抄録
近年齲蝕予防への関心が高まる中,フッ素の応用は齲蝕予防を行う上で全年齢を通して欠かすことのできないものとなっている。しかしながら障害者,低年齢児では満足な洗口ができず,フッ素の飲み込みが危惧されるため,積極的には実施されているとは言えない。従ってこれら児・者にも効果的,かつ安全にその応用方法を確立することが望まれる。そこで,著者らは従来の洗口液に塗布時の操作性を良くするために粘性を持たせ,通法の洗口後の口腔内残留フッ素量と同程度の量を歯ブラシにて塗布することを考えた。今回,通常の洗口法と改良を加えた洗口剤を局所塗布した後の経時的口腔内残留濃度を計測した結果,両者ともに口腔内全体にフッ素は行きわたっていることが確認され,また,その後の口腔内残留フッ素濃度は,経過時間10分後,30分後ともに全ての部位(上下顎の中切歯,犬歯,第一大臼歯)において両者に有意差は認められなかった。以上の結果から,本法は洗口能力が劣ったり,飲み込みの抑制のできない障害者,低年齢児の家庭療法として有用であると考えられる。