小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
41 巻 , 1 号
選択された号の論文の38件中1~38を表示しています
  • 山尾 雅朗, 白數 慎也, 大東 道治
    2003 年 41 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    線維芽細胞の増殖能に対する神経成長因子の役割を解明する目的で,ニューロトロフィンであるnerve growth factor-β(NGF),brain-derived neurotrophic factor(BDNF),neurotrophin-3(NT-3),さらにはinsulin-like growth factor-I(IGF-I)の影響について検討を行った.血清の有無にかかわらずNGFを48~72時間反応させた場合には,線維芽細胞の増殖能に著明な変化はみられなかった.同様にBDNFおよびNT-3についても血清の有無にかかわらず,細胞の増殖能に明確な変化は観察されなかった.
    一方,IGF-Iを添加したところ,血清非存在下では,反応48時間後では100ng/ml濃度においてのみ細胞増殖能が増加したが,72時間後の時点ではIGF-I濃度依存的な増殖能の増加がみられた.
    一方,血清存在下では反応48時間後の時点では細胞増殖能の増加が認められたが,72時間後ではこの変化は消失していた.さらに,IGF-Iは血清非存在下において,グルタチオン涸渇剤あるいは抗癌剤であるビンクリスチンによる線維芽細胞の細胞死をいずれも少なくとも一部減弱させた.
    以上の結果より,NGF,BDNFおよびNT-3は線維芽細胞の増殖能には変動を与えないが,IGF-Iは増殖能を亢進させる可能性が示唆された.
  • 千田 皇子, 山田 恵子, 加納 能理子, 阿部 真紀, 真柳 秀昭
    2003 年 41 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔保健に関する生活習慣ならびに意識の実態を知ることを目的として,仙台市立中学校8校の生徒3744名に対してアンケート調査を行い,次の結果を得た.
    1.72.6%の生徒が朝晩2回の歯磨きを行っていた.
    2,32.3%の生徒が「おやつを毎日食べる」と答え,19%の生徒が「甘味飲料を毎日飲む」と答えた.
    3.大多数の生徒が歯科受診の経験を持ち,その目的は90%が齲蝕治療であった.歯科に対する印象では,「できれば行きたくない」と答えた者が35.8%であり,理由として「治療が痛い」が最も多かった.歯科医に望むことでは,「痛くしないで欲しい」が多かった.
    4.「歯磨き指導を受けたことがある」,「口腔保健指導を受けたことがある」と答えた者はいずれも約30%であった.
    5.フッ素の齲蝕予防効果について認識があった生徒は全体の約30%で,実際にフッ化物塗布やフッ化物洗口を受けた経験があると答えた者はそれぞれ7.6%,4.3%と少なかった.
    6.口の中を健康に保つために大切なことは何かという質問に対しては80%が「歯磨き」と答え,次いで「甘いものを食べない」であった.
    7.口の中で気がかりなことは,「虫歯」,「歯並び」,「鼻詰まり」の順で多かった.
    8.8020運動について正しく認識している生徒は37.3%であった.
  • 佐藤 麻美, 畑 弘子, 船山 ひろみ, 高橋 温, 真柳 秀昭
    2003 年 41 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1996年4月から1999年3月までの3年間に東北大学歯学部附属病院に来院し,小児歯科の咬合管理ルートにのった患者503名を対象に,主訴,全身疾患,口腔内所見,初診から治療終了までの齲蝕処置内容,予防処置について調査を行った.
    1. 1996年から1999年の3年間の初診患者数は,1980年代に比べわずかに減少したが1,2歳児の来院が増加した.
    2. 主訴の内訳は,齲蝕治療が43%と最も多く,次いで口腔管理31%であった.
    3. 全身疾患を有する患者は,全体の45%で,過去に比べてその割合は増加している.唇顎口蓋裂の患者が最も多く,全体の16%であった.
    4. 初診時の年齢別1人平均df歯数は,過去に比べて,全年齢層で減少した.
    5. 乳歯・永久歯ともレジン修復が歯冠修復処置の主体であった.また,永久歯では,予防填塞処置歯数が歯冠修復処置歯数を上まわっていた.
    6. フッ化物溶液塗布の実施率は約3割,家庭でのフッ化物応用の割合は約2割で,どちらも1,2歳児で多く行われていた.
    7. 当科の診療で,有病児を主体とした低年齢からの齲蝕予防管理の占める割合が増大してきている.
  • 大須賀 直人, 竹内 瑞穂, 鬼澤 良子, 勝木 完司, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫, 伊藤 充雄
    2003 年 41 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    フッ素徐放性を有する各種填塞・修復材のpHおよびフッ素徐放量の経時的変化を検討するために,pHメーターおよびイオンメーター使用し,各条件下で検討した結果以下の結論を得た.
    1.試験片を生理食塩水50ml中に浸漬させたものは,填塞材の中でpH値が著しく低下するものがみられ,フッ素も継続して徐放される傾向にあった.
    2.照射5日後に試験片をフッ素イオン濃度1000 ppmの溶液に浸漬させたものは試験片を生理食塩水に浸漬したものに比べフッ素徐放量が増加する傾向にあった.
    3.試験片を照射直後から1日毎に4℃ と60℃ の温度変化を与えたものは,生理食塩水50ml中に浸漬させたものに比べpHの値が低く,フッ素徐放量も増加する傾向にあった.
    4.生理食塩水50ml中に浸漬させ,照射5日後に試験片にサンドブラスト処理を行ったものは,フッ素徐放量が著しく上昇する傾向にあった.
    以上の結果より,フッ素徐放性を有する材料は,温度負荷や表面構造の変化により,フッ素の取り込みと放出を繰り返していることが示唆された.また,口腔内において温度やpH変化がみられる条件下でも同様な影響を受けることが推測できた.
  • 遠藤 敏哉, 梁瀬 由紀, 島田 路征, 尾添 理恵子, 小島 功嗣, 下岡 正八
    2003 年 41 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    上顎切歯の萌出遅延が顎顔面形態,特に前下顔面高や上顎切歯部の形態に及ぼす影響について検討した.症例はHellman歯齢IIIBの萌出遅延上顎切歯を有する女児15名(萌出遅延歯群,10歳4か月±1歳2か月)とI級不正咬合・叢生の女児15名(叢生群,10歳2か月±1歳2か月)である.資料は萌出遅延歯群と叢生群の側面頭部エックス線規格写真を用いた.そして,次の結果を得た.
    1.萌出遅延歯群は叢生群に比べて, L1 to Mp, Overjet, Overbiteが有意に小さかった.
    2.萌出遅延歯群は叢生群に比べて, ANS-U1e/ANS-Me と ANS-U1e/Me-L1eが有意に小さかった.
    3.萌出遅延歯群は叢生群に比べて, A-PrとANS-Prが有意に小さかった.
    以上の結果から,萌出遅延上顎切歯を有する不正咬合では下顎前歯の舌側傾斜,上顎切歯部特に歯槽骨高径の短小,オーバージェットとオーバーバイトの減少が認められた.萌出遅延歯を有する不正咬合の診断,治療計画の確立,矯正治療では萌出遅延歯の顎顔面形態に対する影響を考慮する必要がある.
  • 大竹 千鶴, 高木 正道, 田口 洋, 野田 忠
    2003 年 41 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    時代の移り変わりの中で,少しずつ変化している日本人の食事について,時代の変遷により,食生態が変化し,噛む回数や時間が変わることを,どこまで正確に検証できるのか,時代を反映する食事として学校給食をとりあげ,その復元食による咀嚼実験を試行し,咀嚼との関連について検討した.
    今回の実験では,現代の給食の方が昭和30年代および50年代より咀嚼回数も咀嚼時間も減少するという結果が出たが,これは時代の変化というより,選択した献立の差と考えられた.
    時代の変遷による食生態の変化を,代表的献立で実験する場合,日常の食をいくつかの献立で代表させるのは難しく,測定した咀嚼回数や咀嚼時間の比較で時代の変遷を論じることはさらに難しいと思われた.
    献立,素材,調理方法により,咀嚼回数も咀嚼時間も大きく変わるものと考えられ,学校給食だけでなく,普段の食生活においても,噛みこたえのある食品を使ったり,素材を大きく切って調理したりなど,さまざまな工夫をすることによって,食事がよりよいものとなると思われた.
  • 内山 盛嗣
    2003 年 41 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳臼歯の既製金属冠の審美性に劣るという欠点を解決するために,チタン既製金属冠表面をナイロン11でコーティングすることにより歯冠色に近い乳歯用金属冠を試作した.
    本研究では,審美性を考慮した乳歯用既製金属冠を臨床応用すべく,引張剪断,摩擦摩耗,表面粗さ,吸水,着色および曲げ試験を行い,臨床応用が可能であるか否かについて検討を行い以下の結論を得た.
    1.引張剪断強さはほぼ17MPaを示し,サーマルサイクル5000回後でもほぼ10MPaを示し,臨床応用に十分な強さであった.また,曲げ試験において剥離などは認められず,チタンとナイロンの接着に関してブラスト表面処理の有用性が示唆された.
    2.着色は即時重合レジンとほぼ同程度で,さらにブラッシングで軽減することが判明し,臨床使用時にも審美性を継続できることが示唆された.
    3.冠縁の切除,膨隆付与,研磨などの操作性は従来の乳歯用既製金属冠と全く同様であり,白色を呈した審美的な乳歯用金属冠を開発することができた.
    4.現在市販されている乳歯用既製金属冠の利点を損なわず,さらに審美性に優れた,ナイロンコーティングを施した乳臼歯用既製金属冠の開発と臨床応用に対する有用性が明確となった.
  • 鶴山 賢太郎, 西村 一美, 三好 克実, 前田 隆秀
    2003 年 41 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は3種の異なる物性のグミゼリーを用いて小児の咀嚼リズムの安定性を調べることである.顎関節疾患を有しない平均年齢4歳8か月(II A期:乳歯列完成期)の5名の健康な小児を被験者とした.3次元6自由度顎運動計測装置Gnatho Hexagraph system(IP-1500A:小野測器社製)を用いて,下顎乳中切歯切縁近心隅角部の軌跡を計測した.また比較のために,平均年齢22歳4か月(永久歯列完成期)の5名の成人がボランティアとして参加した.3種類のグミゼリーはそれぞれゼラチン含有量を3% ,5%,7%に調節し,その物性に変化を与えた.グミゼリーはいずれも重量3.0g,一辺13mmの立方体になるように調節された.本研究においては5サイクルから10サイクルまでの開口相,閉口相,咬合相,cycle timeを咀嚼リズムのパラメータとして評価した.
    その結果,(1)グミゼリーを被験食品とした自由咀嚼において,II A期小児の咀嚼リズムは成人に比べ不安定であり,特に閉口相時間において顕著に認められた.
    (2)II A期小児の被験食品として用いるグミゼリーは成人に適するものよりもゼラチン含有量の低いものが適しており,3%のグミゼリーが最も安定性が良いことが示唆された.
  • 遠藤 敏哉, 長谷川 雅子, 長谷川 優, 狩野 厚史, 下岡 正八
    2003 年 41 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    永久歯列期の骨格性前歯部開咬における骨格性偏位および犬歯,小臼歯,大臼歯の歯槽性偏位を45°斜位頭部エックス線規格写真により検討し,その形態的特徴の究明と混合歯列期における開咬の治療目標の確立を目的として,本研究を行った.
    資料はHellman歯齢IVAの骨格性前歯部開咬女子20例(18歳1か月±5歳3か月)の左右側45°斜位頭部エックス線規格写真40枚を用いた.
    骨格性偏位は角度計測3項目,歯槽性偏位は角度計測27項目と距離計測20項目で計測し,亀谷の正常咬合群と比較して評価した.
    骨格性前歯部開咬では下顎角の開大,下顎下縁平面の急傾斜,口蓋平面の前上方偏位,上顎第一大臼歯と側方歯群の近心傾斜と高位,下顎側方歯群の近心傾斜と低位,上下第二大臼歯の遠心傾斜が示唆された.この形態的偏位の抑制が混合歯列期における開咬の治療目標である.
  • 山田 賢, 堀 竜平, 小林 利広, 中西 正尚, 田村 康夫
    2003 年 41 巻 1 号 p. 71-86
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    嚥下時喉頭運動と口腔周囲筋筋活動との協調を検討する目的で,正常嚥下者6名(平均年齢29歳3か月)を対象に,食品の取り込みから,食塊形成,移送および咽頭通過までをVideofluorography,筋電図および喉頭運動波形を用いて記録した.同時に食品性状による嚥下パターンの違いを検討した.
    さらに正常嚥下を行う小児5名(平均年齢6歳10か月),成人5名(平均年齢28歳8か月)を対象に,食品性状の異なる3食品を用い,咀嚼・嚥下時の口腔周囲筋の時間的協調について検討し,以下の結論を得た.
    1.喉頭運動波形と各筋の時間的協調は,喉頭運動波形の急激な上昇に先行した側頭筋,咬筋の活動が認められ,顎二腹筋前腹,顎舌骨筋の活動開始は喉頭挙上とほぼ一致していた.
    2.固形食品は,食塊が中咽頭に送り込まれた後に嚥下が開始されるtwo-step motionと,舌背と口蓋によって食塊が保持された後に嚥下が開始されるone-step motionがみられた.
    3.喉頭挙上時の各筋筋活動の時間的協調は,食品量および食品性状間で差は認められなかった.小児と成人間では成人の方が早く筋活動を開始する傾向がみられた.
    これらのことから嚥下時喉頭運動と口腔周囲筋筋活動との協調は,食品量および食品性状による差は認められないが,小児と成人間において違いがあることが示唆された.
  • 氏家 真由子, 黒須 美佳, 辻野 啓一郎, 牛田 永子, 門屋 真理, 藥師寺 仁
    2003 年 41 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    過剰歯は,小児歯科臨床において遭遇する機会が非常に高く,過剰歯の存在が歯列・咬合へ影響を及ぼしていると考えられる症例が少なくない.そこで著者らは,過剰歯の実態を詳細に把握し,処置方針の決定に役立てることを目的に,来院の経緯(動機),性別,年齢,過剰歯の歯数,部位,萌出・埋伏の別および埋伏状態,エックス線画像検査法ならびに対応法について調査および検討を行った.その結果,萌出中の過剰歯はほぼ萌出の完了した時点で抜歯されていたのに対し,埋伏過剰歯では,歯列に障害を及ぼすと診断されたが,抜歯時の外科的侵襲が隣在永久歯歯根の形成に影響を及ぼさないと思われるものは抜歯を行っていた.しかし,歯列に障害を及ぼさないと診断された過剰歯で,しかも抜歯時に隣在永久歯の歯根形成に影響を及ぼす危険性が高いと考えられるものは,経過観察を行い抜歯時期を検討する傾向にあった.
  • 荻原 栄和, 相山 誉夫
    2003 年 41 巻 1 号 p. 94-104
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科,歯科矯正臨床において下顎歯列弓側方拡大は一般的な治療方法になっていないが,床矯正装置を用いることを著者らは実践している.本研究は下顎歯列弓側方拡大に対する治療法として,床矯正装置の有効性に関する科学的な根拠を模索するために,床による歯の移動および歯周組織に及ぼす影響について検討した.ラット下顎第一臼歯部に床装置(Ap群)とワイヤースプリング装置(Wi群)を用い,約10gの力を加え,1,3,5,7,14日間頬側移動(拡大)させた.歯の移動距離は左右第一臼歯中心小窩間の距離を計測し,実験期間における有意差の有無を検討した.さらに,頬側歯周組織の変化を,各種染色法による光顕観察,時刻描記法による共焦点レーザー顕微鏡の観察により検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.歯の移動量は,Ap群とWi群の間に有意差は認められず,歯の移動パターンは,Ap群では5相性を示していたが,Wi群では3相性を示していた.歯の移動にともなう圧迫側の変性組織は7日目まで両者にみられたが,Ap群では14日目において消失していた.頬側歯槽骨の改造現象は,Ap群では歯槽骨骨膜面の歯槽頂から基底側に及んでいたが,Wi群は歯槽頂のみに骨添加がみられた.以上から,小児期における咬合誘導の一処置として下顎歯列弓側方拡大が行える基礎的資料の提供と共に理論的根拠の一端が明らかとなった.
  • 山本 健也, 佐々木 恵, 小島 寛, 三浦 真理, 松塚 育子, 小口 春久
    2003 年 41 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    北海道大学歯学部附属病院咬合系歯科小児専門外来で乳歯列期から口腔管理をしている小児を対象に,第一大臼歯に対する光硬化型グラスアイオノマーセメント(Fuji III LC®)を使用した小窩裂溝填塞処置の予後調査を行った.齲蝕抑制率は填塞後1年で99.0%,3年で95.2%と高い齲蝕予防効果を示した.しかしながら,咬合面以外の歯面に齲蝕の発症が多くみられたことから,未萌出裂溝部への追加填塞の必要性および近心面に対する予防処置の併用が幼若第一大臼歯の齲蝕予防に重要であることが示唆された.
  • 神戸 正人, 佐野 富子, 田邊 義浩
    2003 年 41 巻 1 号 p. 111-117
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    言語獲得期の小児の泣き声に含まれる感情的要素を検索することを目的として,歯科治療時の泣き声をサウンドスペクトログラムを用いて分析した.波形的特徴と泣き声を聞いた被験者の聴覚印象評価とを対比し,その関連性について検討した.
    2歳児と3歳児の泣き声を60秒間観察したところ,年齢によりサウンドスペクトログラム上にノイズの分布状態の相違を認めた.そこで,泣き声波形をこのノイズの差によりN型,C型の二つに分類した.また,この泣き声の強さを6名の歯学部学生に評価させ,N型・C型それぞれに,サウンドスペクトログラム上類似した強い泣き声と弱い泣き声を選び出した.
    次に13名の小児歯科医師を対象として,これらの泣き声の聴覚印象の評価を行った.その結果,N型はC型と比較して,怒りや不快を強く感じる「激しい泣き声」であることが示唆された.さらに,N型・C型それぞれについて振幅,周波数を変化させた聞き取り実験では,N型が泣き声を激しいと感じさせる要因は,音の大きさや高さとは異なる成分であることが示された.
  • 梅津 糸由子, 内川 喜盛, 荻原 和彦
    2003 年 41 巻 1 号 p. 118-132
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    リン酸酸性フッ化ナトリウム(以下APF)溶液が光硬化型修復材の色調に及ぼす影響を知るため,溶液浸漬前後の光硬化型修復材の色調を測定し,さらに溶液浸漬後の試料表面を走査電子顕微鏡にて観察した.
    光硬化型修復材は,Fuji II LC®,Vitremer®,F2000®,AP-X®,Z 100®の5種類を用いた.APF溶液はフローデン A®および自作の溶液を用い,比較対照は精製水とした.1回の浸漬時間は4分間とし,4回の浸漬を行い,浸漬前後の色調を分光式色差計を用いて測定し,色差(ΔE*ab)を算出した.統計処理はt-testならびにANOVAを用い,有意水準は5%とした.
    その結果,APF溶液への4分間の浸漬前後の色差(ΔE*ab)は,精製水群と比較してZ 100®以外の光硬化型修復材において有意に高値を示した(P<0.05).また,浸漬回数の増加にしたがい色差は上昇し,浸漬4回でII LC®が最も大きく4.07,AP-X®は3.23,VitremerRは2.81,Z 100®は2.32,F 2000®は最も小さく0 .94であり,材料間で差が認められた.走査電子顕微鏡による観察でAPF溶液浸漬後の全試料表面に浸食が観察され,色差との関連性が示唆された.
    以上より,APF溶液の塗布は光硬化型修復材表面形状を変化させ,それにより修復材料の色調に影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 加我 正行, 吉田 英史, 枝広 あや子, 大岡 貴史, 櫻井 誠人, 小林 雅博, 大川 昭治, 今 政幸, 野田 守, 小口 春久
    2003 年 41 巻 1 号 p. 133-139
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    グラスアイオノマーセメントは,齲蝕予防に不可欠なフッ素の徐放と取り込みを繰り返す特性を有し,歯髄低刺激性,歯質接着性,歯冠色調和性がある.著者らはグラスアイオノマーセメントにガラス短繊維を複合させて物性を向上させる研究を行ってきた.本研究では,ガラス短繊維をグラスアイオノマーセメントに添加した場合の生体親和性とフッ素徐放効果を検索した.細胞毒性試験とフッ素徐放量の測定を行い,以下の結論を得た.
    1.細胞親和性は,ミトコンドリア活性を測定した結果,Fuji II LC®(ジーシー)とSchotchbond Multipurpose®(3M)が最も良く,次に,HY-BOND GLASIONOMER CX®(松風)と20%ガラス繊維を添加したグラスアイオノマーセメントであった.
    2.試料を細胞培養液中に浸漬した場合のpHは中性領域の値を示した.ガラス短繊維のみとポリアクリル酸の液を練和した試料のみが低いpHを示した.
    3.フッ素の測定では,ガラス繊維を添加したグラスアイオノマーセメントからもフッ素が溶出した.ガラス繊維の添加はフッ素の徐放を抑制していなかった.
    ガラス短繊維を添加したグラスアイオノマーセメントは,フッ素徐放効果が損なわれず,良好な細胞親和性を示し,齲蝕予防効果と機械的強度を有した生体に安全な歯科用セメントとして有望なことが示唆された.
  • 小久江 由佳子, 猪狩 和子, 小松 偉二, 真柳 秀昭
    2003 年 41 巻 1 号 p. 140-147
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,口呼吸をする小児が増加しているといわれているが,実際に口呼吸をしている小児の割合や口呼吸が引き起こす問題点に関しては未だ明らかにされていないことが多い.そこで,今回小児における口呼吸の実態を調査する目的で仙台市内の保育園11か所における年長児クラス(4~6歳)275名の保護者を対象にアンケート調査を行い,206名から回答を得た(回収率74.9%).アンケートにより,口呼吸吸群群,鼻呼,中間群と群分けし比較したところ,以下の結果を得た.
    1.保育園児の22.8%が口呼吸をしている可能性が高い.
    2.口呼吸群は鼻呼吸群と比較して以下のような傾向があった.
    1)鼻咽頭疾患の既往率が高い.
    2)口唇,口に乾燥がみられる.
    3)唇が弛緩し,上唇がめくれている.
    4)風邪をひきやすい.
    5)よく聞き返す.
    6)前歯部の咬合は正常の割合が低い.
    7)咀嚼嚥下が上手にできない.
    8)猫背である.
    3.口呼吸は離乳時期,おしゃぶりの使用の既往との間に関連は認められなかった.
    以上より口呼吸は様々な問題点を引き起こしていることが示唆され,外来患者における呼吸様式を把握することの重要性ならびに耳鼻咽喉科との連携強化の必要性を再確認した.
  • 樋口 將
    2003 年 41 巻 1 号 p. 148-164
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    心身変化に富む小児の成長に関連して,身体の機能,特に咀嚼機能や平衡機能の低下が報告されている.しかし咬合と身体バランスの関係についての報告は少ない.
    保育園児163人を対象とし,身体測定による成長発達指標,口腔内検診による口腔内状態,デンタルプレスケール®による咬合能力,重心足圧測定による重心動揺,およびアンケート調査を行った後,各項目を比較検討し以下の結論を得た.
    1.咬合能力で男児は女児より咬合接触面積,咬合力が有意に高かった.暦齢と咬合能力に有意差を認め,口腔内状態,咬合能力に正の相関を認めた.また身長と咬合能力に正の相関を認めた.
    2.重心動揺で女児は男児より動揺総距離,総面積,振幅が有意に少なかった.増齢とともに重心動揺が有意に減少し,足圧面積が有意に増加した.さらに歯牙年齢と重心動揺,足圧面積に関連を認め,成長発達指標は重心動揺に負の相関を認め,足圧面積に正の相関を認めた.
    3.齲蝕経験児の齲蝕処置歯数,齲蝕経験歯数と重心動揺は負の相関を認めた.また処置歯数の有無により重心動揺に有意差を認めた.さらに最大咬合圧力と重心動揺に正の相関を認め,平均咬合圧力と足圧面積に正の相関を認めた.
    4.口腔内状態,咬合能力,重心動揺と粗大運動,微細運動,平衡感覚,活動性,食習慣の回答項目に有意な関係を認めた.
    以上の所見から,成長発達指標,咬合能力,重心動揺が密接に関連することが確認された.
  • 稲掛 望, 吉田 良成, 鬼頭 佳子, 牛村 節世, 磯貝 美佳, 渡辺 直彦, 小野 俊朗, 土屋 友幸
    2003 年 41 巻 1 号 p. 165-171
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    側方歯群交叉咬合は, 自然治癒の可能性が低く, 放置すると機能性から骨格性へ移行する可能性が高いといわれている.しかし側方歯群交叉咬合は, 保護者により発見されることはまれで, 混合歯列・永久歯列期まで見過ごされる場合が多い.そのため日常臨床では, 乳歯列期以外のさまざまな時期における側方歯群交叉咬合の治療が余儀なくされている.そこで今回著者らは, 治療開始時期の異なる(Hellmanの歯齢II A~III B)側方歯群交叉咬合を呈する小児の正面頭部エックス線規格写真を用いて, 治療前後および一部予後観察ができた症例について, 顎顔面形態の変化を観察したので報告する.
    1.II A期・II C期から治療を開始した症例は, 治療後および予後観察中に顎顔面の左右非対称が改善した.しかし,予後観察中, 再び左右非対称が現れた計測項目もあった.
    2.III A期・III B期から治療を開始した症例は, 治療前から顎顔面の左右非対称が大きく, 治療後も改善がみられない計測項目が多かった.
  • 田中 みゆき
    2003 年 41 巻 1 号 p. 172-180
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    矯正治療前の乳歯列完成期の片側性唇顎口蓋裂児15名(3歳0か月から6歳0か月,平均年齢4歳1か月)と,臨床的正常咬合を有する健常児13名(3歳3か月から5歳9か月,平均年齢4歳4か月)を対照群としてデンタルプレスケール®を用いて咬合力,咬合接触面積,咬合圧を測定し比較検討した.また上下顎歯列石膏模型の計測を行って検討し,以下の結論を得た.
    1.片側性唇顎口蓋裂児の咬合力および咬合接触面積は健常児と比較して小さく,一方,平均咬合圧,最大咬合圧には著しい差は認められなかった.
    2.片側性唇顎口蓋裂児の咬合力非対称性指数および咬合接触面積非対称性指数は,健常児より高い値を示し,歯列の左右側における咬合接触状態の不均衡が認められた.
    3.片側性唇顎口蓋裂児の破裂側の咬合力と咬合接触面積は,非破裂側に比べていずれも小さかった.
    4.片側性唇顎口蓋裂児の個々の歯における咬合力,咬合接触面積は,破裂側の乳中切歯を除いて非破裂側が大きい値を示した.また,それらの分布も同様の傾向を示した.
    5.片側性唇顎口蓋裂児は,健常児に比べて上下顎面積比が小さかったが,咬合力および咬合接触面積とは関連がみられなかった.
  • 筒井 睦, 南出 恭子, 人見 さよ子, 三村 雅一, 大谷 敬三, 渡邊 景子, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    2003 年 41 巻 1 号 p. 181-188
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    社会環境の変化とともに子どもをとりまく問題にも様々な変化があり『児童虐待』という現象が社会問題になってきている現在である.虐待には,身体的虐待,性的虐待,ネグレクト,心理的虐待の4つがあり,各地域の保健所や保健センターなどで母子保健事業を通し,様々な取り組みが行われている.歯科界においても治療に連れて行かない親などがみられ,ネグレクトの疑いがあると考えられる.そこで,大阪府内の1歳~6歳の保育園児237名を対象に2回の歯科検診(齲蝕の有無,口腔習癖などの調査)を行い,齲蝕の放置状況や保育士からみた親子関係などについて調査し,今回は,とくに,歯科保健領域からのネグレクトとの関連性について検討を行った.
    その結果,
    1.親子関係が園児の口腔内状況を左右する可能性が認められた.
    2.保育士のような第三者による評価(歯科治療が行われていない,重度齲蝕の有無,親子のかかわり方)によってもネグレクトに繋がりかねないと思われる事例がみられた.
    虐待に対する認識は多様であり,共通の認識や理解には困難な点が多く,特に,ネグレクトは,直接的に表出されるものでなく,間接的に発見されることが多い.これらのことから,第三者の評価や園児の口腔内状況を把握,評価し,注意することも子育て支援に繋がり,ひいてはネグレクト予防にも繋がっていくことが示唆された.
  • 太田 増美, 野村 玲子, 松根 健介, 清水 武彦, 前田 隆秀, 朝田 芳信
    2003 年 41 巻 1 号 p. 189-193
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ELマウスは上顎臼歯の癒合根を高率に有することから,その成因には遺伝要因の関与が疑われている.今回,癒合根成因に対する遺伝要因の関与の有無を検討するため,ELマウスと正常歯根を有するDDYマウスとの遺伝的交配実験を行った.交配より得られたF1ならびにF2マウスにおける癒合根出現の有無を実体顕微鏡にて観察した結果,以下の結論を得た.
    1.ELマウスにおける癒合根出現頻度は60%と高値を示したが,DDYマウスはすべて正常歯根数を有していた.EL(♂)とDDY(♀)マウスとの交配から得られたF1マウスのすべてにおいて癒合根はみられなかった.癒合根がみられないF1マウス同士の交配から得られたF2マウスにおける癒合根出現頻度は9.1%であった.癒合根はすべて上顎第一臼歯近心頬側根と口蓋根の癒合であった.
    2.ELマウスにおける癒合根出現型は両側性が22.2%,片側性が77.8%であった.F2マウスにおける出現型はすべて片側性であった.
    3.ELマウスにみられた癒合根はすべて完全な癒合形態を示したが,F2マウスでは完全な癒合形態を示したものが75%であった.
    以上の結果より,ELマウスにおける上顎第一臼歯癒合根成因には遺伝要因の関与が大きく,その遺伝形式は常染色体劣性であることが示唆された.
  • 清水 武彦, 韓 娟, 前田 隆秀
    2003 年 41 巻 1 号 p. 194-200
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    コルチゾンにより誘導される口蓋裂発症に関与する遺伝要因についての検討を目的に,A/WySnマウスとC3H/Heマウスの遺伝的交配実験を行った.研究対象はA/WySnとC3H/Heの系統内交配とその2系間の交配により得られた胎仔である.妊娠中期に,酢酸コルチゾンを妊娠マウスに皮下投与し,18日齢胎仔を摘出し本研究に用い,以下の知見を得た.
    1.A/WySnにおける口蓋裂発症の頻度は65.4%,C3H/Heでは12.1%であった.F1ハイブリッドマウスにおける頻度は13.3%,N2バッククロスマウスでは20.7%であり,劣性遺伝性の遺伝要因の関与が示唆された.
    2.唇顎口蓋裂の頻度はA/WySnで23.1%,C3H/HeおよびF1では発症が認められず,N2で3.3%であり,劣性遺伝性要因の関与,また口蓋裂単独とは異なった遺伝要因が付加され発症する可能性が示唆された.
    3.口蓋裂を発症したN2の性別をPCR法により判定したところ発症率に性差はなく,常染色体性の遺伝要因が示唆された.
    4.本実験系ではコルチゾン誘導口蓋裂発症におけるA/WySnのgenetic maternal effectは明らかでなかった.
    5.2系統間のコルチゾン投与による口蓋裂発症率に明らかな差があることから,コルチゾン誘導口蓋裂に対する感受性座位のマッピングが連鎖分析により可能であることが示された.H-2領域とコルチゾン誘導口蓋裂の責任遺伝子との連鎖を評価するために,H-2領域に位置するDNAマーカーを用いてN2の遺伝子型判定を行った結果,H-2S領域と口蓋裂発症の責任遺伝子との間に示唆的な連鎖が認められた.
  • 荒井 縫衣子
    2003 年 41 巻 1 号 p. 201-208
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯の発生段階において,歯根完成後も歯根膜に残存する唯一の歯原性上皮がMalassez上皮細胞である.しかし,その機能については不明な点が多く残されている.
    そこで今回4種類の細胞外マトリックスFibronectin(FN),Laminin(LN),Osteopontin(OP),Collagen typeI(Col I)によるMalassez上皮細胞の接着,増殖を計測するとともに,チロシンリン酸化,Focal AdhesionKinase(FAK),paxillin,L1の発現を検討した.Malassez上皮細胞を各細胞外マトリックス上で培養したところ,FN,Col Iで接着が有意に促進し,LN,OPでは増殖が抑制される傾向を示した.FAK,paxillin,L1の発現は,著明な変動はみられなかったが,チロシンリン酸化は,各細胞外マトリックスで変動が認められた.培養60分後でOP,Col Iでpaxillinのリン酸化が亢進しており,培養3日,7日,14日目でFAKのチロシンリン酸化に変動が認められた.また培養14日目で,L1のリン酸化の発現が認められた.以上より細胞外マトリックスは,Malassez上皮細胞の接着,増殖,チロシンリン酸化に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 岡 暁子, 櫻江 玲史, 中田 稔
    2003 年 41 巻 1 号 p. 209-213
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エネルギー代謝における咀嚼の役割を明らかにすることを目的とし,ラットが摂取する飼料の硬度を変化させて,食事に伴って上昇する体温(食後熱産生)を比較した.実験に用いた低硬度飼料の硬度は,通常飼料と比較して約2分の1とした.また,成分と形状は通常飼料と等しくすることで,両飼料が各ラットに与える味覚や嗅覚,摂食時の行動には大きな違いがでないようにした.
    雄性成熟ラット(n=8)を用いて腹腔内に体温センサーを留置し,24時間絶食後各飼料を与え,食行動,食後熱産生,活動量を経時的に計測した.実験は2回行い,各飼料を入れ替えることですべてのラットは通常飼料,低硬度飼料のどちらも与えられた.1回摂食量,摂食時間,摂食速度は,通常飼料摂取時と低硬度飼料摂取時との間に有意な差を認めなかった.低硬度飼料摂取時における食後熱産生は,通常飼料摂取時と比較して明らかに低下していた.この時の活動量には差が認められなかった.以上の結果から,食後熱産生は食物の性状の影響を受けており,硬度の低い食物を摂取する際には,食後の体温上昇が十分に行われないことがわかった.
    従って,食物の硬度は,食後の熱産生の上昇に影響を与えていることがわかり,食物をよく咀嚼することは,摂食中のエネルギー代謝機構を活性化させる可能性が示唆された.
  • 新井 桂, 白川 哲夫, 小口 春久
    2003 年 41 巻 1 号 p. 214-223
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは過去10年間に,あらい歯科・小児歯科医院を受診した有病外来患者の実態を調査すると同時に,幾つかの臨床例を通して高次医療機関との連携・協力について考察するのを目的に本研究を行った.有病小児外来患者196名について臨床統計的な調査を実施して,以下の結論を得た.
    1.有病小児患者の年齢別では3~5歳が最も多く全体の50.5%を占め,小児患者全体での有病者率は7 .2%であった.
    2.来院経緯は知人からの紹介が39.3%で最も多かったが,学校,他の医療機関,保健センターなどを加えると,何らかの紹介による来院率は70%であった.
    3.来院圏としては,医院の所在する区内からが81.6%であったが,うち61.3%は徒歩圏外からの来院であった.
    4.疾患分類では,呼吸器疾患が最も多く37.7%を占め,すべて喘息であった.次いで精神・神経疾患22.7%,先天性心疾患10.6%であり,これら3つの分類で71.0%を占めていた.
    5.初診時の主訴は0~2歳では「予防処置」が最も多かったが,他のすべての年齢層では「齲蝕処置」を希望する事例が最も多かった.
    6.初診時の投薬内容の確認については,82.1%の患者が何らかの全身的投薬を受けていたが,そのうち24.2%は問診表で確認できず他の方法で後に確認された.
    7.処置後,あるいは来院後の局所的・全身的状況から高次医療機関に精査を依頼し初めて有病者であることを確認した事例が8例あり,高次医療機関との連携と協力の重要性を確認した.
  • 大河内 昌子, 向井 美惠
    2003 年 41 巻 1 号 p. 224-231
    発行日: 2003年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳児を対象にした乳児用食品の固さの基準値についての客観的な検証は行われていない現状である.そこで,乳児に適正な物性基準の資料を得る目的で,離乳期の乳児を対象に摂食時の口腔領域の動きを観察評価して,その発達状態によって4群に分類し,以下の検討を行った.被験食品は,予め調整した固さの異なる4種類の基準食品とし,それらの食品の摂食時の処理方法の適否および顎の運動回数を指標として4群間で比較検討を行い以下の結論を得た.
    1.被験食品の固さが増加するに伴い,適正処理可能な乳児の割合は減少した.
    2.乳児は,食品の固さに応じて,顎の運動回数を変化させ食品を処理していることが認められた.
    3.食品の固さの変化による顎の運動回数は,離乳の時期によって異なることが示唆された.
    離乳初期~後期の乳児が処理できる固さの目安は得られたが,今後これらの固さの食品に対して適切な顎運動回数の検討などがさらに必要と考えられた.
  • 若林 崇仁, 荻原 和彦, 相山 誉夫
    2003 年 41 巻 1 号 p. 232-251
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    床矯正装置による下顎歯列弓側方拡大が生体に対してどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で,床矯正装置(Schwarz appliance)を56日間装着した実験犬と装置を装着しない対照犬について,体重,行動,食欲,糞便などの基礎代謝,血液生化学検査値(15項目),ならびに口腔粘膜への影響について調べた結果,以下の結論を得た.
    1.実験犬の体重は,装置装着直後に若干減少したが,その後ただちに回復し,対照犬との間にほとんど差異が認められなかった.また行動,食欲,糞便についても,実験犬と対照犬の間に差異が認められなかった.
    2.実験犬の血液生化学検査値は,アルカリフォスファターゼ活性値が正常値の範囲内であったが,装置調整を行った翌日に上昇し,ほぼ1週間で調整前の値に回復した.その他の14項目の検査値も,実験犬と対照犬の間で明らかな差異が認められなかった.
    3.口腔粘膜は,実験犬の頬側および舌側の遊離歯肉に軽度の炎症が生じたが,床が接する舌側歯肉に炎症像などは観察されなかった.
  • 中田 志保, 渡辺 里香, 早崎 治明, 中田 稔
    2003 年 41 巻 1 号 p. 252-258
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯列内で硬い食品を噛む部位である咀嚼時の主機能部位(歯種)は,成人では被験者によって一定しており,第一大臼歯であることが多いといわれている.本研究は,小児における咀嚼時の主機能部位の有無および主機能部位の歯齢にともなう変化を明らかにするため,II A期からIV A期までの各歯齢につき,約30人ずつを被験者とし,ストッピングを用いてそれぞれ5回の噛みしめを行わせた.5回の噛みしめにおいて,主に噛みしめた部位を各被験者の主機能部位として観察を行ったところ,以下の結論を得た.
    1.小児は,成人で報告されたような歯列上の1か所に噛みしめ部位が集中する傾向は少なかったが,主機能部位の歯種は歯齢により一定していた.
    2.小児の咀嚼時の主機能部位は,II A期からIII A期にかけて第二乳臼歯が中心であったが,II B期に第二乳臼歯が脱落することにより,第二乳臼歯から第一大臼歯へ移行した.III C期以降の主機能部位は,第一大臼歯であった.
    3.ストッピングの噛みしめ部位を調べることで,主機能部位を簡便に特定することができた.また,各歯齢における主機能部位が明らかとなったことから,咀嚼機能の発達を評価する上で,有用な方法となり得ることが示唆された.
  • 浅里 仁, 網野 重人, 伊田 博, 魏 秀峰, 倪 雪岩, 矢野 雄一郎, 大竹 麻美, 若月 宏之, 宗田 友紀子, 山本 祥子, 鈴木 ...
    2003 年 41 巻 1 号 p. 259-265
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中国吉林省長春市に住む中国人小児(3歳から5歳の幼稚園児160名と7歳から12歳の小学生216名)と保護者を対象にアンケート調査を行った.その結果,小児の成育環境,食生活環境,口腔衛生環境,口腔内状態には以下の特徴が認められた.
    1.朝食,夕食の規則性,就寝時間といった生活リズムは,規則的であった.
    2.飲料や間食の内容は,子どもの好むものを,自由に与えている傾向が認められた.
    3.口腔内状態は,疾患の自覚症状を訴える小児が多かった.
    4.口腔衛生に対しての知識や意識は日本の現状とは異なっていた.
    小児の口腔の健康増進にあたっては,保護者や本人に対して,食生活が全身の健康に与える影響についての理解を求めることと実際の口腔衛生教育にあるのではないかと推測された.
  • 王 小競, 文 玲英, 楊 富生, 藥師寺 仁
    2003 年 41 巻 1 号 p. 266-270
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    体外培養したマウス臼歯歯胚のBMP分泌に及ぼすニコチンの影響を検索する目的で,RPMI-1640半固体培養基法を用いて,胎齢16日のマウスから摘出した臼歯歯胚を培養し,培養歯胚のBMP分泌状況を観察した.実験群のRPMI-1640培地にはニコチン10mg/mlを添加,対照群にはニコチン無添加のRPMI-1640培地を用いた.4日間培養した歯胚を固定後,ABC免疫組織学的方法により,歯胚中のBMPの有無を検索した.その結果,実験群の歯胚ではBMPの染色が弱陽性であったのに対し,対照群の歯胚では,エナメル器および歯乳頭組織中にBMP陽性所見が認められた(P<0.01).以上の所見から,ニコチンは,マウス培養歯胚のBMP分泌を抑制することが確認された.
  • 菊地 友絵, 八若 保孝, 中尾 加代子, 弘中 祥司, 加我 正行, 小口 春久
    2003 年 41 巻 1 号 p. 271-277
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    北海道大学歯学部附属病院小児歯科の地域に果たす役割を把握するため,当科を受診した最近5年間(平成8~12年度)の初診患者の初診時の状態について実態調査を行い,以下の結論を得た.
    1.初診患者数は5年間で増加傾向を示した.しかし,5年間ののべ患者数に大きな変化はみられなかった.
    2.初診時年齢は平均6歳8か月であり,各年度の平均年齢の範囲は6歳2か月から7歳5か月であった.
    3.居住地に関しては,各年度において札幌市内が全体の約77%を占めており,その他は北海道全域から患者が来院していた.
    4.紹介患者は初診患者の約40%を占め,そのうち医科からの紹介は初診患者の約15%であった.この傾向は各年度ともほぼ一定であった.
    5.精神・神経的疾患ならびに器質的疾患を有する患者の割合は,各年度とも初診患者の約25%を占めていた.
    6.主訴については,各年度とも齲蝕が最も多かったが,全体として若干減少傾向を示した.次いで歯列・咬合が多く,これらには増加傾向が認められた.
    以上のことから,当科が一次医療のみならず,高次医療機関としての役割を担っていることが示され,北海道における当科の果たす役割が極めて重要であることが示唆された.
  • 中尾 加代子, 八若 保孝, 菊地 友絵, 弘中 祥司, 加我 正行, 小口 春久
    2003 年 41 巻 1 号 p. 278-284
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    北海道大学歯学部附属病院小児歯科が地域に果たしている役割を把握するため,当科を受診した最近5年間(平成8年度~12年度)の初診患者に対して,主訴に対する治療終了後の動向について定期管理を中心に実態調査を行い,以下の結論を得た.
    1.定期管理を始めると,来院しなくなった患者が増え,定期管理継続中の患者が毎年15~20%の割合で減少していた.
    2.定期管理に応じる患者の年齢は,初診時年齢が,0歳から5歳までは長期間にわたり定期管理に応じていた.しかし,6歳から12歳,13歳以上では年々定期管理に応じる割合が減少した.
    3.居住地と定期管理状況との関係では,札幌市内の患者の定期管理に応じる割合は,近隣地区ならびに遠隔地よりも多く認められた.
    4.疾患を有する患者の定期管理状況は,全体と比較して,継続中の患者の割合が高い傾向にあった.
    5.齲蝕,外傷を主訴とした患者の定期管理の実態は,約60%以上と高い割合で継続していた.しかし,歯の異常,軟組織の異常では,定期管理に応じる患者は少なかった.
    以上のことから,齲蝕,外傷に比較して,歯の異常,軟組織の異常の場合,主訴に対する処置の後,紹介元の近医へ戻る患者が多く認められたこと,また疾患を有する患者の定期管理継続中の割合が全体と比較して高かったことは,当科が高次医療機関としての役割を果たしていると考えられた.しかし,定期管理を始めると,定期管理継続中の患者は減少する傾向を示した.
  • 中山 聡, 勝木 完司, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    2003 年 41 巻 1 号 p. 285-289
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕治療を主訴として,松本歯科大学病院小児歯科を受診した日伯混血児の下顎左側中切歯部に,複数過剰歯が癒合して生じたと思われる極めて稀な双生歯を認め,以下の所見を得たので報告する.
    1.エックス線所見で,下顎左側中切歯の隣在歯に欠如は認めず,下顎左側中切歯に,萌出している過剰歯と埋伏過剰歯の2本の過剰歯が癒合した双生歯と考えられた.
    2.萌出過剰歯と下顎左側中切歯の癒合部は,エナメル質を一部に認める象牙質様組織で一体となっていたが,埋伏過剰歯の接合様式については判明しなかった.
    3.下顎左側中切歯相当部の歯冠近遠心幅径は4.67mmで,下顎右側中切歯および日本人男子の平均値と比較して若干小さい幅径であった.また,過剰歯近心側の歯冠近遠心幅径は3.53mm,遠心側の歯冠近遠心幅径は2.96mmであった.
  • 鶴山 賢太郎, 許田 拓朗, 清水 武彦, 前田 隆秀
    2003 年 41 巻 1 号 p. 290-296
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎左右第二乳臼歯の晩期残存による咬合異常が原因と思われる12歳男児の顎関節症を経験した.主訴は開口時における顎関節痛であり,開口量は20mmであった.患児の口腔内には乳齢属冠によって被覆された下顎左右第二乳臼歯の晩期残存が認められ,顎機能運動時に明らかな咬頭干渉を呈していた.顎機能運動時の関節雑音は左右顎関節ともに認められなかった.初診時のMRI検査の結果,両側の顎関節部において,骨変形,関節円板転位,関節円板変形は認められなかったものの,右側顎関節T2強調画像においてjoint effusionが認められた.臨床診査とMRI検査から患児は関節包・靭帯障害を呈する顎関節症のII型であり,その原因は咬頭干渉を呈している下顎左右第二乳臼歯であると診断された.患児に対する処置として,局所麻酔下において当該2歯の抜去のみを行った.抜歯翌日の開口量は32mmであり,15日後には45mmまで回復した.3か月後に再びMRI検査を行ったところjoint effusionは消失していた.
    今回の経験より,乳歯列から永久歯列への交換期における乳臼歯の晩期残存による咬合異常が顎関節症を惹起し得ること,またこれらを早期に取り除くことによって顎関節症状ならびにMRI所見において改善が認められたことから,顎関節症の永久歯列期に及ぶ遷延を予防することができたと考えられる.
  • 大多和 由美, 辻野 啓一郎, 望月 清志, 藥師寺 仁
    2003 年 41 巻 1 号 p. 297-302
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児の口腔軟組織外傷は,子どもが物をくわえたまま転倒し,受傷することが多い.特に頬脂肪体ヘルニアは,報告されている事例の殆どが乳幼児期の受傷であり,その原因の多くが歯ブラシによるものである.今回,著者らは,歯ブラシの刺入による頬脂肪体ヘルニアを生じた症例を経験した.患児は2歳5か月の男児で,歯口清掃中にソファから転落し,歯ブラシで頬粘膜を損傷した.その後,頬粘膜に腫瘤を認め,咀嚼障害を起こし,東京歯科大学水道橋病院小児歯科を受診した.腫瘤は拇指頭大で右側頬粘膜耳下腺乳頭部付近の裂創から連続して認められた.外傷による頬脂肪体ヘルニアの診断にて,全身麻酔下に腫瘤を切除,縫合した.組織学的には,感染を伴う脂肪組織炎と診断された.術後現在まで約2年間,経過は良好である.幼児自身による歯垢清掃に際しては,不慮の事故が生じないよう,保護者に十分注意するよう指導する必要性を認めた.
  • 河上 麻衣子, 鈴木 淳司, 岡田 貢, 曽田 芳子, 林 文子, 三浦 一生, 香西 克之
    2003 年 41 巻 1 号 p. 303-309
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    X連鎖優性遺伝による疾患であるCoffin-Lowry症候群に遭遇したので歯科的所見を加えその概要を報告する.
    1.患児は精神発達遅滞,低身長,低体重,鳩胸,脊柱の側彎曲,手指末節骨の鍵穴状変化,逆ダウン様の眼裂斜下などCoffin-Lowry症候群の典型症例と考えられた.
    2.骨格は全体的に小さめであり,特に上顎骨などの中顔面の劣成長が著明であった.歯列弓も小さく,歯齢も暦齢と比べ遅れていた.
    3.エックス線診査により上顎中切歯歯根の極度の吸収と,下顎中切歯部歯槽骨の水平的吸収が認められた.また, Polymerase Chain Reaction による検査により患児はPorphyromonas gingivalis, Actinobacillus actinomycetemcomitans,Capnocytophaga ochracea, Capnocytophaga gingivalis, Campylobacter rectus, Prevotella intermedia,Prevotella nigrescens, Bacteroides forsythusが陽性であることが確認され,歯周疾患に関する危険因子を持つことが分かった.
  • 2003 年 41 巻 1 号 p. 310
    発行日: 2003/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
feedback
Top