小児歯科学雑誌
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幼児上唇の血管腫に対する無水エタノール局所注入療法
甲原 玄秋
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2003 年 41 巻 5 号 p. 906-911

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抄録
血管腫の治療には種々の方法がある。とりわけ顔面の血管腫は審美的な要素を考慮した治療が必要である。今回乳児の上唇にみられたイチゴ状血管腫に対してエタノール局所入注療法を行い,良好な結果を得たので報告する。
1か月の女児が上唇部に赤い点状の病変をもち紹介され来院した。初診時は3つの帽針頭大の病変であったが,それは徐々に増大し,8か月時には上唇の2/3以上を占めるようになってきた。8か月時に生検を行い毛細血管性血管腫の病理診断を得た。腫瘍は月単位で増大しているため,その制御のためエタノール局所注入療法を検討し,血管腫の赤色の消失と縮小を治療目標とした。生後11か月時にエタノール0.4mlを腫瘍に注入した。次回は1歳2か月時に0.7mlを使用し,その後,4回にわたり0.7~2mlを追加した。6回目の使用は2歳7か月時であった。これらの治療で赤色は消失し腫瘍は縮小したが,上唇に膨隆が残存した。口唇の形態の修正のため3年8か月で口唇形成術を行った。口唇は左右対称となり口唇の動きや知覚の異常もなく11歳の現在腫瘍の再発はみられない。
エタノール局所注入療法はその使用量が適切であれば,血管腫の部位によっては有用な治療法といえる。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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