抄録
小児がスポーツ時に顎顔面領域への損傷を受ける機会は多い。顎顔面領域における外傷のうち約1割がスポーツ時の受傷である。外傷は,上顎前歯部の損傷ならびに下顎骨骨折の頻度が高くなっている。そこで,小児のスポーツ時の下顎歯および下顎骨の損傷に注目し,下顎歯にマウスガードを装着した場合の損傷様式を有限要素法にて解析し検討した。その結果,
1.マウスガード装着により,下顎歯に対する外力の影響が少なくなることが認められた。
2.マウスガード材の厚みが増すほど,下顎歯に対する外力の影響は少なくなるが,逆に,下顎頸部で外力の影響が高くなることが認められた。
3.マウスガード正中部の荷重では,下顎頸部で外力の影響が低くなることが認められた。
4.マウスガード側方部の荷重では,下顎頸部で外力の影響が高くなることが認められた。以上の結果より,マウスガード装着により,歯に対する外傷予防の効果を認めたが,下顎頸部への影響も考慮すべきであることが示唆された。