小児歯科学雑誌
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ラット臼歯抜歯窩と歯根膜における破骨細胞の分化・活性化
Bisphosphonate(HEBP)持続投与が及ぼす影響
青柳 暁子島津 徳人佐藤 かおり内川 喜盛青葉 孝昭
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2005 年 43 巻 5 号 p. 591-598

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抄録

本研究では,1-hydroxyethylidene-1,l-bisphosphonic acid(HEBP)全身投与下におけるラット臼歯部での歯槽骨改造とTRAP陽性細胞の分化・活性化への影響を検討した.実験には5週齢の雄性SD系ラットを使用し,上顎第一臼歯の抜歯と体内埋入型浸透圧ポンプにて外頚静脈を介してHEBP(1.0mgP/day/kg体重)を7日間あるいは14日間持続投与した.抜歯窩と後方臼歯周囲の歯槽骨を対象としたμCT画像と組織像の観察から,HEBPは抜歯窩の治癒機転に影響を及ぼさないが,新生骨質の石灰化を抑制することが再確認された.HE染色と酵素組織化学による酒石酸抵抗酸性フォスファターゼ(TRAP)染色に基づく破骨細胞系譜の動態解析から,HEBP持続投与は循環系から局所へのマクロファージ系譜の細胞集積へ影響を及ぼさないが,多核化の障害,波状縁の発達阻害,骨質への接着能の減弱化が認められた.また,アポトーシス小体は単核細胞で多く検出されたが,多核細胞でのアポトーシス誘導は検出されなかった.これらのHEBPの作用効果は抜歯窩内で顕著であったが,歯根周囲の歯根膜空間では軽微であり,波状縁を発達させた破骨細胞が歯槽骨を吸収する所見もみられた.金身投与されたHEBPが近隣する臼歯部で異なる作用効果を示した理由として,持続的投与期間において新生骨質(類骨)にHEBPが蓄積され,破骨細胞による骨吸収に際して蓄積された薬剤の放出によって二次的に細胞機能に影響を与えたことが考えられる.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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