小児歯科学雑誌
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根尖性歯周炎を惹起した陥入歯に3DX®を利用し,歯内療法を行った1例
菅野 亜里早清水 邦彦新井 嘉則篠田 宏司前田 隆秀
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キーワード: 陥入歯, 歯内歯, 歯内療法, 3DX®
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2002 年 40 巻 1 号 p. 171-176

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抄録

上顎左側側切歯歯部の自発痛を主訴として来院した10歳10か月の女児において,エックス線写真の所見から上顎左側側切歯の陥入歯を認め,この陥入歯が根尖性歯周炎を惹起したと考えられる1例を経験した。
患児は38.0℃ の発熱と左側鼻翼部を中心に顔面腫脹を認めるとともに上顎左側側切歯部の拍動痛を認めた。血液検査より白血球数が12×103lであった。エックス線写真より上顎左側側切歯に陥入歯様の不透過像を認め,さらに根尖部には歯根膜腔の拡大及び骨のびまん性吸収を認めたために上顎左側側切歯部の根尖性歯周炎と診断した。治療に先立ち,複雑な陥入歯の形態を詳細に把握するために3DX®(モリタ製作所)にて診査を行った結果,陥入歯は上顎左側側切歯の根尖付近まで認められ長さは歯冠頂より19mm(上顎左側側切歯根長は21mm)であった。陥入歯の根尖は近心側に向いており側切歯の根尖とは一致していない。3DX®より得られた情報をもとに陥入歯に歯内療法を行った。その際,陥入歯の根管からは排膿を認めたが,陥入歯周囲に存在する歯髄には生活反応が認められたために,陥入歯のみに根管拡大およびガッタパーチャポイントによる根管充填を行った。治療後の経過観察において臨床症状は緩解しており,さらに電気歯髄診断によって上顎左側側切歯の生活反応が確認された。陥入歯の複雑な根管形態の診査が3DX®により可能になり,治療に有用であった。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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