2004 年 42 巻 4 号 p. 535-540
顎骨内に存在する未萌出歯の観察は,歯科用エックス線写真による二次元的な画像であるために,像の拡大や歪みなど精度の低下が疑問視され,撮影部位によっては解剖学的形態から読影が困難である場合が多い。しかし,CTやMRIによる撮影は被曝線量や解像力の問題が指摘され,歯科臨床に応用されることが少ない。本研究では,被曝線量が少なく,硬組織の画像が鮮鋭であり,装置が小型である歯科用小照射野エックス線CTを使用し,解剖学形態により読影が困難とされる上顎の未萌出歯の観察を行った。その結果以下の結論を得た。
1.歯列に対して平行する面では,第二大臼歯は遠心方向に回転していた。
2.咬合平面に対して平行する面では,第二大臼歯は第一大臼歯に対して頬側方向に位置していた。
3.歯の萌出方向に隣接した歯槽骨の一部が存在しないことが確認できた。また,歯槽骨が離開している部分は,第二大臼歯の歯冠幅径に比べて小さい値を示した。
4.歯列に対して横断する面では,第二大臼歯歯冠の根尖は硬口蓋よりも頭蓋側に位置していた。
5.3DXの撮影画像では,硬組織や未萌出歯の位置関係が鮮鋭に観察できた。