抄録
本研究は,授乳期の小児の口腔内におけるlactobacilliの齲蝕原性を明らかにすることを目的とし,小児の唾液から分離されたLactobacillus属の4菌種7菌株を試料とし,1名の成人の提供者からの唾液を用いて,hydroxyapatite beads(HA)を歯面にみたて,skim milkおよび唾液で処理したHA(mix-HA),skimmilkのみで処理したHA(milk-HA)ならびに唾液のみで処理したHA(s-HA)に対し,付着能を有する菌株を検索した。
その結果Lactobacillus paracasei Japan Collection of Microorganisms 1133株(L.paracasei JCM 1133株)のみが,milk-HAとmix-HAおよびs-HAに対して付着能を有することが示された。
さらに,L.paracasei JCM 1133株は,複数の小児および成人の提供者からの唾液を用いて処理したs-HAに対しても付着能を有することが示された。
以上の結果から,L.paracasei JCM 1133株は,乳幼児期の歯の表面にペリクルを介し付着する可能性が示された。さらに,離乳後に母乳または人工乳を摂取する機会が減じたヒトの歯の表面に対しても,同様に付着能を有することが示唆された。