小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
早期萌出したTurner歯に歯髄感染を起こした1例
難波 みち子内川 喜盛
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 43 巻 3 号 p. 463-468

詳細
抄録
乳歯の根尖性歯周炎の拡大は,後継永久歯に種々の障害をもたらす.今回,先行乳歯の根尖性歯周炎に起因して重度のエナメル質形成不全を伴い早期萌出した永久歯が,萌出直後に根尖性歯周炎を生じた症例について報告する.
患児は,5歳9か月の男児で下顎左側第一乳臼歯部の疼痛と歯肉腫脹を主訴として来院した.患歯の保存を優先し,根管治療にて経過観察を行っていたが,1年8か月後にやむなく抜歯処置を施した.抜歯後間もなく,下顎左側第一小臼歯は早期萌出し,中程度の動揺と歯冠の広範囲にエナメル質の形成不全が認められた.2か月後,下顎左側第一小臼歯部の疼痛と腫脹を主訴として再来院した.エックス線検査から,歯根の形成量は1/3程度で,根尖部に透過像が認められた.急性根尖性歯周炎と診断し,水酸化カルシウム製剤を貼薬し,根尖の閉鎖を待った.下顎左側第一小臼歯は,歯根の伸展を認め,硬組織により根尖の閉鎖が認められた.根管は易破折性を考慮し象牙質接着システムを用いコンポジットレジンにて充填し,同時にファイバーポストを併用した支台築造を行った.歯冠修復は硬質レジンジャケット冠を装着し,経過観察している.
以上から,感染を生じた幼若永久歯は状況を把握し,長期の予後を考慮した対応が重要と考えられた.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top