小児歯科学雑誌
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発達期マウス三叉神経核におけるグルタミン酸トランスポーターGLT1の細胞発現スイッチとバレレット形成
高崎 千尋
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2002 年 40 巻 4 号 p. 675-682

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抄録
三叉神経核は,口腔領域の体性感覚系伝導路の脳幹部中継核であり,ここでグルタミン酸を介するシナプス伝達が行われる。マウスの三叉神経核には,洞毛とよばれる顔面の触覚毛に対応するバレレット構造が存在し,その形成や発達にはグルタミン酸受容体の活性化が不可欠である。一方,グルタミン酸トランスポーターは,シナプス間隙からのグルタミン酸の速やかな除去機能を介して,グルタミン酸シナプス伝達の重要な調節分子として機能している。GLT1はグルタミン酸トランスポーターのサプタイプの一つで,胎生期の成長軸索に一過性に発現後,アストログリアに発現スイッチすることが知られている。しかし,どのような発達段階において,この細胞発現スイッチが起きているかという点については未だ不明である。本研究では,酵素組織化学および免疫組織化学を用いて,GLT1の細胞発現スイッチとバレレット形成との時期的関連性について検討した。その結果,バレレットが三叉神経核に出現する生後第1週に一致して,GLT1の発現が軸索からグリアヘスイッチしていることが判明した。この結果は,体性感覚系のシナプス回路発達と連動してグルタミン酸除去機構がプレシナプス膜からグリア細胞膜へと転換することを示しており,新生児期の口腔機能発達に対する機能的関与を示唆する。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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