小児歯科学雑誌
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Sturge-Weber症候群児にカスタムメイドタイプ・マウスガードを応用した1例
大多和 由美辻野 啓一郎望月 清志藥師寺 仁武田 友孝石上 恵一
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2005 年 43 巻 3 号 p. 469-476

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抄録
Sturge-Weber症候群は,三叉神経分布領域における先天性の皮膚血管腫,頭蓋内石灰化と神経学的徴候を伴う同側性髄膜血管腫,二次性の緑内障を伴う脈絡膜の血管腫の3主徴よりなる,きわめてまれな症候群である.
今回,著者らは上顎両側の血管腫に起因すると考えられる著しい上顎前突症例の患児に対し,カスタムメイドタイプ・マウスガードを応用し,良好な経過をたどっている症例を報告する.マウスガードの一般的な目的は,主としてスポーツ時の口腔外傷の予防および軽減,脳振盪の予防などがあるが,スポーツ時以外の応用法もあり,今回の症例では,スポーツ時のみならず全身麻酔の気管挿管時にも使用している.使用感は良好であり,患児は柔道の際使用すると力が入ると感想を述べていた.しかし,装着後5か月経過時に歯牙の交換や萌出に伴う歯槽骨の膨隆に伴い不適合となり,再製作した.再製の際は,側方歯群の交換と唇頬側の膨隆部に対応するよう当該部をブロックアウトした.
患児は,定期的に全身麻酔下で顔面の血管腫性母斑に対しレーザー治療を受けている.挿管の際にも装着し,麻酔科医からも評価を得ている.
本症例は,Sturge-Weber症候群の治療を続けつつ,柔道というスポーツに取り組んでいる.本人ばかりでなく対戦相手の安全も考慮するためにマウスガードを装着した.
本症例の経験から同一のマウスガードが,スポーツ時のみならず,全身麻酔の気管挿管操作に伴う偶発症の予防にも有益であることが判明した.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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