抄録
著者らはこれまでに,レーザードップラー血流計による小児および成人の永久切歯の歯髄血流測定,ならびに外傷後の幼若永久歯の歯髄診断へのレーザードップラー血流計の応用について報告した。
本研究では,1年を超える永久中切歯の外傷の治癒経過と歯髄血流変動についてレーザードップラー血流計を用いて検討した。健全歯ならびに生活歯であることが判明した外傷歯において,歯髄血流に脈拍と同期した拍動成分とともに0.01-0.05Hzの低周波成分が存在することが明らかになった。これらの周期的変動成分の検出は,エックス線写真上で歯髄腔の確認が困難な歯についても可能であった。軽度の脱臼を認めた7歳児の上顎中切歯外傷の1例では,受傷8日後に測定された歯髄血流値は,対照群の小児の上顎中切歯の歯髄血流値に比べ約2倍の値を示した。歯根破折があり固定を必要とした上顎中切歯外傷の1例にお受いて,傷約5年後の診査で歯髄腔の狭窄とともに歯髄血流値の低下を認めた。
これらの結果は,外傷後の歯髄の回復過程の評価ならびに歯髄診断に,レーザードップラー血流計による歯髄血流測定が有用であることを示している。