抄録
永久歯を喪失する理由については歯周疾患,齲蝕によるものが多いことはよく知られている。しかし,乳歯は成長に伴い脱落するものであり,その喪失原因を特定することは困難である。乳歯の早期喪失原因を明らかにすることは,今後,小児や保護者への指導を含め,小児の長期的口腔健康管理における有用な資料となる。この目的で,平成12年4月からの3年3か月間に東京歯科大学水道橋病院小児歯科で交換期の診断による抜歯例を除く乳歯の抜去手術を受けた小児のうち,抜歯理由が明確であった105名の小児の症例を選択し,年齢,性別,歯種,抜歯理由などを調査し,以下の結論を得た。
1.対象となった乳歯は,上顎125歯,下顎47歯の合計172歯であった。
2.歯種別では,上顎乳中切歯が最も多く52歯,次いで上顎乳側切歯24歯,上顎第一乳臼歯22歯であった。
3.抜歯理由は,上顎では全歯種とも齲蝕を原因とするものが多かった。しかし,乳中切歯では外傷,第二乳臼歯では第一大臼歯の異所萌出による歯根の異常吸収が,齲蝕によるものとほぼ同数であった。下顎では,乳切歯はすべて外傷が原因であり,乳臼歯はほとんどが齲蝕が原因で抜歯していた。なお,乳犬歯の抜去例は皆無であった。
4.抜歯後に再来院しなかった患児は105名中29名であった。齲蝕が原因で抜歯した患児のうち,抜歯後に再来院しなかった患児の割合は,他の理由で抜歯した患児におけるそれに比べ多い傾向がみられた。