小児歯科学雑誌
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上顎正中部に埋伏過剰歯3歯を有する症例の臨床的検討
駿河 由利子野坂 久美子
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2000 年 38 巻 4 号 p. 871-880

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抄録

今回我々は,上顎正中部に3歯の埋伏過剰歯を有する,極めて稀な症例を経験した。初診時9歳8か月の男子,主訴は上顎の正中離開であった。現病歴,既往歴に特記事項はなく,家族歴でも,父母,妹ともに,歯数の異常は見られなかった。口腔内所見はIIIA期であり,上顎左右中切歯間が,5.6mm離開していた。
また,それにともない,左右側切歯は舌側より萌出し,下顎と交叉咬合を呈していた。エックス線写真所見では,上顎正中部の過剰歯以外に歯数の異常は見られず,過剰歯1歯は,右側中切歯近心舌側部位に順生に存在し,もう1歯は,左側中切歯歯頸側から口蓋方向へ逆生に,さらにもう1歯は,正中部よりやや右側で,唇側方向に根尖を,口蓋方向へ歯冠を向け,水平に存在していた。
また,上顎左右中切歯歯根には,過剰歯の影響で,根尖1/3の部位に狭窄が認められた。過剰歯は局所麻酔下にて口蓋部より摘出を行った。摘出した過剰歯は,順生の過剰歯が切歯型で根尖は未閉鎖であり,逆生の過剰歯は犬歯型で根尖は閉鎖し,水平埋伏過剰歯と接していた歯根部に吸収が見られた。水平の過剰歯は,犬歯型で歯根は閉鎖しており,根尖1/3が唇側へ弯曲していた。3歯ともに歯冠歯根比が0 .4~0.9で歯冠の方が長かった。
また,今回の歯列不正については,過剰歯摘出1か月後より,積極的に咬合誘導を行うことで,よりよい咬合育成の結果が得られた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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