小児歯科学雑誌
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接着性コンポジットレジンに適した乳臼歯窩洞形態に関する研究
野坂 久美子佐藤 輝子駿河 由利子阿部 英一濤岡 暁子
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2000 年 38 巻 5 号 p. 1042-1052

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抄録

乳臼歯の修復材に,接着性コンポジットレジンを応用する際の適正な窩洞形態を考案することを目的に,本研究を行った。試料は,ヒト抜去乳臼歯で,咬合面1級窩洞を基本とした。理想とした窩洞形態は,咬合面に対して頬舌側壁の内角が75度の有底椀型であり,対照にボックス型を用いた。これらの窩洞に,ボンディングシステムではシングルボンド®を,充填材にはAP-X®とZ100®を用いた。験証方法は,サーマルサイクリング後の窩縁からの微少漏洩,ボンディング剤の厚さ,窩洞の各部位におけるレジン硬化後の残留モノマーについて,2種類の窩洞間で比較した。その結果,次の結論を得た。
1.有底椀型では,微少漏洩のないものがボックス型より多く,86.4%であった。また,漏洩は,両窩洞とも窩底部までであった。
2.ボンディング剤の層は,有底椀型で,AP-X®では窩底隅角部と窩底部に,Z100®では象牙質窩壁にも存在した。ボックス型のAP-X®ではさらに,エナメル質壁にもその層を認めた。厚さは,有底椀型で充填材の種類間に有意差はなかったが,ボックス型のZ100®では窩底隅角部での液溜まりの傾向があった。
3.レジン硬化後の残留モノマーは,窩洞形態にかかわらず,中央より側壁で多く,側壁ではボックス型の方が有底椀型よりも多く検出された。
以上から,有底椀型窩洞は,乳臼歯での接着性コンポジットレジンの応用において,適正な窩洞形態と考えた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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