小児歯科学雑誌
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幼少期の歯科治療体験が現在の歯科恐怖に及ぼす影響
-第2報Visual Analog Scaleによる恐怖の評価-
河合 利方鬼頭 秀明中野 崇徳永 聖子東 公彦青山 哲也福田 理土屋 友幸
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2000 年 38 巻 4 号 p. 865-870

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抄録

過去の歯科治療体験と現在歯科受診をすると仮定した場合の恐怖の程度との関連性について,質問紙法およびVisual Analog Scaleを用い歯科学生87名を対象に検討し,以下の結果を得た。
1.今回の対象者87名全員歯科治療経験があり,その内容は充填処置が一番多く86.2%であった。
2.過去の歯科受診時に苦痛体験がある者は51.7%,ない者35.6%,覚えていない者12.6%であった。
3.過去の歯科受診時に抑制治療体験が「ある」と「ある様な気がする」と回答した者は,全体の約9.2%を占めていた。
4.Visual Analog Scaleを用いた現在持つ歯科恐怖程度では,最小値0mmから最大値88mmの間に分布し,平均は35.8mmであり,女性の平均値は34.7mm,男性の平均値は36.6mmで,男女間に有意な差は認められなかった。
5.過去の苦痛体験とVAS値の関連において,「体験あり」の者の値は42.1mm,「体験なし」は26.4mmであり,両者間に統計的に有意な差が認められた。
6.抑制体験とVAS値の関連において,「体験群」の値は53.0mm,「非体験群」は33.9mmで,両者間に統計的に有意な差が認められた。
以上のことから過去の歯科治療時の苦痛体験および抑制治療体験が現在の歯科恐怖の形成に影響していることは明らかであった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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