抄録
乳歯列完成前の幼児において口腔内異物埋入の2例を経験した。
患児らは,近医にて乳中切歯の形態異常を指摘され来院した。1例目は,1歳7か月の女児で,下顎両側乳中切歯に白色硬組織様構造物を認め,わずかな歯の動揺と歯肉の炎症および退縮があった。2例目は,1歳9か月の男児で,上顎左側乳中切歯に白色硬組織様構造物を認め,歯の動揺と歯肉の炎症を認めた。2例とも,硬組織様構造物に一致するエックス線不透過像を認めず,触診では構造物の動揺を認めたため異物埋入と診断し摘出した。処置後の経過は良好であった。摘出物はプラスチックチューブで,保護者が使用している枕のポリエチレンチューブと判明した。
歯科医師は,原因が不明瞭な歯周組織の異常を認めた際には,異物の埋入も考慮に入れて診査をすることが望ましい。また保護者や保育担当者に,小児が異物をくわえることによって起こる口腔内への為害作用などの情報を,早期に提供する必要性が示唆された。さらに,製造者もより安全な形態の商品を開発し,事故防止に努めることが重要であると思われた。