抄録
心身変化に富む小児の成長に関連して,身体の機能,特に咀嚼機能や平衡機能の低下が報告されている.しかし咬合と身体バランスの関係についての報告は少ない.
保育園児163人を対象とし,身体測定による成長発達指標,口腔内検診による口腔内状態,デンタルプレスケール®による咬合能力,重心足圧測定による重心動揺,およびアンケート調査を行った後,各項目を比較検討し以下の結論を得た.
1.咬合能力で男児は女児より咬合接触面積,咬合力が有意に高かった.暦齢と咬合能力に有意差を認め,口腔内状態,咬合能力に正の相関を認めた.また身長と咬合能力に正の相関を認めた.
2.重心動揺で女児は男児より動揺総距離,総面積,振幅が有意に少なかった.増齢とともに重心動揺が有意に減少し,足圧面積が有意に増加した.さらに歯牙年齢と重心動揺,足圧面積に関連を認め,成長発達指標は重心動揺に負の相関を認め,足圧面積に正の相関を認めた.
3.齲蝕経験児の齲蝕処置歯数,齲蝕経験歯数と重心動揺は負の相関を認めた.また処置歯数の有無により重心動揺に有意差を認めた.さらに最大咬合圧力と重心動揺に正の相関を認め,平均咬合圧力と足圧面積に正の相関を認めた.
4.口腔内状態,咬合能力,重心動揺と粗大運動,微細運動,平衡感覚,活動性,食習慣の回答項目に有意な関係を認めた.
以上の所見から,成長発達指標,咬合能力,重心動揺が密接に関連することが確認された.