小児歯科学雑誌
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1歳6か月児歯科健診における授乳状況からみた齲蝕罹患に関する研究
井手 有三立川 義博西 めぐみ緒方 哲朗福本 敏野中 和明
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2005 年 43 巻 5 号 p. 605-612

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抄録
授乳状況と齲蝕罹患との関連を検討することを目的とし,平成12年から15年までの4年間に1歳6か月児歯科健康診査を受けた811人を健診当時の授乳状況により卒乳群,母乳継続群,哺乳瓶継続群の3群に分類,調査した.各群について齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,および上顎乳前歯部に3本以上の齲蝕歯が認められた者を授乳齲蝕者とし,授乳齲蝕者率を分析した.さらに口腔衛生状態についても検討したところ,以下の結論を得た.
1.母乳継続群の齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,授乳齲蝕者率はいずれも卒乳群,哺乳瓶継続群と比較し有意に高い値を示した.
2.母乳継続群の口腔衛生状態良好率は卒乳群,哺乳瓶継続群と比較し有意に低い値を示した.またどの群においても,口腔衛生状態良好児の齲蝕有病者率,1人平均齲蝕歯数,授乳齲蝕者率は口腔衛生状態不良児のそれと比較し低い値を示した.
3.卒乳群と母乳継続群における授乳齲蝕者率は母乳栄養の継続を確認できた最終月齢が1歳3か月以前の場合は極めて低かったが,1歳4か月以降になると急激に上昇した.
以上より,母乳栄養を長期に継続した場合,齲蝕罹患率は高くなる傾向があるが,口腔衛生状態を良好に保つことによってその率は多いに下げ得ることが示唆された.また現行の歯科健診の実施時期である1歳6か月よりも以前に齲蝕罹患率の上昇時期があることから,歯科健診はより早期の1歳からの実施が必要と考えられた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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