生後6週齢のWistar系雄ラットを用い,カルシウム摂取と運動負荷が骨形成に与える影響を検索するために,対照群(標準食非運動群),標準食1回運動群,標準食2回運動群,カルシウム欠乏食非運動群,カルシウム欠乏食1回運動群,カルシウム欠乏食2回運動群の6群に分け,次のような結果を得た。1.体重カルシウム欠乏食2回運動群と対照群,標準食1回運動群,標準食2回運動群およびカルシウム欠乏食非運動群の間に有意差が認められた。2.病理組織所見標準食1回運動群では,対照群と比較して肥大帯軟骨細胞は減少しているが,柱状間隙にある細胞間基質には石灰化がみられ,石灰化基質は増加し,その石灰化基質を軟骨吸収細胞が侵食している所見も増加傾向にある。軟骨内骨形成も旺盛にみられる。又一次海綿骨部では軟骨基質を核として,骨芽細胞が骨基質を添加することにより骨梁内に封入されている骨細胞は増加傾向にある。標準食2回運動群では,標準食1回運動群と比較して,軟骨層の幅が広く,軟骨細胞の増加がみられた。増殖帯細胞,肥大帯細胞が増加し,緻密に規則的に配列していた。石灰化基質を侵食する所見も多く,軟骨内骨形成も旺盛にみられた。カルシウム欠乏食非運動群は,対照群と比較し,静止帯軟骨細胞の増加,増殖帯軟骨細胞の変形や減少,肥大型軟骨細胞の柱状間隙にある石灰化基質の減少,軟骨吸収細胞の減少,それに伴う石灰化基質の侵食所見の減少と骨梁の狭小化と形成遅延がみられた。カルシウム欠乏食1回運動群では,カルシウム欠乏食非運動群と比較して,静止帯軟骨細胞の減少,増殖帯軟骨細胞および肥大型軟骨細胞の緻密化,柱状間隙にある石灰化基質の侵食所見は増加しているが,骨梁は減少していた。カルシウム欠乏食2回運動群は,カルシウム欠乏食1回運動群と比較すると,軟骨細胞は減少,軟骨吸収細胞の減少および骨梁形成は減少し,骨細胞を封入した骨形成はほとんどみられなかった。以上の結果より,標準食群非運動群に比べ,1回運動群および2回運動群では軟骨吸収細胞は増加し,石灰化基質や軟骨内骨化は旺盛で,運動負荷による骨形成促進効果がみられる。反対に,カルシウム欠乏状態では,1回運動群,2回運動群ともに骨芽細胞への分化の抑制,軟骨吸収細胞の抑制のため軟骨基質の石灰化の減少,軟骨内骨化機構が障害され軟骨内骨化は低下しており,運動効果は認められなかった。
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