小児歯科学雑誌
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耳下腺唾液の口腔内クリアランスに及ぼす影響
特に上顎臼歯部頬側面における唾液の流れについて
鈴木 昭
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2001 年 39 巻 1 号 p. 190-197

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抄録
本研究は,成人の耳下腺唾液の流れが上顎臼歯部頬側面のクリアランスにどのような影響を及ぼしているかを調べ,今後小児の耳下腺唾液の流れと比較するために,基礎データを得る目的で行った.まず耳下腺排泄導管開口部(以下耳下腺管開口部とする)の印象を採得し,石膏模型上より口腔内の位置を測定した.そして,一定範囲内に位置する被験者を選び,寒天ホルダーを上顎臼歯部頬側面に装着し,寒天中カリウムが唾液中に拡散し,寒天中に残留するカリウム濃度から上顎臼歯部頬側面の唾液クリアランスを求めた.
一方,人工唾液を用いた口腔外実験から,口腔内の臼歯部頬側面における耳下腺唾液流出速度を推定し,唾液クリアランスとの関係を比較検討し,以下の結論を得た.
1.耳下腺管開口部位は,各個人で異なっており,13名中近遠心的には約13mm,垂直的には約6mmの差が認められた.
2.上顎第二小臼歯,第一大臼歯,第二大臼歯のように隣接している部位であっても唾液クリアランスには差がみられ,安静時,刺激時ともに上顎第一大臼歯が最も優れていた.
3.安静時の耳下腺唾液の流れは,耳下腺管開口部より前方に流れる傾向がみられた.また,刺激時では安静時に比べて,後方に流れる割合が増加した.
4.唾液の流出速度についても各部位に差がみられ,安静時,刺激時ともに上顎第一大臼歯が最も速かった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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