小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
幼児の口腔内状態と家庭環境の関連性について
とくに,歯科保健活動から子育て支援を考える
筒井 睦南出 恭子人見 さよ子三村 雅一大谷 敬三渡邊 景子嘉藤 幹夫大東 道治
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 41 巻 1 号 p. 181-188

詳細
抄録
社会環境の変化とともに子どもをとりまく問題にも様々な変化があり『児童虐待』という現象が社会問題になってきている現在である.虐待には,身体的虐待,性的虐待,ネグレクト,心理的虐待の4つがあり,各地域の保健所や保健センターなどで母子保健事業を通し,様々な取り組みが行われている.歯科界においても治療に連れて行かない親などがみられ,ネグレクトの疑いがあると考えられる.そこで,大阪府内の1歳~6歳の保育園児237名を対象に2回の歯科検診(齲蝕の有無,口腔習癖などの調査)を行い,齲蝕の放置状況や保育士からみた親子関係などについて調査し,今回は,とくに,歯科保健領域からのネグレクトとの関連性について検討を行った.
その結果,
1.親子関係が園児の口腔内状況を左右する可能性が認められた.
2.保育士のような第三者による評価(歯科治療が行われていない,重度齲蝕の有無,親子のかかわり方)によってもネグレクトに繋がりかねないと思われる事例がみられた.
虐待に対する認識は多様であり,共通の認識や理解には困難な点が多く,特に,ネグレクトは,直接的に表出されるものでなく,間接的に発見されることが多い.これらのことから,第三者の評価や園児の口腔内状況を把握,評価し,注意することも子育て支援に繋がり,ひいてはネグレクト予防にも繋がっていくことが示唆された.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top