抄録
臨床実習開始前の歯学部学生を対象として,小児患者の保護者に対する基本的態度の習得に対する少人数グループによるロールプレイの効果について検討した.
学生3名ごとに歯科医師役,保護者役,観察者とし,順次交代しながら保護者に対するブラッシング指導(TBI)を課題としたロールプレイ形式の実習を行った.観察者となった学生は指導医とともに,歯科医師役学生の保護者に接する態度とTBIの技能に関する行動目標(SBOs)に対する到達度をOSCE形式で評価した.またロールプレイ終了後,学生の自己評価と実習に対するアンケートを実施した.
歯科医師役学生に対する指導医評価,他学生(観察者)評価,および自己評価でのSBOs到達度の平均値は,それぞれ89.0%,90.4%,82.8%であった.また,筆記試験の結果とOSCEによる評価者別の評価結果の間には相関は認められなかった(相関係数0.1~0.2,p>0.1).さらに実習終了後のアンケートの結果,学生の98%は臨床技能の習得に際し,従来の実習よりもロールプレイによる実習を望んでおり,さらに臨床を模擬した多様な状況設定でのロールプレイ実習の有用性が確認された.少人数グループによるロールプレイ実習は,臨床実習前の患者および保護者に対する態度と医療面接における技能の習得,さらに学習意欲の向上に非常に効果的であることが示唆された.