小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
6歳男児に認められた歯牙腫を伴う石灰化歯原性嚢胞の1例
林 芳裕片倉 朗黒須 美佳松坂 賢一藥師寺 仁
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 42 巻 3 号 p. 447-452

詳細
抄録
石灰化歯原性嚢胞は幅広い年齢にわたり報告されているが,低年齢児での報告は少ない。今回,著者らは,6歳男児の下顎乳臼歯部に発現した,歯牙腫を伴う石灰化歯原性嚢胞の1例を経験したので報告する。
患者は,6歳8か月の男児である。下顎右側乳臼歯部の膨隆を主訴として来院した。視診では,顔貌左右非対称で下顎右側第一乳臼歯部頬側歯槽部にクルミ大の膨隆が認められ,触診によって羊皮紙様感を触知し,骨の菲薄化が疑われた。エックス線画像検査では,クルミ大の単房性透過像を認め,境界明瞭な嚢胞腔様の構造を呈し,第一乳臼歯直下に歯牙腫様の硬組織像を認めた。処置は,嚢胞内部に歯牙腫を含み,後継永久歯の萌出障害をきたす恐れが大きかったこと,ならびに患児の精神的影響も考慮し,生検を兼ねて摘出術を選択し,歯牙腫を含め嚢胞を一塊にて摘出した。
病理組織検査の結果,不規則な形態を示す歯牙腫の歯冠相当部に連続して,上皮内にエナメル髄様の細胞からなる部分が認められた。裏装上皮には,歯牙腫の歯冠部分を中心に,いわゆるghost cellの集簇が広範囲に認められ,裏装上皮と接して不規則な外形を有する象牙質様の硬組織形成が認められた。以上のことから,本例は歯牙腫を伴う石灰化歯原性嚢胞と診断した。
嚢胞摘出後9か月を経過した現在,下顎骨膨隆は縮小傾向にあり,再発は認められず経過は良好である。しかしながら,石灰化歯原性嚢胞は,腫瘍性の性格を有しており,さらには歯列・咬合への影響も考慮し,長期にわたっての経過観察が必要である。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top