抄録
永久歯歯冠の大きさの年代的な変遷については相反する報告がなされており,その実態はいまだに明確となっていない。本研究は混合歯列期の小児の石膏模型を用いて,代生歯である中切歯と加生歯である第一大臼歯を代表として取り上げて,その歯冠近遠心幅径および唇(頬)舌径を計測し,20年前と現在との歯冠の大きさの変化について比較検討した。対象は1995年から2000年までに岩手医科大学小児歯科に来院した小児55名(男児28名女児27名)と1975年から1980年までに来院した小児59名(男児30名女児29名)から採得した石膏模型であり,計測の結果,以下の知見を得た。
1.歯冠近遠心幅径は20年前と比較して,第一大臼歯では,男児で小さくなっており有意差が認められた。中切歯では,男児の上顎で大きくなり,男児の下顎,女児の上顎,下顎では小さくなる傾向を示したが,有意差は認められなかった。
2.歯冠唇(頬)舌径は20年前と比較して,第一大臼歯では男女ともに殆ど変化なく有意な差は認められなかった。中切歯では,男児の上顎で大きくなっており有意差が認められた。
3.永久歯を代表させて,中切歯と第一大臼歯についてのみ計測を行ったが,一定の明確な傾向を明らかにすることはできなかった。今後永久歯の他の歯種についても調査の必要性があると思われた。