小児歯科学雑誌
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舌突出癖を有する小児の構音特性-第1報歯茎音/s/の音声音響分析
工藤 みふね高橋 昌司五十川 伸崇佐藤 智子矢野 直人石川 雅章高木 裕三
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2005 年 43 巻 1 号 p. 79-84

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抄録

嚥下時舌突出癖に伴い開咬や上下顎切歯の著しい唇側傾斜を有する小児(以下,開咬児とする)では,本来歯茎音である/s/や/t/の調音時,舌端の位置が歯間音でのそれに近づいていることが予想されるが,音声学的な検討は少ない.今回,開咬児の歯茎音の音声波形からフォルマント周波数を抽出し,臨床的正常咬合を有する小児(以下,正常咬合児とする)のそれと比較し,先に述べた仮説の音声音響学的な証明を試みた.
3歳以上15歳以下の正常咬合児および開咬児に,無声歯茎摩擦音/s/を含む短い文章「花が咲いた」を発音してもらい収録した.その音響学的分析を,無声歯茎摩擦音/s/における第1,2フォルマント周波数(以下,F1,F2)に着目して行い,正常咬合児と開咬児を比較した.その結果,正常咬合児に比較して開咬児は,F1,F2ともに有意に高くなった.また,正常咬合児と開咬児を合わせると,歯茎音が歯間音化するに従い摩擦音が接近音化した.
今回,開咬児のF1,F2が正常咬合児のそれと比較して共に高いことから,調音時の開咬児の舌端が正常咬合児での歯茎との距離よりも少し離れて,摩擦音から接近音でのそれに近づく傾向にあること,また,舌端が声道の解放端に近くなり歯茎音から歯間音でのそれに近づいていることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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