値88mmの間に分布し,平均は35.8mmであり,女性の平均値は34.7mm,男性の平均値は36.6mmで,男女間に有意な差は認められなかった。
    5.過去の苦痛体験とVAS値の関連において,「体験あり」の者の値は42.1mm,「体験なし」は26.4mmであり,両者間に統計的に有意な差が認められた。
    6.抑制体験とVAS値の関連において,「体験群」の値は53.0mm,「非体験群」は33.9mmで,両者間に統計的に有意な差が認められた。
    以上のことから過去の歯科治療時の苦痛体験および抑制治療体験が現在の歯科恐怖の形成に影響していることは明らかであった。
  • 駿河 由利子, 野坂 久美子
    2000 年 38 巻 4 号 p. 871-880
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回我々は,上顎正中部に3歯の埋伏過剰歯を有する,極めて稀な症例を経験した。初診時9歳8か月の男子,主訴は上顎の正中離開であった。現病歴,既往歴に特記事項はなく,家族歴でも,父母,妹ともに,歯数の異常は見られなかった。口腔内所見はIIIA期であり,上顎左右中切歯間が,5.6mm離開していた。
    また,それにともない,左右側切歯は舌側より萌出し,下顎と交叉咬合を呈していた。エックス線写真所見では,上顎正中部の過剰歯以外に歯数の異常は見られず,過剰歯1歯は,右側中切歯近心舌側部位に順生に存在し,もう1歯は,左側中切歯歯頸側から口蓋方向へ逆生に,さらにもう1歯は,正中部よりやや右側で,唇側方向に根尖を,口蓋方向へ歯冠を向け,水平に存在していた。
    また,上顎左右中切歯歯根には,過剰歯の影響で,根尖1/3の部位に狭窄が認められた。過剰歯は局所麻酔下にて口蓋部より摘出を行った。摘出した過剰歯は,順生の過剰歯が切歯型で根尖は未閉鎖であり,逆生の過剰歯は犬歯型で根尖は閉鎖し,水平埋伏過剰歯と接していた歯根部に吸収が見られた。水平の過剰歯は,犬歯型で歯根は閉鎖しており,根尖1/3が唇側へ弯曲していた。3歯ともに歯冠歯根比が0 .4~0.9で歯冠の方が長かった。
    また,今回の歯列不正については,過剰歯摘出1か月後より,積極的に咬合誘導を行うことで,よりよい咬合育成の結果が得られた。
  • 日高 幸一, 山崎 要一, 梶本 祐一郎
    2000 年 38 巻 4 号 p. 881-887
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎左側中切歯の萌出遅延を主訴に来院した8歳2か月の男児について診査したところ,3歳時に上顎左側乳中切歯の外傷の既往があり,エックス線写真所見では,上顎左側中切歯が埋伏しており,歯冠を極度に口蓋側に向け,歯根は口蓋側方向に45度程度屈曲していた。歯根の形成度は正常に萌出している上顎右側中切歯とほぼ同程度であり,自然萌出の可能性はないものと考えられた。
    この症例に対して,唇側方向に牽引するよう工夫した装置により誘導を行い,埋伏歯が萌出した後,弾線付き口蓋弧線装置にて歯列内に排列した。その直後,患児の転居のため当科来院不可能となったが,転居先の矯正歯科・小児歯科専門医を紹介して,引き続き歯列咬合管理を行っている。現在,牽引歯は上顎右側中切歯とほぼ同様の歯冠歯軸で排列し,歯髄生活反応も認められ,良好な経過を得ることができた。歯冠が口蓋側に極度に転位し,歯根が著しく屈曲した埋伏歯を歯髄死などの不快症状を起こすこともなく牽引誘導できた症例は稀であるところから報告する。
  • 大迫 佳子, 小野 俊朗, 吉田 良成, 今村 基尊, 土屋 友幸
    2000 年 38 巻 4 号 p. 888-896
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯の移転は,発現頻度が0.66%以下と極めてまれな歯の位置異常である。
    移転歯の治療方針を決定するうえで,移転歯をそのままの状態で配列するか,本来の位置で配列するかが大きな問題となる。移転歯とその隣在歯の根尖の位置,歯軸等を考慮し,両者の治療方法の長所,短所を十分にインフォームドコンセントした上で,治療方針を決定することが必要である。
    今回,上顎左側犬歯および第一小臼歯歯胚の位置異常や萌出方向の異常を原因とする移転歯に遭遇した。患歯,患児および治療期間等を考慮した上で,上顎左側犬歯と第一小臼歯を移転した状態で配列した。
    今回は早期から管理を行ったことにより,適切な時期に処置を行うことができた。その過程および治療経過を報告し,以下の様な結論を得た。
    1.Hellmanの咬合発育段階IIIA期の早期に移転歯を発見し,長期に管理したため,最適な治療開始時期を選択できた。
    2.移転歯の自然萌出を促すには,歯根の形成完成前の時期に必要な萌出スペースを歯列上に確保する必要があると考えられた。
    3.移転歯の萌出誘導をする際には,歯根の形成状態,位置,方向や歯牙腫等の阻害因子の有無が重要であり,これらの診断を的確に行い総合的な治療方針を決定する上で,3D-CT画像は極めて有効であった。
    4.Hellmanの咬合発育段階IIIB期の診断において配列順序を決定したことにより,明確な治療計画に基づき治療期間を短縮できた。
  • -小帯切除術への応用-
    加藤 純二, 守矢 佳世子, 橋本 吉明, 高木 裕三
    2000 年 38 巻 4 号 p. 897-905
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来では,平成6年より小帯切除術に炭酸ガスレーザーを応用し,良好な結果を得た。対象とした患児は35名で,上唇小帯切除が13例,舌小帯切除が21例,頬小帯切除が1例であった。また,処置時の年齢は1歳から14歳までであった。これらの症例において,レーザーを使用したことにより,以下の点で有効であった。
    1.出血なしに軟組織の切開・切除が可能であり,術野が明瞭に保たれた。
    2.創面の治癒は良好で,縫合や抗生剤の投与は不要であった。
    3.術後の疼痛はほとんどなく,鎮痛剤の投与は原則的に不要であった。
    また,これらの利点により総じて術式の簡便化がはかられ,処置に要する時間が短縮された。このことは,とくに低年齢児において安全で確実な処置を行ううえで有利と思われた。
    このようなことから炭酸ガスレーザーは,小児の口腔外科処置において,有用性が高いことが示唆された。
  • 住吉 彩子, 小笠原 榮希, 石田 万喜子, 藤村 理衣, 麻生 郁子, 本川 渉
    2000 年 38 巻 4 号 p. 906-914
    発行日: 2000/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列および永久歯列に多数の欠如歯が認められた部分性無歯症の患児に対して,可徹式保隙装置の装着および咬合誘導処置を施し,3歳1か月から混合歯列咬合に至るまで咬合管理を行ったので,その経過について報告する。
    1)初診時において〓の先天欠如と永久歯胚は,〓の先天欠如が認められた。〓の円錐歯化傾向,〓の萌出遅延が認められ,咀嚼困難を主訴として来院。
    2)可撤式保隙装置を装着することによって,咀嚼困難の改善と,審美性の回復が認められ,患児に心理的変化が認められた。
    3)成長に伴い,咬合誘導のため上顎歯列の拡大を行った。
    4)現在は,混合歯列咬合も安定し,保定,経過観察中である。
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