抄録
発音補助装置は,口蓋裂,脳血管障害後遺症,もしくは先天性に生じる鼻咽腔閉鎖機能不全に起因する構音障害の治療に用いられる。発音補助装置は歯科領域の技術を用いて作製されるものであるがが高,専門性いなどの理由から限られた医療機関でしか作製されていないのが現状である。本稿では,多くの歯科医師にこの装置についてより理解を深めていただくために,当院での発音補助装置を用いた治療法について症例を通して報告する。
発音補助装置には,軟口蓋挙上装置(Palatal Lift Prosthesis; PLP),バルブ付加型軟口蓋挙上装置(Bulb attachedPalatal Lift Prosthesis; Bulb-PLP)などがある。今回,当院での症例のうち,PLPもしくはBulb-PLPで治療した片側性唇顎口蓋裂術後例,粘膜下口蓋裂未手術例,口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖機能不全症例および先天性鼻咽腔閉鎖不全症の4例を報告した。
その結果,4例全てにおいて当院で作製,調整した発音補助装置が有効であることが示された。
当院のように個人開業の歯科医院においても発音補助装置の作製,調整が可能であり,鼻咽腔閉鎖機能不全に起因する構音障害の治療の一端を担うことができると考えられた。