抄録
抑制下での歯科治療が小児の呼吸および循環動態に与える影響を知る目的で,パルスオキシメータを用い,治療中患児の脈拍数および動脈血酸素飽和度(以下SpO2)を測定した。対象患児は,抑制せずに治療を行った群(以下,「非抑制群」)19名と抑制下で治療した群(以下,「抑制群」)16名とし,計測によって得られた治療中の最高値,最低値および最高値と最低値の差(以下,「Δ」)について,抑制群と非抑制群で比較検討した。その結果,脈拍数の最高値とΔ脈拍数は,抑制群が非抑制群よりも有意に多かった(p<0.0005)。SpO2の最低値は,抑制群が非抑制群よりも有意に低かった(p<0.05)。ΔSpO2では抑制群が非抑制群よりも有意に高かった(p<0.02)。抑制下での歯科治療中は,非抑制下と比較して,脈拍数および動脈血酸素飽和度が大きく変動することから,患児の観察とともに呼吸および循環のモニタリングの必要性が示唆された。またリスクの高い症例では,全身麻酔下歯科治療を選択することも必要と思われた。