小児歯科学雑誌
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A/WySnマウスとC3H/Heマウスにおける口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症率の検討
韓 娟清水 武彦前田 隆秀
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2003 年 41 巻 5 号 p. 887-892

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抄録

口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症の原因となる遺伝子を連鎖解析によって解明するにあたり,自然発症率ならびに誘発条件を付加した発症率が異なるモデル近交系マウスの確立をめざした。
A/WySnマウスはこれらの奇形の自然発症ならびにコルチゾン誘発発症が高いことが知られていることから,高発症マウスとしてA/WySnマウスを選んだ。一方,低発症マウスとしてC3H/Heマウスが用いられるかを検討した。2系統のマウスにおける口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症率の比較を行ったところ以下の結果を得た。
1.A/WySnマウスにおいて,口唇裂および唇顎口蓋裂の自然発症が認められ,口蓋裂の自然発症は認められなかった。
2.A/WySnマウスの口唇裂の自然発症率は3.7%であり,唇顎口蓋裂自然発症率は10.8%であった。
3.C3H/Heマウスにおいて,口唇裂,唇顎口蓋裂および口蓋裂の自然発症は認められなかった。
4.コルチゾン投与によりA/WySnマウスには唇顎口蓋裂および口蓋裂の発症が認められ,口唇裂の発症は認められなかった。
5.コルチゾン投与によりC3H/Heマウスでは口蓋裂の発症のみが認められた。
6.コルチゾン投与によりA/WySnマウスの口蓋裂発症率は40.6%,C3H/Heマウスでは16.7%であり,コルチゾンに対してA/WySnマウスが高い感受性を示した。
以上のことから,A/WySnマウスは自然発症の口唇裂および唇顎口蓋裂の疾患モデルマウスとしてまた,コルチゾン誘発によって唇顎口蓋裂と口蓋裂の疾患モデルマウスとして有用であることが示唆された。ならびにC3H/Heマウスが低発症マウスとして用いられることが明らかとなった。さらに,自然発症の唇顎口蓋裂とコルチゾン誘発唇顎口蓋裂の原因遺伝子が同一か否か解明することが可能となった。

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